“退職後難民”。定年退職が間近に迫っている人には何ともインパクトの強い言葉です。
昨年(2010年)4月14日付け朝日新聞に掲載された言葉です。
記事の内容は、2010年2月にフィデリティ投信が、20~59歳の会社員・公務員10976人にインターネットで実施し、4月13日にまとめたアンケート結果です。
サラリーマンの4割が老後に向けた自己資金をまったく用意しておらず、「老後難民」になりかねないというアンケート結果です。
1995年以降、脱却できない不況の中にあって、年金保険料は引き上げられ、反面給付額は半減されるといった、庶民泣かせの社会福祉策がとられてきています。
公的年金だけでは「生活が苦しい」と考えている人が8割超にのぼっています。
公的年金で受取る額を除き、退職後に必要な生活資金は、平均2989万円。一方、現時点で退職後に準備した資金は516万円と、6分の1にとどまっています。
30数年間会社勤めをし、退職金で住宅ローンの残債を一括返済すれば、500万円も残らない人が殆どのようです。
また、今年、朝日新聞が読者に対して行った「定年を過ぎても働き続けたい?」というアンケートに対して、
・回答者の70%が働き続けたいと答えた。
・その理由として「年金支給の不透明さ」を挙げ、
・「収入確保のために仕方ない」という人が最も多かったとのことです。
厚生年金制度が確立され、定年退職後は年金給付額で標準的生活水準が維持されていた時代に『終身雇用』という言葉が生まれ、サラリーマンになれば一生安泰と信じられてきました。
しかし、今振り返ってみると、既得権が保証される年代についてのみ“一生安泰”であり、10数年前からの度重なる制度改革によって、サラリーマンは『終身雇用』ではなかったのだということに気付かされます。
そして、十分な社会保障制度を背景にした『終身雇用』、“一生安泰”の幻想のもと、欧米では有り得ないことですが、サラリーマンは“兼業”・“副業”を就業規則で禁止され、定年退職後の生きていくスキルを身につけることを忘れさせられました。
行政の“自分勝手”なファンドの費消と企業の自己利益の追求・増大化策が、『退職後難民』・『老後難民』を生み出す不安のもとになっていると言っても過言ではないでしょう。
<サラリーマンの退職後生活資金の準備額>
(フィデリティ投信のアンケート)
1 全く準備していない:44.3%
20代が58.2% 50代でも27.3%
2 100万円未満:13.7%
3 100万~500万円未満:17.1%
4 500万~1000万円未満:11.7%
5 1000万~2000万円未満:6.7%
6 2000万~3000万円未満:3.2%
7 3000万円以上:3.4%
公的年金の給付額を知っている人は52.0%
この人たちが自身への給付額の水準については次のように考えていました。
1 生活できる:12.7%
(「十分」、「何とか」を合わせて)
2 かなり生活が苦しくなる:42.0%
3 生活できない:42.6%