“8月”で思い出すことの一つに東京の都営トロリーバス(trolley bus)があります。
私が初めてトロリーバスと出会ったのは、大学入学で上京した昭和42年(1967年)4月、池袋東口、西武百貨店付近でのことでした。架線がトロリーポールとの接触で、時々「バチバチッ」と大きな音をたて、火花を散らしているのに驚き、それを何とも思っていないかのように行き交う人々に、更に驚きました。
それまで、トロリーバスは雑誌に掲載された写真でしか見たことがなく、子供の頃からトロリーバスが走る街への漠然とした憧れがあったので、とても感激しました。
トロリーバスは、架線で供給される電気をトロリーポールで取り込み、動力源のモーターを動かす仕組みです。今風に言えば架線を利用したEV(electric vehicle)です。ただし、法規上は自動車ではなく、路面電車と同じ鉄道に分類されています。このため、運転士は大型二種免許のほかに、動力車操縦者運転免許(無軌条電車運転免許)が必要となります。
踏み切りなどの短距離で、トロリーバスのための架線が敷設できない場所を通過する時は、トロリーポールを下げ、補助のディーゼルエンジンを動力として走行する仕組みでした。
この意味ではハイブリッドの魁だったと思います。
開業当初の都営トロリーバス1952年(昭和27年)
(出典)毎日新聞社「一億人の昭和史6」
そんな“eco”なトロリーバスでしたが、動力源である電機モーターの防水技術レベルが低いこと、降雪時にアースの関係からタイヤチェーンが使えないことなど、構造的に風雨や積雪に弱いことや、安全対策のためバック運転しないなど、使い勝手の悪さ(?)が効率的経済成長を目指す社会情勢に合わなかったのか、都は廃止の方針を出していました。
1968年(昭和43年)8月9日、運輸審議会は東京都から申請されていた都電とトロリーバスの廃止を決定しました。
決定から約2ヶ月後には営業が終了され、架線も手際よく撤去されました。
わが国では、かつて7つの街にトロリーバスが走っていました。
・都営トロリーバス(東京都)
1952(S27).5.20-1968(S43).9.30
・川崎市営トロリーバス(川崎市)
1951(S26).3.1-1967(S42).5.1
・横浜市営トロリーバス(横浜市)
1959(S34).7.17-1972(S47).4.1
・名古屋市営トロリーバス(名古屋市)
1943(S18).5.10-1951(S26).1.16
・京都市営トロリーバス(京都市)
1932(S7).4.1-1969(S44).10.1
・大阪市営トロリーバス(大阪市)
1953(S28).9.1-1970(S45).6.15
・日本無軌道電車(宝塚市・川西市)
1928(S3).8.1-1932(S7).4
今も世界の多くの都市では、新型車両のトロリーバスが運行されています。
わが国では、唯一、黒部・立山のみに運行路線があります。
・立山トンネルトロリーバス(立山黒部貫光)
室堂駅~大観峰駅 3.7km
・関電トンネルトロリーバス(関西電力)
黒部ダム駅~扇沢 6.1km
ノスタルジア(懐旧の情)で物申せば、都市部に営業路線として存在しないのが少し残念です。