地域の基幹病院呼吸器科から80歳代半ばの男性が転院してきた。間質性肺炎で通院していて、急性増悪ではなくて、慢性の経過で間質性陰影が進行しているようだ。今年から在宅酸素療法(3L/分)が導入されている。
認知症があり、ここは○○病院ですかと地元の病院の名前が出た。以前当院に通院したこともあるはずだが。病室に診に行くと、「給食の方ですが」、と言われた。家族が、「何言ってるの先生ですよ」、と言ったがピンときてない雰囲気だった。介護力があれば、在宅療養・外来通院でもよさそうだが、家族は病院に預けたいという。
在宅酸素療法なので、施設入所はできない。在宅が無理ならずっと病院ということになる。ベット稼働率が悪い当院としては、地域包括ケア病棟を利用して(一般病棟と合わせて)2か月ちょっと入院してもらうのはむしろ歓迎だが、その後はどうするかという問題がある。幸いにこの方の住んでいる町には療養型病床をもつ小規模病院があるので、そちらに転院の依頼はできそうだ。
家族と相談して、その方向で進めることで了解してもらった。間質性肺炎の急性増悪や、嚥下障害があることから誤嚥性肺炎の併発が危惧されるが、それなりの治療は行うものの人工呼吸器管理までは行わないことも了解してもらった。紹介してきた基幹病院側も増悪した時にまた引き取るとは記載していない。暗黙の了解で、後はよろしくということのようだ。
肺癌・脳転移の80歳代後半の男性も、現在は食事摂取良好でトイレ歩行も自力でできる。脳転移のため、家庭内で一時的に不穏状態になって便失禁した時の印象が悪く、家族はもう家ではみられませんという。本人は自宅退院したいのだが。
胃癌術後・多発性肝転移・癌性腹膜炎の70歳代初めの男性も、現在は食事摂取できて、調子がいい。家では奥さんに物を投げつけたりしていたため、もう奥さんは引き取る気がないようだ(医療相談室に早く入院させてほしいと言ってきていた)。
できるだけ自宅で過ごして、病状が悪化した時に入院にしたいところだが、今時は病院で引き受けるしかないのだろう。病棟の看護師さんからは不満の声が上がるが、自分だったら家庭でみるかと言われれば、病院でとなるのではないか。