なんで下北沢ラウンなのか?
どうして下北沢ラウンでやりたかったのか?
そこまで下北沢ラウンにこだわる理由はなんなのか?
ということである。
下北沢ラウンのオーナーは吉田さんである。音響も料理もドリンクを出すのも、すべて吉田さんである。
理由は、この吉田さんにある。
二年前に一度だけ、下北沢ラウンで演奏をさせてもらった。キトウケイゴにーさんとのソロツーマンである。
吉田さんは、魔法使いなのである。どこをどう見ても、どこからどんな風に見ても、風貌は、優しいおじ様なのである。がしかし、吉田さんは魔法使いなのである。まちがいない。
ライブの前には、リハーサルというものがある。
ソロのライブ、つまりアコースティックのライブってのは、音決めってのがシビアなのである。出来れば、自分が理想だと想う音で演奏したいのである。それが無理なら、出来るだけ自分の理想に近い音で演奏したいのである。それも無理なら、せめて嫌いな音じゃない音で演奏したいのである。いやいやもう、それも無理なら、わかりました、なんでもいいんで、ほんとに、このキンキンシャリシャリボワボワだけは取っていただけますか?ってな感じなのである。
そういうのは、人それぞれにこだわりがあって、そんなこだわりにそれぞれ応えるのがプロのPAってものなんだけど、なかなか、そんな人はいない。
僕なんてのは、路上上がりのミュージシャンなもんでね、音のこだわりなんてのはほとんどない。「歌えればいい」ってのをスタイルにしているくらい、こだわりはない。いや、もちろん、出来れば理想に近い方がいいのだけどね。
Trash Box Jamの三人でアコースティックライブに臨む時、いつもマコが僕に聞いてくれる。
「リーダー、どうですか?」
ほとんどの場合、僕はこう答える。
「大丈夫、歌える」
でも、たまにある。
「リーダー、どうですか?」
「・・・全然歌えないよぉ、どうしよう?」
そうすると、マコがPAに言ってくれる。
「ギターの100ヘルツ辺りをガツンと削ってみてください」とか。
それで、ちょっとはマシになる。
気に入ろうが気に入らなかろうが、歌えればなんとかなる。それが僕のスタイルなんでね。路上スタイルなんでね。
そんでもって、ラウンの吉田さん。
初めてのラウン。
リハーサル。ギターを持ってステージに上がる。シールドを差してギターを鳴らす。ギターを鳴らして唄を歌う。
「あれ?」
ピックを置いて、指で弾く。
「あれ?」
僕の音決めは終了である。
音決めに一秒もかかっていない。一秒どころか、吉田さんは何もしていないじゃないか?
「あれ?」
こんなことは、かつて体験したことがないのである。
何もしていないってことがあるのだろうか?でも、吉田さんは何もしていない。
なぜならば、ギターの弾き始めから音の質が少しも変化していないのである。
つまり、最初から、僕の理想とする音が出ていたのである。
ギターには、ギターの音には、それぞれ特性みたいなものがあって、特性というか個性みたいなものがあって・・・個人の好みにもそれぞれ違いってものがあって・・・。ねぇ・・・。
リハーサルが終わって、本番までの時間。僕は吉田さんに言った。
「最初からすごく歌いやすかったんですけど・・・なんなんですか?」
これは、何をしたんですか?という意味である。
すると、吉田さんは、穏やかにこう答えるのである。
「僕は何もしていませんよ」
謎なのである。ナゾなのである。吉田さん、恐るべしなのである。
プロっていうのは、こういう人のことを言うんだなぁと、つくづく想う夜だったのである。
どうして下北沢ラウンでやりたかったのか?
そこまで下北沢ラウンにこだわる理由はなんなのか?
ということである。
下北沢ラウンのオーナーは吉田さんである。音響も料理もドリンクを出すのも、すべて吉田さんである。
理由は、この吉田さんにある。
二年前に一度だけ、下北沢ラウンで演奏をさせてもらった。キトウケイゴにーさんとのソロツーマンである。
吉田さんは、魔法使いなのである。どこをどう見ても、どこからどんな風に見ても、風貌は、優しいおじ様なのである。がしかし、吉田さんは魔法使いなのである。まちがいない。
ライブの前には、リハーサルというものがある。
ソロのライブ、つまりアコースティックのライブってのは、音決めってのがシビアなのである。出来れば、自分が理想だと想う音で演奏したいのである。それが無理なら、出来るだけ自分の理想に近い音で演奏したいのである。それも無理なら、せめて嫌いな音じゃない音で演奏したいのである。いやいやもう、それも無理なら、わかりました、なんでもいいんで、ほんとに、このキンキンシャリシャリボワボワだけは取っていただけますか?ってな感じなのである。
そういうのは、人それぞれにこだわりがあって、そんなこだわりにそれぞれ応えるのがプロのPAってものなんだけど、なかなか、そんな人はいない。
僕なんてのは、路上上がりのミュージシャンなもんでね、音のこだわりなんてのはほとんどない。「歌えればいい」ってのをスタイルにしているくらい、こだわりはない。いや、もちろん、出来れば理想に近い方がいいのだけどね。
Trash Box Jamの三人でアコースティックライブに臨む時、いつもマコが僕に聞いてくれる。
「リーダー、どうですか?」
ほとんどの場合、僕はこう答える。
「大丈夫、歌える」
でも、たまにある。
「リーダー、どうですか?」
「・・・全然歌えないよぉ、どうしよう?」
そうすると、マコがPAに言ってくれる。
「ギターの100ヘルツ辺りをガツンと削ってみてください」とか。
それで、ちょっとはマシになる。
気に入ろうが気に入らなかろうが、歌えればなんとかなる。それが僕のスタイルなんでね。路上スタイルなんでね。
そんでもって、ラウンの吉田さん。
初めてのラウン。
リハーサル。ギターを持ってステージに上がる。シールドを差してギターを鳴らす。ギターを鳴らして唄を歌う。
「あれ?」
ピックを置いて、指で弾く。
「あれ?」
僕の音決めは終了である。
音決めに一秒もかかっていない。一秒どころか、吉田さんは何もしていないじゃないか?
「あれ?」
こんなことは、かつて体験したことがないのである。
何もしていないってことがあるのだろうか?でも、吉田さんは何もしていない。
なぜならば、ギターの弾き始めから音の質が少しも変化していないのである。
つまり、最初から、僕の理想とする音が出ていたのである。
ギターには、ギターの音には、それぞれ特性みたいなものがあって、特性というか個性みたいなものがあって・・・個人の好みにもそれぞれ違いってものがあって・・・。ねぇ・・・。
リハーサルが終わって、本番までの時間。僕は吉田さんに言った。
「最初からすごく歌いやすかったんですけど・・・なんなんですか?」
これは、何をしたんですか?という意味である。
すると、吉田さんは、穏やかにこう答えるのである。
「僕は何もしていませんよ」
謎なのである。ナゾなのである。吉田さん、恐るべしなのである。
プロっていうのは、こういう人のことを言うんだなぁと、つくづく想う夜だったのである。