4月20日(土)晴れ。
断食の最終日。私の部屋は二階。手の届きそうな所にヤシの木に似た木がある。そこに、鶯やら名も知らぬ鳥が来て、白々と夜が明ける頃から鳴くのである。その鳴き声がうるさくて、目が覚めてしまう。とても千里鶯啼いて緑紅に映ずの「江南の春」の気分にはなれない。風流などとは言っていられないほどの音量なのだ。
朝七時、希望者で宿の周りを40分ぐらい歩く。お椀を伏せたような大室山が目の前に迫る。リフトで頂上まで登るそうだが、高所恐怖症の私は、一度も登ったことがない。小学生の低学年の頃、家の近くに誰かが忘れて行ったのだろう、大きなコウモリ傘があった。遊び場にしていた普門院というお寺に3メートルほどの高さの塀があり、上級生の子供たちが、度胸試しとして、そこから飛び降りていた。私は、低学年と言うこともあり、飛び降りたことがなかった。
大きな、コウモリ傘を見た時、その傘を開いて飛び降りたら、落下傘のようになってフワリと降りられるのかもしれないと思った。そこで、遊んでいた友達を集めて、お寺に行き、傘を広げて飛び降りてみた。フワリとするどころか、あっという間に傘はオチョコになり、私は、足をくじいた。すぐに友達が母を呼びに行ってくれて、慌ててやって来た母にしこたま殴られた。以来私は、高所恐怖症になったのだ。どうやらその傘は、置いていったのではなく、強風でオチョコになってしまったものを、捨て行ったものと言うことを後で知った。
朝食は、大根のスープ。昼は無し。夜は、お粥。暇な一日、持って行ったNHKの「シルクロード」と「新漢詩紀行」をのんびりと見ていた。今日で、断食は終わり。明日は帰宅する。