なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

低ナトリウム血症

2017年06月22日 | Weblog

 昨日低ナトリウム血症の60歳代後半の女性が紹介されてきた。昨年まで当院に勤務していた先生(循環器科)のクリニックからの紹介だった。

 患者さんはもともと慢性心房細動・慢性心不全があり、2か月前には心不全の急性増悪で当院の救急外来を受診して、心臓センターのある専門病院に搬送されている。軽快退院後はクリニックに戻って、治療を継続していた。

 6月初めから食欲が低下してきたそうだ。患者さんは、入院先の病院から「水分を1日1000ml以上とるように」言われたと思っていて、食欲がなくても、水を多く飲んでいた。それは「水分は1日1000mlまでの水分制限でずよ」とお話したが、きょとんとしていた。また、病院で指導された減塩食を真面目に守っていたので、味がなくて食欲が低下したようだ。

 この方は3か月前に頭痛を訴えて、救急外来を受診したことがある。頭部CTでは明らかな脳血管障害は認めないが(MRIだとラクナ梗塞はあるか)、年齢の割に前頭葉の萎縮が目立つ。アルツハイマー型認知症がありそうだ。

 クリニックでの前日の血清ナトリウムが119mEq/Lで、当院で検査すると115mEq/Lだった。明らかな神経症状はないので、慢性の経過で低ナトリウム血症になったものと判断される。心不全症状の悪化はなかった。クリニックでの処方は、利尿薬としてダイアート30mg・サムスカ7.5mgが入っていた。

 クリニックの紹介状にある通り、水中毒相当のようだ。尿比重から推定した尿浸透圧は100~200mOsm/Kgで希釈尿になっている。意識は清明なので、3%食塩水ではなくて、生食500mlを昼から20ml/時で開始した。夕方には血清Na119mEq/Lになった。そのまま今朝まで継続して、血清Na122mEq/Lになっていた。入院後は食事摂取(ほぼ全量)できたので、今日は半日生食の点滴をして、明日再検とした。

 甲状腺機能をみると、軽度に低下していたので、マーカーを提出して、甲状腺ホルモン少量を補充することにした。認知症のテストもしてみる。貧血として鉄剤が処方されていたが、鉄も血清フェリチンもかなり増加していたので中止した。以前から慢性腎不全があり、腎性貧血(Hb9~10g/dl)のようだ。

 要するに、今回の低ナトリウム血症は、水分制限を水分摂取と誤解したためと、減塩食を守り過ぎたために生じたようだ。

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