「節分に、今年の恵方は西南西とラジオで言っていたので、周囲の意見に圧されて西南西を向いて巻き寿司(恵方巻)を食べることにしたけど、貴方の干支の話では『今年の恵方は西南西と西の間』と方向が少し違う。どちらが正しいのか。」
「どちらも正しい。」
「えっ!それでは困る。」
「では、そのあたりの話を少ししましょう。」
「恵方(えほう)」は十干で決まるということは、先にお話した通りです。庚(かのえ)の年の恵方は庚(かのえ)の方位で、西と西南西の間になります。
恵方には、その年の福徳を司る神、歳徳神(としとくじん)が降臨し、立春から節分までの一年間、“諸事に大吉”とされる方位です。
歳徳神とは方位神の一つで、その年の福徳を司る吉神と云われており、年徳様、歳神様、お正月様などとも呼ばれています。
つまり、歳徳神がおられる方位を「恵方」、または「明の方(あきのかた)」と言い、その方角に向かって事を行えば、万事に吉となるそうです。
昔は、初詣は自宅から見て恵方の方角(aboutです)の社寺に詣でるのが一般的で、これを「恵方参り」と言いました。
関西では、立春の前日の節分の日に恵方を向いて太巻き(恵方巻)を丸かじりする習慣があります。
恵方巻は、節分に食べると縁起が良いとされる巻き寿司で、七福神に因み、乾瓢、三つ葉(又は菠薐草)、厚焼き玉子(又は伊達巻)、高野豆腐、煮穴子、干し椎茸、桜田麩など七種類の具を入れて作ります。少し贅沢にするなら、鮪や蟹を入れます。
この恵方巻が日本各地で知られるようになった平成元年頃から、甲(きのえ)とすべき所を「東北東」、丙(ひのえ)とすべき所を「南南東」、庚(かのえ)とすべき所を「西南西」、壬(みずのえ)とすべき所を「北北西」と16方位に言い換えることが多くなってきました。これは“甲、丙”などといった方角表現に馴染みがなくなってきことと、日常的に使用する東西南北の16方位による簡便な説明を求められるようになったためと思われます。
従って、昔からの方位学(陰陽五行、十二支、九星)などに厳密に囚われない限り、どちらでもいいのではないでしょうか。