「労働者派遣法」とは「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(昭和60年7月5日法律第88号)」(最終改正:平成二一年七月一五日法律第七九号)の略称です。
その目的は同法第1条で、『この法律は、職業安定法(昭和二十二年法律第百四十一号)と相まつて労働力の需給の適正な調整を図るため労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置を講ずるとともに、派遣労働者の就業に関する条件の整備等を図り、もつて派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資することを目的とする。』とされています。
しかし、小泉政権時代(在職期間:平成13年4月26日~平成18年 9月26日,第87代、第88代、第89代総理大臣)から始まった構造改革による規制緩和と長期不況における労働市場の縮小で、派遣は拡大の一途を辿っています。その結果、企業においては今や派遣社員は雇用調整材料・労務費節減材料として位置付けられ、景況が悪化すれば「派遣切り」「雇い止め」などを合法的に行うことができるようになりました。
これは労働者にとっては「失業」という形で圧し掛かる現実であり、派遣法第1条に謳う「派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進」とは真逆の運用結果となっています。
また、企業は労務費を節減する目的で、恒常的に必要とされる要員数の一部しか正社員として採用せず、本来的に不足する労働者を、企業にとって使い勝手の良い派遣社員で賄うことを初めから織り込んでいます。
このため、正社員としての労働市場は縮小し、大学は卒業したものの就職できない人達を大量に生み出すところとなっています。
かつては、新卒で就職しても自分に合わないと判断すれば容易に転職ができる状況でしたが、現在は、一旦退職すると次の就職先が金輪際見つからず、失業者となります。フリーターとして日々の糧を稼ぐ生活しか待っていないようです。雇用する側の条件(多くは選り好み基準)次第では、求職者が例え20歳代であっても、フリーターの口さえ閉ざされてしまうことがあります。
1980年以前のわが国の失業率は2%以下でしたが、1990年代半ばの所謂“失われた10年”以降、失業者は増加し続け、今や5.5%を超えようとしています。
行政および企業は、「労働者派遣法」には抵触していないとの安易なコンプライアンス感覚と「内部留保」一辺倒の企業理論を排除し、今のような派遣労働者が存在しなかった時代の雇用体制に戻ってもらいたいものです。
正社員が増え、わが国全体の可処分所得が安定的に増大すれば、最終消費も増加し、不況風は一掃されるのではないでしょうか
(総務省統計局データより)