なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

器質化肺炎

2021年06月20日 | Weblog

 4月から来た内科の若い先生は産休に入った。担当していた10名の入院患者さんを3人で分担とした。

 診ていた患者さんのうち、2名が原因不明の肺炎だった。ひとりは困って?使用したステロイドが著効したというものだった。こちらはプレドニン漸減中で、肺陰影も炎症反応も軽快している。

 もうひとりは「抗菌薬が効いていないが、悪化していないので、このままでもいいのでは」と申し送りにあった。

 患者さんは88歳女性で、高血圧症で内科医院に、認知症で精神科病院に通院している。グループホームに入所していて、通院時は市内の家族が付き添う。

 6月2日に倦怠感を訴えて、通院している内科医院を受診した。胸部X線で右上肺野に浸潤影が疑われた。6月8日に胸部CTを当院放射線科に依頼して肺炎像があったため、内科に紹介された。

 胸部CTで右上葉がメインの陰影だが、両側肺に散在していた。白血球9400・CRP6.1。患者さんは平熱~微熱で一見して元気なので、外来で経口抗菌薬を出していた(オーグメンチンAMPC/CVA+ジスロマックAZM)。

 6月11日再診時は白血球10000・CRP8.4で、そのまま外来治療を続けた。6月14日白血球8800・CRP9.2と軽度に上昇して、入院治療となった。

 入院後はゾシン(PIPC/TAZ)を投与していたが、平熱~微熱で推移した。胸部X線像では、陰影は増加しているようだ。そのわりに患者さんは元気だった(全身状態の良さがヒント)。

 「抗菌薬に反応しない肺炎」という範疇になる。6月17日呼吸器外来に来ている先生(大学病院から)に相談した。ペニシリン・マクロライドが効かないという情報も伝えると、「器質化肺炎です」と言われた。

 最初に薬剤性肺炎を来す処方がないかを確認されたが、特にそういう処方はなかった。薬剤性肺炎は最近の話題のようだ。

 「プレドニン20~25mg/日で開始してもらって、こちらの外来でみます。この量なら外来でもいけます。」と言ってもらった。プレドニン20mg/日で開始して、一度経過をみてから(胸部CT再検と血液検査)退院にすることにした。

 抗菌薬を中止して、ステロイドだけの投与で症状や検査値(画像も案外早期に反応?)が軽快するのを確認しないと、診断があっているかどうかわからない。抗菌薬を併用する場合もあるが、ここは中止でいく。

 器質化肺炎は、もっとべったりした浸潤影で肺の区域に一致しない分布をしているとわかりやすい(陰影の移動があるともっとわかりやすい)。今回は画像だけでは(当方としては)自信がない。

 入院生活が続いて、認知症のBPSDが目立ってきた。薬の管理はグループホームの職員に依頼できるので、早めにふだんの生活環境に戻した方がいいようだ。

 

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小脳出血

2021年06月19日 | Weblog

 金曜日の午前中は救急当番をしていた。市内の救急隊から、畑仕事をしていて倒れたという、熱中症疑いの62歳男性の搬入依頼がきた。気温が高く、いかにもありそうだと思われた。

 ひとりで作業をしていると倒れても気づかれなかったりするが、自宅に隣接した畑だったそうだ。意識レベルは1という報告だった。

 午前9時半ごろから畑で作業を開始して、午後10時ごろに声を上げたので家族が気づいた。家族が畑に行ってみると倒れており、救急要請していた。

 作業時間30分では熱中症にならないのではないか。体温は35.3℃でむしろ低下していた。大汗をかけばかえって冷えることはあるが、ちょっとおかしい。

 血圧213/115mmHg、心拍数54/分と血圧高値で徐脈だった(結果的にはCushing徴候)。目が細いが開眼はしていて、会話は成り立つがぼんやりしていた。

 生食500mlを用意していたので、血液検査を提出して点滴を開始した。頭部CTを行うことにした。救急搬入された別の食欲不振の高齢女性を診ていると、放射線科の技師さんから呼ばれた。CTで出血があるという。

 頭部CTで右小脳に出血があり、脳室腔に穿破していた。

 すぐに地域の基幹病院脳外科に連絡した。地域医療連携室で当番の先生(4月に赴任された)に連絡したがつながらないそうで、別の先生(以前からいる先生)につながった。

 どうしましたかと懇意な感じで応じてくれて、受け入れOKだった。血圧を伝えると、がっちり下げてくれと言われた。ペルジピン2mg静注で、搬送前は160/90くらいにはなった。

 搬入前に血性(赤黒い)の嘔吐があり、搬送前にもまた同様の嘔吐があった。頭蓋内出血(頭蓋内圧亢進)によるCushing徴候(血圧高値・徐脈)とCushing潰瘍(急性の上部消化管出血)で、いかにもの症状があったことになる。

 

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インフルエンザA型

2021年06月18日 | Weblog

 昨日の6月17日に43歳男性が38℃の発熱で受診した。前日から咳と発熱が出ていた。病院に連絡すると、駐車場の車内で待ってもらう。

 発熱外来扱いなので、新型コロナ(抗原定性)とインフルエンザ(迅速試験)の両者をみる検査から始まる。めまいの患者さんをみたり、ICTのラウンドと会議があったりと忙しい。

 検査室から連絡が来て、インフルエンザA型陽性といわれた(新型コロナは陰性)。インフルエンザ?と、ちょっとびっくりした。通常この時期はインフルエンザの検査していない。検査キットの関係で検査されてしまうが、基本的には新型コロナのチェックのためにしている。

 発症2日目だが、胸部X線と血液検査を追加した。胸部X線で肺炎像はなく、白血球4600・CRP1.2とウイルス感染相当の結果だった。

 時期外れ?のタミフルとアセトアミノフェンを処方して経過をみてもらうことにした。3~4日以上高熱が続く時には再診になる。

 母親が車を運転して、息子を載せて来ていた。無症状の母親から、自分は仕事に行っていいでしょうか、と訊かれた。インフルエンザでは濃厚接触者だから、一定期間自宅待機というのはない。

 インフルエンザは発症後に感染性が高く、潜伏期から感染性が高い新型コロナとは違う。それでも、ウイルス感染には変わりない。通常の風邪ウイルスでもインフルエンザでも、濃厚接触者はその潜伏期だったり無症状感染だったりして、他の人にうつす可能性はあるのだった。

 

 夏でもインフルエンザは県内でも数例報告されている。通常は検査しないが、熱心な先生が検査して証明しているのだろう。 

 

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副腎皮質機能低下症

2021年06月17日 | Weblog

 66歳男性は何度も肺炎で入退院を繰り返していた。直近では5月24日から6月3日まで入院した。セフトリアキソンで普通に解熱軽快して、治療としては問題なかった。2週間後に、通院している呼吸器外来の予約をとった。

 6月9日の夕方に食欲不振で受診してきた。前回同様に姉が連れてきた。発熱はなく、胸部CTでみても前回入院時の陰影が残っているが、新規の肺炎ははっきりしなかった。

 炎症反応は白血球9800・CRP0.8で、炎症の初期を示しているような所見だった。翌々日にCRP8.3と上昇していたので、軽度に気管支肺炎があるのかと思われた。

 前回は3日くらいの治療で食欲が回復していたが、今回は回復しない。平熱~微熱で推移して、血圧などは問題なかった。1週間以上食不振が続き、さっぱり改善しない。

 慢性甲状腺機能低下症があり、抗サイログロブリン抗体・抗TPO抗体陽性で、橋本病と診断されていた。もっとも2017年から外科の甲状腺外来(2名の外科医がいたが、もういない)で診ていた。

 当初は甲状腺機能亢進症があり、ちょっとだけメルカゾールが処方されたこともある。その後は橋本病の急性増悪を疑われたり、壊死性リンパ節炎が疑われていた(詳細はカルテをみてもよくわからない)。

 プレドニンが20~25mg/日が数年投与されていた。その後、気管支喘息は当院呼吸器外来に通院するようになり、そこでは喘息としてプレドニンがやはり同様の量で投与されていた。

 2017年から2021年3月まで量の調整はあるが、プレドニンが処方された。呼吸器外来では吸入ステロイド(ICS/LABA)のみで、ステロイド内服は不要とされて中止していた。

 2017年から2021年までプレドニンが投与されていたことから、グルココルチコイド長期投与による二次性副腎機能低下症が疑われた。

 また橋本病があるということは、原発性副腎皮質機能低下症であるアジソン病の併発(多腺性自己免疫症候群Ⅱ=Schmidt症候群)も考えられた。

 意識清明で血圧は問題なく、副腎クリーゼではないので、ACTH・コルチゾールの結果(外注検査)を待つことにした。

 結果はACTH・コルチゾールともに低値だった。下垂体疾患なのか?。甲状腺機能検査ではTSHが軽度高値でFT3・FT4は正常域にある。潜在性甲状腺機能低下症相当で、現在のチラーヂンS(50μg)2.5錠を3錠に増やそうかと思っていた。副腎不全で甲状腺ホルモン増量はまずい。

 クリーゼではないが、まずヒドロコルチゾンの点滴静注をして、内服(ヒドロコルチゾン=コートリル)を開始することにした。(院内臨時薬として取り寄せになる)誰か内分泌に詳しい先生に相談したいところだ。

 白血球分画で好酸球が増加してきて原因不明だったが、そういうことだった。低ナトリウム血症・高カリウム血症はない。

 とりあえず頭部MRIで下垂体を見てみる。TSHは出ているので、下垂体全体の問題ではない。ACTH単独?。

 

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COVID-19の新規入院

2021年06月16日 | Weblog

 火曜日に新型コロナウイルス感染症の55歳男性が入院した。県内の発生数は10名くらいに減少していて、しばらくぶりの新規入院になる。

 感染経路は不明だった。出産のための実家に戻った娘さんの持ち込みを疑ったが、妻と娘のPCR検査は陰性だった。娘さんの夫も出入りしてるが、症状はないらしい。

 当院の糖尿病外来(外部からバイトの先生担当)に通院していて、ジャヌビア50mgとメトホルミン1000mg/日でHbA1c6.6%と血糖コントロールは良かった。体重100kg超の肥満がある。

 7年前に腹部大動脈瘤破裂の既往があり、人工血管置換術を受けている。その後は左内腸骨動脈瘤でステント留置の手術も受けていた(いずれも専門病院で施行)。当院の循環器科で治療していたが、閉科となって、市内の元心臓血管外科医のクリニックに回されていた。

 1週間前に全身倦怠感が出現して、その翌日から発熱が続いていた。前日にクリニックで新型コロナの抗原検査を受けて陽性だった。同時にPCR検査も提出していて、翌日に陽性と確定している。保健所から入院依頼がきた。

 胸部CTで両側肺野にすりガラス陰影を認めた。浸潤影様の陰影にも見えるが、検査結果からはウイルス性肺炎なのだろう。

 白血球減少(3100、リンパ球23.0%)、血小板減少(8.6万)があり、CRP2.7と炎症反応は軽度だった。重症化の指標は、LDH231・Dダイマー3.4・血清フェリチン1042とそれぞれ上昇していた。

 咳と痰はないという。入院した夜に酸素飽和度が93%となり、酸素吸入が開始された。入院後も39℃の発熱があり、デキサメサゾンの投与(点滴静注)を開始した。

 ステロイドで血糖が高値になるので、インスリン注射を使用することになりそうだ。

 

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頻脈性心房細動~ビソノテープ

2021年06月15日 | Weblog

 月曜日に救急外来当番の神経内科医から連絡がきた。施設入所中の95歳女性が食欲不振で救急搬入されたという。

 来てみると、37℃台の発熱があり、型通りに新型コロナとインフルエンザの抗原迅速試験を行って陰性だった。血液検査は出したが、あとはどうすればいいかと訊かれた。

 内科再来をみているので、通常は他の外来のない内科医に連絡する。しかし月曜日の朝に、内科の同僚の先生から連絡が来ていて、前日に父親が亡くなったので数日休むということだった。

 また内科の若い先生(女性医師)は1歳半のお子さんが先週末に入院していた。画像検査を入れてもらって、外来の合間に診に行きますと答えた。

 患者さんは心房細動・心不全の入院歴があった。2016年には以前にいた循環器科医が診て、ハンプ・ラシックス・サムスカで治療して軽快退院していた。

 その後循環器科がなくなり、別の循環器科医が来た2019年にも入院した。またサムスカを使用して軽快退院していた。頻拍性心房細動に対しては、使用していたビソノテープを4mgを8mgに増量して、さらにベラパミル120mg/日分3を追加して、心拍数90/分前後にコントロールしていた。

 救急室に行ってみると、心拍数が170~180/分になっていて、神経内科医がジゴシン0.25mgを静注していた。心拍数は変わらない。

 循環器科のクリニックで出している処方を確認すると、ビソノテープとベラパミル内服は中止になっていた。ベラパミル0.5Aを静注すると、心拍数は100~110/分になった。ビソノテープ4mgを貼付した。

 頻脈時(心拍数140~150/分以上)の時は、ベラパミル0.5A静注としていたが、その後は100/分前後で推移している。ベラパミル内服も併用になるかもしれない。

 脱水症でもともとの慢性腎臓病が悪化している。といっても慢性心不全なので、輸液の調整が難しい。軽度に肺炎の陰影もあった。

 

 βブロッカーの貼付剤ビソノテープは便利だ。当初は8mg(メインテート内服5mg相当)と4mg(メインテート内服薬2.5mg相当)が院内採用となっていた。その後2mg製剤が出て、循環器科で4mgと2mgを院内採用とした(そして循環器科はなくなった)。

 「循環器治療薬ファイル」によれば、慢性心房細動のレートコントロールには、1)β遮断薬、2)カルシウム拮抗薬(ベラパミルかジルチアゼム)、3)ジギタリスで、この順番でレートコントロールの力が強い。(β遮断薬が第一選択で、ジギタリスは積極的には使わない)

 

 先週の木曜日に誤嚥性肺炎で入院した92歳女性は、土曜日に頻脈性心房細動になった。金曜日の夜間に透析を受けている患者さんが、透析終了後に回転性めまいしたので、土曜日に診に来た。心電図モニターで入院時は正常洞調律だったが、土曜日の朝から頻拍になっていた。

 心拍数140~150/分で、ベラパミル0.5A静注で心拍数は一時的に100~110/分になったが、また140~150/分に戻ったりする。血圧が80~100mmHgなので、不整脈薬が使いにくい。

 血圧の問題と超高齢という問題があるので、ビソノテープ2mg貼付して経過をみていた。その後、うまい具合に正常洞調律に戻った。血圧は100~110くらいで推移している。

 頻脈性心房細動になると、血圧が低下するので、レートコントロールをした方が血圧は改善するのだろうが、あまり低いと使いにくい。それでもビソノテープ4mgと2mgは使いやすくて重宝している。

 

 今日は自分の内科再来の訳あり外来だった。通常の内科再来で診ると時間がかかる(疾患の管理または性格的な問題で)患者さんを少数入れている。葬儀で休んでいる内科の先生の外来の分と、発熱で休んだ呼吸器内科医(外部の専門病院から)の外来の分も診ていた。(救急当番もしながら、入院患者さんの内視鏡もしていた)

 「病状が変わりない時は処方と次回予約だけにします、希望があれば診察しますが、相当待ちます。」と外来看護師さんに伝えてもらった。

 午後は保健所依頼のPCR検査をして、新型コロナの新規入院患者さんの胸部CTを診て、発熱外来2名の検査を出して結果待ちをしている。

 

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総胆管結石

2021年06月14日 | Weblog

 前々回の日曜日の夜間に、悪寒・発熱の84歳男性が救急搬入された。当直は大学病院からバイトで来ている外科医だった。

 腹部CTで総胆管結石を認めた。炎症反応は白血球9700・CRP0.4と(超?)初期像だった。翌日には白血球23400・CRP11.2と上昇した。肝機能障害もある。

 救急外来には、「総胆管結石・胆管炎は当院で対応できないので、内視鏡治療ができる病院に搬送して下さい」と記載しているが、当直医は高齢ということでそのまま当院入院とした。セフトリアキソンを点滴静注していた。

 翌日の月曜日に、発熱は微熱程度になっていたが、血圧が夜間から朝にかけて90台だった。意識は清明で、話もできる。家族に電話で対応できる病院に相談することを伝えた。

 地域の基幹病院消化器内科に連絡した。その日5人目の紹介になり、とても対応できないと言われた。県庁所在地の専門病院と相談してくれ、ということだった。いらいらした感じが伝わってきて、相当に忙しいようだ(通常は受けてもらえる)。

 ちょうど家族が病院に来たので、経緯を伝えた。すると息子のお嫁さんから、当院でできるだけの治療でいいです、と言われた。

 この患者さんはほとんどベット上の生活で、尿閉で尿カテーテルが挿入されている。家族の介助でやっとトイレには行けるそうだが、介護度は高い。

 脳血管の治療を受けていて、これ以上の治療はできないといわれたそうだ。ADL低下と認知力低下もあるので、専門病院への通院も難しい。

 結石があると抗菌薬だけでは治療は難しい、敗血症性ショックから死亡する可能性がある、と伝えたが、それでも仕方がないという。

 いっしょに来ていた患者さんの妻(小柄で介護力はなさそう)に、それでいいね、と言っていた。妻は何か言いたそうだったが、一応同意した。お嫁さんはそれから他県に赴任している夫(患者の息子)に電話してやはり、それでいいね、と言っていた。家族内の力関係がわかるようだった。

 それから抗菌薬をゾシン(PIPC/TAZ)に切り替えて治療を継続したが、幸いに解熱して炎症反応・肝機能ともに軽快している。動いて撮影できない時は中止でいいという条件でMRCPを行うと案外立派な画像がとれた。

 放射線科の技師さんの話では、動きがなさ過ぎて、呼吸をしているかわからないくらいだったという(あのうるさいMRI台で静かに寝ていたのだった)。

 

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「あなたの隣の精神疾患」

2021年06月13日 | Weblog

 春日武彦先生の新著を購入した。「あなたの隣の精神疾患」(インターナショナル新書、集英社)。

 精神科疾患について一般の人向けに、わかりやすく(春日流・春日節で)記載している。第1章の「うつ」問題では、従来型うつ病と、新型うつ病について書かれている。

 うつ状態は躁病以外のあらゆる精神疾患でとりうる。うつ病、統合失調症、神経症、人格障害、さらには精神疾患とはいえない(普通の?平凡な?)人でもうつ状態になりうる。

 したがって、精神科医は典型的な従来型うつ病でなければ、うつ状態として対応される。6月1日に記載した患者さんも、精神科の返事はうつ状態(身体化がみられる)としていた。

 新型うつ病は医学用語ではなくマスコミ用語?で、「その実体は、神経症(抑うつ神経症)、職場恐怖症、人格障害など」だそうだ。「従来型うつ病のように抗うつ薬をメインにして乗り切る種類のものではない」。

 あの患者さんはどうだったのか。早朝覚醒はあり、少なくとも過眠はない。職場ではだめだが、趣味には興じているということはなかったようだ。自罰的(他の人に申し訳ないと)で他罰的ではなかった。

 まあ明らかな新型うつ病ではないと思うが、専門医に判断してもらうしかない。

 

 第2章の「躁と双極性障害」に記載されていた文章が、いかにも春日先生らしくていい。

 「そもそも人間の精神は、いくぶん抑うつ的で不安も少々、そんなあたりがデフォルトとして設定されているのではあるまいか。いささかネガティブな精神状態を、やり甲斐だとか充実感、ささやかな感謝の気持ちでどうにか底上げして生きていく。まあそれが堅実な人生を送っていくための基本だろう。浮ついたり調子に乗ると、ろくなことがないのが世の定めである。

 その他、(境界型)パーソナリティ障害、神経症、統合失調症などについて、症例をもとに春日流で実践的に書かれている。

 

あなたの隣の精神疾患 (インターナショナル新書)

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歯肉癌

2021年06月12日 | Weblog

 木曜日に歯肉癌の93歳男性が入院した。

 市内の歯科医院から大学病院口腔外科に紹介されて、左下歯肉癌と診断された(4月12日記載)。本人と家族は治療を希望せず、緩和ケア(鎮痛薬)で経過をみることになった。

 当院内科外来に高血圧症・慢性腎臓病(CKD)通院している。4月末に大学病院から診療情報提供書が送られてきた。緩和ケアの継続と終末期の対応もお願いしたい、ということだった。

 鎮痛薬としてアセトアミノフェン・ロキソプロフェンが処方されて、それでも痛いということで、トラマール屯用となっていた。CKDがあるので、ロキソプロフェンは中止した。

 トラマールを定期内服としたが、まだ痛いようだ。大学病院を受診するころから当地に来ていた、茨城県在住の長女がいっしょに受診した。この患者さんは奥さんと二人暮らしで奥さんを介護していた。奥さんの介護度が上がり、当院入院後に施設に入所させた。

 娘さんから、一人暮らしで食事の問題・薬剤管理の問題・生活自体の問題があり、入院させてほしいと希望された。水曜日に新型コロナワクチンの1回目があり、木曜日の入院を希望した。

 鎮痛薬の調整と食事摂取量をみて、施設入所も検討するため、入院とした。食べる量は少ないが、点滴するまでではないようだ。トラマール100mg分4(ワントラムは院内にない)で経過をみて、増量あるいは医療用麻薬の使用を考慮することにしている。

 肺癌や消化器癌のようにあまり扱わない癌なので、経過が予測しがたい。以前、舌癌の90歳代女性が入退院を繰り返して、最終的には誤嚥性肺炎で亡くなった。

 今回は自宅に戻せないので、病状が安定すれば施設に頼むしかない。医療用麻薬を使用してしまうと引き受ける施設はないかもしれない。

 癌死そのものではなく、やはり誤嚥性肺炎などの感染症で悪化するとは思うが、どういう経過になるか。出血が止まらないとなると、当院では対処できない。口腔外科では、出血が続く時はまたご紹介下さいとしていたが。

 

 それにしても新型コロナワクチンの2回目が3週後にくる。当市では大規模集団接種だけなので、外出して受けてくるしかない。他の透析で入院する患者さんも外出してワクチン接種することになっていた。

 毎日病院から医師・看護師が会場に行っているので、一人分だけもらってこれば院内でできるが、手続き上はそうもいかない。

 

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膀胱癌、肺癌

2021年06月11日 | Weblog

 地域の基幹病院泌尿器科から80歳男性が転院してきた。当院内科に高血圧症・高尿酸血症で通院していた。

 14年前に当院で肺癌の手術を受けていた。当時は呼吸器科医がいて気管支鏡検査もしていた。大学病院の呼吸器外科から定期的に外来診療に来ていて、肺癌の手術を当院外科の常勤医としていた。(呼吸器外科医は当時講師で、他大学の教授に転出した)

 今となっては、そんな充実した診療体制の時もあったと、懐かしく思うばかりだ。

 

 5年前に肉眼的血尿があり、市内の泌尿器科クリニックからがんセンター泌尿器科に紹介された。膀胱癌の診断で、BCGとTURを繰り返し行っていた。内科外来を受診するたびに、本人から「こんな治療を受けて、今後はこういう方針になった」と聞いていた。

 その後、「膀胱癌が尿管に進行して、肺癌も見つかった」という話になり、「治療はできなくなって緩和ケアとなった」という話を聞いていた。(肺癌は扁平上皮癌なので転移ではないらしい)

 

 5月になって、ご本人は外来に来なくなった。高血圧症・冠攣縮性狭心症で通院している奥さんから、「当地域の基幹病院に入院した」という話を聞いた。「いつ急変してもおかしくない状態」と涙ぐんでいた。

 幸いに小康状態となり、当院に転院依頼が来た。今日転院してくると、予想したよりも案外元気だった。食事(全粥刻み食)も自力摂取できる。

 

 診療情報提供書になると、失語症の症状が出て、先方の病院の脳神経内科に入院した。頭部MRIでまだ病変が出ていないため、t-PAを使用した。すると肉眼的血尿が続き、膀胱タンポナーデになってしまった。泌尿器科に転科して、腎瘻造設術を行って、膀胱に緩和照射を行った。

 血尿は軽減して(消失はしない)、貧血を呈していたが、まだ輸血するほどではなかった(Hb8g/dlだが)。発熱と炎症反応上昇が続くが、腫瘍による症状とみている、ということだった。処方はカロナール(500mg)3錠分3だけ出ていた。

 今後どこまで持つかわからないが、感染症(尿路感染症、肺炎)・尿路出血・脳梗塞再発などの併発が予想される。脳梗塞はトルソー症候群となっていたが、この年齢だと脳血管の自体の問題か、トルソー症候群か正確にはわからない。

 

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