この作品は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をベースに、当時のニューヨークの社会的背景を織り込み、白人とプエルトリコ移民との2つの非行グループ間の争いと、その中で揺れ動く2人男女の悲恋を描いたものでとして有名な作品です。
作品と共に、レナード・バーンスタイン作曲のTonightをはじめとした美しメロディも、知られて今す。
ブロードウェイでの初演以来、50年もの時間が経っているんですね。
客席に入ると、オーケストラピットからの楽器の音色が耳に飛び込み、いやがうえにも気分が高まります。
公演が近付くにつれて、思い当たる役者さんが公演を抜けて行ったので大方の予測はついたのですが、どんなキャストになるのか興味津々でした。
今回、マリアを演じられる笠松はるさんは、「ゆたと不思議な仲間たち」での小夜子役で出演されているのを知っていたくらいでしたので、楽しみにしていました。
トニー役の阿久津さんが巨大なのか、笠松さんが小柄なのかはさておき、小柄で可愛らしい印象でマリアのイメージの方でした。
ハイトーンが魅力的で、この公演の後はキャッツでグリドルボーンなども演じられるのかなと思ったりしています。
阿久津さんとのデュエットのとき、時々阿久津さんの声しか聞き取れなくなったのは、座席の影響だったのでしょうか?
演目は違うのですが、レ・ミゼラブルのコゼットなんかも似合いそうです。
樋口さんのアニタも素敵ですね。
2幕で熱唱されている時、まだ演じてもいないWICKEDでエルファバを演じているシーンが頭に浮かんできました。
濱田さんも6月から休みなしなので、年内にエルファバの姿の樋口さんが観られるのかも?
Tonightは、マリアとトニーがマリアのアパートでデュエットをしているシーンも良いですが、1幕終了前にマリア、トニー、ベルナルドを待つアニタ、ジェット団、シャーク団、それぞれの想いを込めた五重唱も印象的です。2幕、逃げるトニーと匿うマリア、Somewhereのシーンも印象的です。敵対するジェット団もシャーク団も区別無く、明るい光溢れるステージでダンスをしているシーンは、当時のアメリカ社会が抱える問題が解決され、来るべき平和な社会をイメージしているのでしょうね。
2幕後半、警察の包囲が迫ってきたとき、アニタにトニーへのメッセージを依頼するマリア。
マリアの思いに応え、トニーが匿われているドックの店へ行くものの、ジェット団からの辱めにあい、吐き捨てるように「マリアはチノに撃ち殺された」言い残して去ってしまうアニタ。
差別に苦しむ、移民の辛さを滲ませていました。
アニタの言葉をドックから聞かされたトニーは、「自分も殺せ」と叫びながら夜の町に飛び出し、偶然死んだはずのマリアと再会。
それも束の間、チノの銃弾に倒れ、マリアの元で息を引き取るトニー。
クラプキやジェット団、シャーク団に対して、悲しみと憎しみの言葉を叫ぶシーンは、観ていても辛くらなります。
トニーの遺体を敵対していたジェット・シャークのメンバーが抱え上げ、葬列を組んで去って行くシーンで幕が降ります。
弾倉に残った弾の数をチノに問いただすマリアが、その場に居合わせる人間総てを殺すことができると語り、さらに最後の1発で自分自身をもと。
でも、引き金を引く事無く拳銃を落とすシーンは、マリアの深い悲しみを表現するだけでなく、これもアメリカ社会へのメッセージだったのでしょうね。
それにしても、役者さんが多いために、顔と役が半分くらい一致しないままで終わってしまいました。
それでも、ベルナルド役の加藤さんや、グラジェラ役の高倉恵美さんのダンスに見入ってしまいました。
エニイ・ボディズの男の子みたいな役を演じていた磯津ひろみさんも、良い感じでしたね。
クラプキ巡査の牧野さん、良い声ですね。
トニー役は、ここ数日は阿久津さんと鈴木さんが1ステージ毎に交互に演じられているようです。
鈴木さんの演じるトニーや、木村さんのマリアも、是非観てみたいですね。
四季劇場[秋] 2007年9月24日
■ジェット団
リフ 松島勇気 グラジェラ 高倉恵美
トニー 阿久津陽一郎 ヴェルマ 恒川 愛
アクション 西尾健治 クラリス 駅田郁美
A-ラブ 大塚道人 ポーリン ソン インミ
ベイビー・ジョーン 厂原時也 ミニー 荒木 舞
スノーボーイ 岩崎晋也 エニイ・ボディズ 礒津ひろみ
ビッグ・ディール 萩原隆匡 ディーゼール 朱 涛
ジーター 青羽 剛
■シャーク団
マリア 笠松はる ベルナルド 加藤敬二
アニタ 樋口麻美 チノ 中村 匠
ロザリア 鈴木由佳乃 ぺぺ 水原 俊
コンスェーロ 加藤久美子 インディオ 神谷 凌
テレシタ 泉 春花 アンクシャス 徳永義満
フランシスカ 大口朋子 ファノ 内御堂 真
エステラ 榊原央絵 ニブルス 佐藤雅昭
マルガリータ 室井 優
■おとなたち
ドック 立岡 晃 クラプキ 牧野公昭
シュランク 山口嘉三(劇団昴) グラッド・ハンド 青羽 剛
■第2幕第1場
ソプラノ・ソロ
久保田彩佳
■コンダクター
河合尚市