昨日は来月に来る医学部学生の実習の打ち合わせの会合に出た。立派なホテルで、アイスコーヒーとケーキ付き。現在研修医はいないので、指導に慣れていない。学生は実習に来る前に、その地域についてレポートを提出するそうだ。そんなに真面目にしなくてもと思うが、今はカリキュラムできちんと決まっていて、全部評価の対象になるという。大した指導もできないので、評価は甘くするつもりだ(標準がわからないし)。学生といっしょに来る大学教官の先生に挨拶して帰ってきた。
「教えて!SGLT2阻害薬の使いかた」加来浩平編(羊土社)を読んでいる。SGLT2阻害薬は6種類(7薬剤)出ている。使い分けはあるのかというと、「SGLT2阻害薬は良好な血糖降下作用がおおむね薬剤間の差がなく認められています」、「薬剤間の違いを明確に示す根拠はない」、「副作用の頻度についてもおおむね同程度」とあって、「今後の大規模臨床試験の結果によって薬剤ごとの特性がより明らかになると思われる」。
今のところSGLT2阻害薬は、どれを使っても差がないということになる。ただし、欧米での使用を考慮すると、カナグル・フォシーガ・ジャディアンスになるのかもしれない。平尾先生の「黄金のレシピ」は、DPP4阻害薬・メトホルミン・少量のSU薬の組み合わせになっている。今だと、DPP4阻害薬・メトホルミン・SGLT2阻害薬になりそうだ。
心不全を合併した糖尿病の症例には、利尿薬としてSGL2阻害薬を優先的に使うべきという意見があるそうだ。現在欧米では慢性心不全の症例を対象としたSGLT2阻害薬の大規模臨床試験が計画されていて、将来的には糖尿病のない心不全の症例にもSGLT2阻害薬が使える様になる可能性があるという。
この本の症例集の中に、HbA1c15%と高値なのにSGLT2阻害薬を使う症例が出ている。ケトーシスがないこと、自己インスリンが十分出ていることを確認している旨が記載したあるが、危険な使用と思われる。内科医院から当院に紹介された症例はHbA1c11%と高値だった。まずDPP4阻害薬が処方されて、次にSGLT2阻害薬が追加されていた。入院時に糖尿病性ケトアシドーシスになっていた(他の先生が担当)。HbA1cが10%を越すような症例には、インスリンなしでのSGLT2阻害薬使用は好ましくないと思う。
SGLT2阻害薬は、人工的に「生まれつきの腎性糖尿(SGLT2遺伝子変異)」と同じ状態にする薬ということになる。SGLT1を阻害すれば、腸管からのグルコース吸収を抑制するので、SGLT1阻害薬を作れば治療できそうだが、そうなると高度の下痢・脱水を生じてしまうそうだ。残念。