79歳女性。朝トイレで排尿後に意識消失して救急搬入された。搬入時は意識は戻っていて、バイタルサインも異常なかった。救急当番は外科医だった。頭部CTさらに頭部MRIを行ったが異常はなし。血液検査で炎症反応が上昇していたが、原因はわからないということで、内科外来をしていた私に連絡が入った。「寝かせておきますから、あとよろしく」だった。外来の合間に救急室に行った。心電図を見るとⅡ・Ⅲ・aVFで異常Q波があった。血液検査でAST・LDHが上昇していてALTの上昇はわずかなので、心筋由来だった。追加した検査でCK・CK-MBの症状ととトロポニンT・ラピチェック陽性を認めた。急性心筋梗塞だった。胸痛はないので、家族に聞いてみると3日前に自宅で冷や汗をかいて手足の末梢も冷たくなったが、治ったので受診していないという。当院の循環器科が都合悪く、基幹病院の循環器科に連絡して救急搬送した。意識消失したのはなんだったのか。房室ブロックなどの除脈性不整脈は見られず、心筋梗塞のためとも言い難い。案外、単に排尿失神だったのか。
40歳男性。高血圧症で通院してる内科医院から肝機能障害で紹介された。AST300台、ALT600台と高値だった。腹部エコーでは異常がない。アルコールは1週間に1回くらい飲むが、その時は日本酒5合相当くらい飲むという。検査してみるとHCV抗体陽性でC型肝炎だった。1歳の時に頭部打撲による頭蓋内出血で開頭術を受けていて、その時輸血しているそうだ。それにしても今まで異常を指摘されなかったのだろうか。仕事の都合ですぐには入院できないというので、肝炎の詳しい外注検査を提出して、結果をみて肝臓専門医のいる病院に紹介予定とした。外来処方としてはウルソとグリチロンくらいしかないが、そう効くとは思えない。インターフェロン治療になるだろう。
76歳女性。内科クリニックに高血圧症などで通院していた。2-3週間前から労作時の息切れと夜間起座呼吸が出現したという。かかりつけ医(高齢の先生)に訴えたらしいが、咳止めなどを処方されていた。今日当院の内科新患を受診した。胸部X線で両側胸水貯留。心拡大がある。心電図では虚血性変化を認め、血圧高値だった。降圧剤はアダラートL(10mg)1錠分1なので高圧が不十分だった。第2肋間胸骨右縁に収縮期雑音が聴取され、心エコーでも大動脈弁狭窄を認めた。心エコー検査を見た循環器科医が入院治療を勧めたが、入院はいやだという。入院したくない理由をはっきり言わないが、タバコを吸えなくなるのがいやなのではないかと外来看護師は言っていた。家族は入院させたがったが、命にかかわると言っても、本人がいやがるのでどうしようもなかった。降圧剤と利尿剤を組み合わせて処方して、1週間後の外来に予約した。家族には悪化する時はすぐに病院に来るようにとお話しした。さらに一気に悪化して、治療が間に合わなくなることもあるとも伝えた。
昨日の日曜日は内科当直だった。日直が小児科医だったので昼前から病院に来て待機していたが、特別内科入院はなかったので、不明熱の診断学を読んでいた。
当直帯になって、身障者の施設に入所している64歳女性が40℃の発熱で受診してきた。卵巣癌で卵巣子宮摘出術を受けている。再発して腹腔内に播種して腫瘤が散らばっている。肝転移と肺転移もあった。抗癌剤治療を一時的にしたが、その後は無治療で経過観察となっていた。実際抗癌剤治療ができる状態ではない。今回の発熱は尿路感染症(腎盂腎炎)が疑われた。最近は飲み込みが悪くなってきているそうでd、両側肺の誤嚥性肺炎もありそうだ。感染症の治療でいったん良くして施設に戻れるかどうか。
99歳女性が血便で受診した。ふだんは他の総合病院に通院しているが、今日は当院に来た。家族が婦人科の方かもしれないと言っていたが、直腸指診で確認した。やせていて腹部CTで大腸疾患の診断が困難だったが、明らかな腫瘍はない。虚血性腸炎が疑われるが、憩室出血なども否定はできない。入院で経過をみることにする。
20歳の男性が救急搬送されてきた。日中から発熱があり、当番医を受診して感冒薬を処方されていた。夜になって立ち上がった時にふらふらして頭部を打撲したため、両親が心配して救急要請したもの。腹部不快感と嘔気があり、病院に来てから下痢便が出た。感染性胃腸炎のようだ。診察するとそれほど問題なさそうだったが、夜間ということもあり短期入院とした。希望もあって頭部CTを行ったが異常はない。CRPが5と上昇していた。ウイルス性ではなく、細菌性なのかもしれない。翌日には腹部症状が軽快して食事摂取良好だった。
同じ身障者施設に入所している51歳女性がけいれんが止まらないということで救急搬入された。精神科病院から抗けいれん剤を処方されているが、電話したところ総合病院で診てもらうようにいわれてそうだ。施設内でシアゼパムの座薬10mgを2回挿入していた。両眼が左方に偏移していたが、ちゃんと呼吸はしていた。点滴ラインをとっているうちに、けいれんはすっかり治まった。経過をみるため短期入院とした。朝病棟に診に行ったが、会話ができて食事もとれていたので、退院とした。抗けいれん剤についてはかかりつけの精神科病院で相談するようにした。
内科の地方会に行ってきた。いつものように午前中の地方会自体には出ずに、最近よく行っているラーメン店でみそラーメンを食べてから、午後の教育講演会だけ聞いてきた。C型肝炎の治療が数年後には内服薬の組み合わせになるという話が印象的だった。病院からの電話もなく、平和な一日。
82歳の女性。当院としては特別な高齢でもないが、脳出血後遺症・認知症で施設に入所している。3か月前には心不全の悪化で循環器科に入院していた。今朝から高熱があって内科新患を受診した。心不全・腎不全の悪化と誤嚥性肺炎・尿路感染があり、胆嚢内には結石があった。皮膚全体が乾燥していて掻き傷が多い。この施設からの入院患者さんに疥癬が出ているので、疥癬も疑われる。前回担当した循環器科医(この施設の嘱託医)は午後から休みで、昼休みにはすでに帰ってしまっていた。内科病棟に入院とした。
85歳男性。外科外来に下肢の閉塞性動脈硬化症(ASO)で通院していた。泌尿器科のクリニックにも通院していて、そこでの定期的な血液検査で末梢血などに異常を認め、病院でみてもらうように言われた。外科に通院していたので、そのまま外科外来を受診した。検査すると、白血球増加症15000があり、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球を認めた。貧血があるが、血小板数は正常域だった。腹部CTで巨大な脾臓を認めた。外科医から相談を受けたが、初めて見る巨脾だった。慢性骨髄性白血病と思われたので、がんセンターの血液内科へ紹介してもらうことにした。
一番混む今日の外来(再来)は割と順調に終わった。糖尿病で通院している女性が1週間前から咳・痰が続いていた。最初微熱で、その後は平熱になったという。症状の経過が長いので、胸部X線を撮影した。右中葉に軽度の浸潤影を認め、肺炎だった。入院治療するほどでもないので、経口の抗菌薬を処方して外来治療とした。病棟は昨夜肺癌終末期の男性が死亡していた。DNRで当直医が看取ってくれた。その他の患者さんは特に問題なく、平穏だった。
午後から救急当番だったが、救急搬入要請なしで終了した。昼前に90歳男性が救急搬入されて、午前の救急当番だった外科医が対応していた。昨日転倒して頭部を打撲して、半身の麻痺が出現していた。うっ血性心不全で入院中の92歳女性の弟さんだった。頭部CTで急性硬膜下出血があり、脳外科で緊急手術となった。
85歳女性。関節リウマチ・高血圧症・心房細動・心不全などで内科外来に通院していた。土曜日に電話で話していた遠方に住む娘が、言葉がすぐに出ないのに気づいて、月曜日に病院に連れてきた。頭部MRIで左中大脳動脈領域の頭頂葉から側頭葉にかけて脳梗塞が生じていた。確かに言葉がすぐに出てこないが、会話はできる。ケアハウスに住んでいるので、入院して経過をみることにした。神経内科医が学会で1週間休みをとっていて来週まで不在なので内科で入院となった。麻痺はないので、2週間くらいでケアハウスに戻せるはずだった。
ところが、翌日の今朝左半身の麻痺があり、頭部MRI再検で反対側の右視床から内包にかけて新たな脳梗塞があった。急性期後にリハビリをしても、これでは自立した生活ができない。介護できる施設に申し込むことになるだろう。
88歳女性。高血圧症で外来通院していた。3か月前に上下肢近位の疼痛・こわばりと食欲不振が出現した。しゃがんだ姿勢から立ち上がるのがひどく、両腕を上げるのが困難だった。炎症反応も上昇していて感染症などは否定的だった。リウマチ性多発筋痛症としてプレドニン10mg/日から治療を開始した。しかし2週間後に症状は軽減したものの炎症反応は改善しなかった。左側頭部痛もあり、圧痛はなく診察所見でははっきりしなかったが、側頭動脈炎と判断した。プレドニン30mg/日に増量して経過をみると順調に炎症反応は軽快して、陰性まできた。プレドニンを5mgずつ減量して20mg/日になってところで検査する炎症反応が軽度に上昇していた。自覚症状は何もなく、他の疾患の併発を疑ったがはっきりしなかった。近いところに予約を入れて、経過をみてもらうことにした。その3日後から食欲不振となり、悪寒が始まった。家族が心配したが、受診をいやがり自宅で我慢していた(病院が休みの土日受診を遠慮したのかもしれない)。今日は悪寒戦慄となり、家族に連れられて外来を受診した。
呼吸器症状がなく、腰が痛いと言っていたので、当初は尿路感染症から菌血症・敗血症になったと思われた。導尿で尿検査をすると尿は濃縮しているだけで混濁はなかった。点滴を早く入れると、受診時には測定できなかった血圧が測れるようになり、末梢のチアノーゼも消失した。胸部X線・CTを見ると、両側肺にびまん性に間質性陰影が胸膜直下から広がっていた。検査でLDHがふだんの180から500以上に上昇していた。KL-6などのマーカーは外注検査なので確かめられないが、急性ひまん性間質性肺炎と判断した。以前の胸部X線を放射線科医にも診てもらったが、間質性肺炎の陰影はなかった。基幹病院の呼吸器科に連絡すると、幸いにベットが開いていて受けてくれたので、救急車で搬送した。