ライオンの詩 ~sing's word & diary 2

~永遠に生きるつもりで僕は生きる~by sing 1.26.2012

布団はなんのためにある?

2015-08-20 03:53:38 | Weblog
新潟の南魚沼の少し古ぼけた病院のベッドの上。
僕は大した怪我をして、ベッドの上で寝ていたわけなんだけど・・・それは去年の夏の終わりの話。

僕の声はとても小さかった。何かを伝えようと一生懸命に話すのだけれど、僕の声はとても小さかった。それは、片方の肺が潰れかけていたせいなのだと思う。

僕は大した怪我をして入院していたわけなんだけど、入院してから十日目、手術が終わって三日経った頃くらいに、やっとヨタヨタと歩けるようになった頃くらいに、こう想っていた。
「・・・ライブがやりたい」

「11月頃かなぁ。10月の終わり頃でもいいなぁ・・・。下北沢ラウンのスケジュールは空いているかなぁ?」

最初から決めていました。復活ライブは「下北沢ラウン」で。
どうしてかはわからない。どうしてかはわからないが、僕の頭の中に浮かぶ映像は、下北沢ラウンで歌う僕の映像だった。だから、下北沢ラウンで歌うのだ、と、最初から決めていた。

実際、去年の10月でも11月でも、歌えたと思う。少しフラフラとしながら、少しゼーゼーとしながら、少しフーフーと言いながら、歌えたと想う。
僕が描いていたのはそんな映像で、フラフラ、ゼーゼー、フーフー言いながら、優しく懸命に必死に歌いたかった。というのもある。

その頃は目眩がひどかったから、もしかしたら、ステージの上で目の前がぐるぐると回り始めて、ドテンと倒れてしまったかもしれないのだけれど、そんなギリギリさが、復活ライブ!って感じがしていいなぁと、描いていたっていうのもある。

なんか、そういうのって、バカバカしくてカッコいい。

退院して家へと帰ってきた僕は、下北沢ラウンの吉田さん宛にメールを書いた。
久しぶりの無礼を詫び、大事故に遭った経緯を書き、現状の自分を語り、復活への手助けを頼むという、長文のメールである。

送信ボタンを押す寸前で、ふと想う。
「そもそも、下北沢ラウンのスケジュールは空いているのだろうか?」

下北沢ラウンのスケジュールは、年末までほぼビッシリと埋まっていた。
そりゃあそう、なのである。

僕は、少し恥ずかしくなり、吉田さん宛のメールを送信せずに消し、恥ずかしさのあまり、ベッドに潜って布団を被るのである。

それは多分、事故の後遺症なのである。世界は僕のために動いていると思い込んでいたのである。事故の前にも多々あったことではあるのだが、事故後にひどくなったということなのである。
「あぁ、おれの復活なんて、誰も望んじゃいないんだ・・・、あぁ」と、布団を被るのである。

そこで、三月頃にライブを組めば良かったのである。でも、僕はショックのあまり布団を被ったのである。
その機を逃した僕は、当初の計画から九ヶ月も遅れて、先月7月25日に、下北沢ラウンで復活を遂げた、という話なのである。

ははは。あの時、布団を被らなければ・・・と思わないことはないが、布団は被るためにあるというのも、これまた真理なのである。

ライブハウスの予約は三ヶ月前にね。最低でも二ヶ月前までにね!
これは、まぁ、常識、みたいなものなのである。