白雲去来

蜷川正大の日々是口実

咳をしても一人。

2025-02-14 14:14:19 | 日記

2月12日(水)晴れ。

事務所で、パソコンで管理している住所録の整理を行った。ここ十年ほど音信不通な人を削除したり、新しく頂いた名刺の住所を入力したりと、気がつけばことのほか時間がかかってしまった。そう言えば、私の携帯のアドレスも少し整理しようと思い開けてみた。その昔、飲み屋でオネエサンに戯れで教えて貰った番号らしきものがある。名前だけのものや、お店の名前、フルネームのものもあるが、正に一期一会。顔と名前も一致しないので、全て削除した。恐らく向こうも私のことなど覚えていないのに違いない。

いつも削除しようかどうかと迷うのは、亡くなられた人たちの番号である。消してしまうと本当に縁が切れてしまい、思い出も消えてしまうような気がして、消せずにいる。花房東洋先輩、植垣康博さんなどの人達・・・。せめて一周忌が済むまで残しておこうと思った。事務所に一人でいたせいもあって、寂寥感に苛まされる。

寒い事務所で咳がでた。そう言えば小豆島の庵寺で極貧の中、ただひたすら自然と一体となる安住の日を待ち、病魔に侵されながら詠んだ尾崎放哉の句に「咳をしてもひとり」と言うものがあった事を思い出した。自由律の作風で知られる漂泊の俳人・尾崎放哉は帝大を卒業し一流会社の要職にあったが、酒に溺れ職を辞し、美しい妻にも別れを告げ流浪の歳月を重ねた。最晩年、小豆島の土を踏んだ放哉が、ついに死を迎えるまでの激しく揺れる八ヵ月の日々を鮮烈に描く。吉村昭の『海も暮れきる』(講談社文庫)である。事務所の書棚から、その本を持って帰って来た。

夜は、友人と西横浜の「オアジ」から、関内へ。二軒転戦して帰宅。いい夜だった。


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