ゆうべのこと。
この二年間、ずっと、超音波治療ってのをやっている。
目に見えない超音波というやつを、折れた骨に当てている。
超音波は目に見えないから、少しも効いている気がしないのだがね。
ほんとに効いている気がしないのだけど、この二年間、ずっと続けている。もはや、それが仕事みたいなものだ。効いている気はしないのだがね。
ゆうべのこと。
一日20分の超音波治療中。
お腹がキリキリっと痛んだ。
いや、まいったね。
いや、まいったね。ほんとに。
ベテランだからね。お腹がキリキリっと痛んだ瞬間にわかったんだね。ほんとに。今回は瞬間。瞬間的に思ったね。
「あっ、結石だ!」
数年に一度訪れる結石の恐怖。のはずなのに。あれ?つい最近、結石と戦ったばかりのような気がするが。気のせいだろうか?
もう、痛い。すごく痛い。
痛い上に、右の鎖骨に超音波を当てている最中なのである。
「ちょっと、待ってはくれないだろうか?」
ちらりと超音波の機械を見る。タイマーは残り12分。
あと12分、待ってはくれないだろうか?
結石は待ってはくれない。
すごく痛い。どんどんと痛みは増すばかり。最早、座ってなどいられない。
うずくまるか立ち上がるか、そのどちらかを選べと言うならば、僕は迷わず立ち上がる方を選ぼう。
左手で超音波を当てている箇所を押さえ、右手で超音波の機械を抱え、僕は立ち上がる。
そして、跳ねる。
跳ねる。・・・この方法。この対処法って、合っているのだろうか?甚だ疑問である。疑問ではあるのだが、この方法しか知らない。そして、この方法で何度も乗り切ってきた。
とにかく、跳ねるのみ、である。
超音波の機械をちらりと見る。タイマーは残り8分。
すげぇ痛い。なんで、こんな目に遭わねばならぬのだ。跳ねる。超音波の機械から出ているクルクルコードがビヨーンビヨーンと揺れる。僕は跳ねる。超音波の機械のクルクルコードがビヨーンビヨーンビヨーンと揺れる。
死ぬほどの痛みの中で、ビヨーンビヨーンと跳ね続けなければいけないことって、ある?
いやぁ、ないと思うわ。
超音波のタイマーが切れ、機械を外し、表へ出る。寒い。息が白い。最低気温は4度と言っていた。寒い。
僕は走る。ビヨーンビヨーンと跳ねながら走る。お腹、痛い。走る。ビヨーンビヨーン。お腹、痛い。
一時間くらい。部屋に戻ったり外へ出たり。これは、治療だ。
疲れた。カラダも疲れたが、精神的にも疲れた。
なんとなく、少しも良くなった気がする。
部屋に戻って横になる。痛みはだいぶ和らいだ。
感覚的に分かる。結石は去った。
時々この感覚に騙される。発作的に痛みが襲ってくる。
今回は大丈夫な気がする。
そのまま眠ることにする。
どうせ、痛みが襲って来たら起こされる。
疲れたから、そのまま眠ることにする。
結石との戦い。何勝何敗だったっけかなぁ?
5勝2敗になったような、そんな気がする。
えーーー、7回も結石になってるの?
バカなんじゃないの?
っていう話。を、一応書いてみた。