現在、私のデスクには書類らしきものは殆どありません。在るとすれば、ベンダーから貰ったカタログ(Catalog)が数部と直近で配布された一時的に必要な社内書類を綴じているフラットファイルが3冊程度です。これらの書類も業務進捗状況に合わせ、順次姿を消すことになります。
当然ながら、事務所フロアの外周に設置されている書棚(キャビネット)も使用していません。
「それは、あんたが現役を引退しているからだろう」
と言われるかも知れませんが、そうではありません。現役時の最も繁忙な期間において、既に現状のスタイルが出来上がっているのです。
かつては、紙に印刷された資料を分厚いパイプファイルに綴じて、後生大事に保管していました。保管する書類はカタログであったり、自分がExcelやWordやPowerPointで作成したものであったり、他の人から受取ったもの、そして進捗過程における資料で、全て紙に印刷されたものです。
資料が直ぐに取り出せるよう、ジャンル別、業務別、履歴順に仕分けし、できるだけ小さい単位でのファイリングを行っていました。
気が付けば、机の引き出しは勿論のこと、(W)900mm×(H)1850mm×(D)600mmの書類キャビネット一台を占有するようになっていました。
これだけの書類を持っていると、いくら丁寧な仕分けとファイリングをしても、瞬時に必要な書類を取り出すことは困難になります。
そんなとき目についたのが複合機のスキャナー機能であり、自分が使用しているPCのHDD容量と検索機能でした。
そして自分自身の資料整理・管理に関する考え方を次のように改めました。
①紙でしか入手できない資料はスキャナーでPDF(Portable Document Format:電子文書)化し、自分のPCや共有ファイルサーバに保存する。PDF化後の紙資料は、会計上の証憑でない限り即時廃棄(シュレッダー処理)する。
②自分がPCで作成した資料は印刷せず、PCや共有サーバに保存する。共有サーバに保存するデータは必要性を判断し、PDF化しておく。
③社内外を問わず、受渡し(配布、受領)する資料は出来るだけ電子ファイルで行うことにし、PCや共有サーバに保存する。
④PCや共有サーバには、紙資料をファイルングしていたときの仕分け基準を踏襲したフォルダー階層を構成する。
⑤進捗過程の所謂履歴管理として必要な資料があるとすれば、履歴フォルダーを案件フォルダー内に構成する。
それでも紙はなくならない!
会社全体で見れば、確かにその通りです。
一般的に企業は売上高の2~6%をプリンティングに費やしているともいわれています。全社レベルでのペーパレス化には限界があると思います。この限界によって、紙の使用量は減るどころか、むしろ増えているのが実態でしょう。
資料を印刷するにはプリンターが必要です。
プリンターを設置すれば、印刷用のトナー管理や印刷状態を良好に保つための保守作業が必要になります。多くの紙も消費します。印刷用紙の在庫管理業務が必要になります。
紙資料を整理保存するには専用のファイルも必要だし、ファイルを保管する書類キャビネットも必要になります。
情報セキュリティ・ポリシーとして書類の保管にも基準を設けていますので、基準に沿ったセキュリティ対策も実施しなければなりません。
TCOは莫大なものになっていると思われます。
全社レベルで一気に、可能な範囲でのペーパレス化が実施できるのであれば問題ありません。
なかなか、そうはいきません。
ならば、社員全員が個人レベルの範囲で、どこまで資料の電子化ができるか、取り組んでみればいいと思います。
ペーパレス化を実施すると、便利さが増えることに気付きます。全社レベルでの取り組みを後押しすることになると思います。
書類キャビネットは一台で0.54㎡の事務所スペースをとってしまいます。書類キャビネットを減らすことができれば、事務所が広くなる。或いはもっと狭い空間で間に合うようになり、事務所スペースに掛るコストを低減することができるかも知れません。
プリンターが減らせれば、これもTCOの削減になります。
書類の受渡しを電子メールで行うようになれば、送料を節減することができます。
社内的には、共有サーバを利用することで、印刷をしなくて済みます。
資料が電子データ化されていれば、探し出すのも容易になります。
個人で、自分の周りに限定し、ペーパレス化を進めた結果が、冒頭の私の現状です。
そのかわり、PCを手放すことができなくなりました。これが唯一の欠点です。
ペーパレス化を推進するには、
1.社員のPCにPDFソフトを入れる。
2.スキャナーを配備する。
3.ファイル共有サーバを導入する。(文書管理ソフトが導入されていれば、尚よい)
4.一気に全社レベルではなく、社員個人レベルから始める。
5.メーラーはセキュリティを重視し、専用のソフトを導入する。無料のWebメールは利用できないようにする。
以上を実施すれば、セキュアに紙資料に纏わるTCO削減が実現できると思います。