88歳女性。高血圧症で外来通院していた。3か月前に上下肢近位の疼痛・こわばりと食欲不振が出現した。しゃがんだ姿勢から立ち上がるのがひどく、両腕を上げるのが困難だった。炎症反応も上昇していて感染症などは否定的だった。リウマチ性多発筋痛症としてプレドニン10mg/日から治療を開始した。しかし2週間後に症状は軽減したものの炎症反応は改善しなかった。左側頭部痛もあり、圧痛はなく診察所見でははっきりしなかったが、側頭動脈炎と判断した。プレドニン30mg/日に増量して経過をみると順調に炎症反応は軽快して、陰性まできた。プレドニンを5mgずつ減量して20mg/日になってところで検査する炎症反応が軽度に上昇していた。自覚症状は何もなく、他の疾患の併発を疑ったがはっきりしなかった。近いところに予約を入れて、経過をみてもらうことにした。その3日後から食欲不振となり、悪寒が始まった。家族が心配したが、受診をいやがり自宅で我慢していた(病院が休みの土日受診を遠慮したのかもしれない)。今日は悪寒戦慄となり、家族に連れられて外来を受診した。
呼吸器症状がなく、腰が痛いと言っていたので、当初は尿路感染症から菌血症・敗血症になったと思われた。導尿で尿検査をすると尿は濃縮しているだけで混濁はなかった。点滴を早く入れると、受診時には測定できなかった血圧が測れるようになり、末梢のチアノーゼも消失した。胸部X線・CTを見ると、両側肺にびまん性に間質性陰影が胸膜直下から広がっていた。検査でLDHがふだんの180から500以上に上昇していた。KL-6などのマーカーは外注検査なので確かめられないが、急性ひまん性間質性肺炎と判断した。以前の胸部X線を放射線科医にも診てもらったが、間質性肺炎の陰影はなかった。基幹病院の呼吸器科に連絡すると、幸いにベットが開いていて受けてくれたので、救急車で搬送した。