越えられぬもの

1994年5月1日　IMOLA.

ミハエルは　一番近くで　そして　おそらく唯一セナの最後を
見届けた。
ＰＰからスタートしたセナにリードを奪われた状態で。




1992年に初優勝し　1993年幾度もセナとコース上で渡り合った
もミハエルは1994年　チャンピオンチームWILIIAMS RENAULTに
移籍した　セナとチャンピオンをかけて直接対決できるドライバー
にまで成長した。

しかしチャンピオンシップを賭けて戦うはずだったこの年
セナとミハエルは直接ドッグファイトすることなく　第３戦
サンマリノGPを迎え　セナは散った。
ミハエルは次のＧPで初ＰＰを奪取　そひてシーズン最終戦
デーモンド　ヒルと争うことになった　タイトルを手にした。

ミハエルはセナの生前　レースのことで　よくセナと口論になり
セナの死直後も　ミハエルは気丈に振る舞い　セナのことを
語ることはほとんどなかった。・
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数年後　ミハエルは幾度のタイトルを手にした後の
モンツァ（イタリア）で勝利し　その公式会見で
ジャーナリストに

「勝利数で　セナに並んだが　今の気持ちは？」

と尋ねられたとき　何も答えず　その場で泣き崩れた。
涙の意味は彼にしかわからない。
セナの死の唯一の目撃者という重さか？
追いつき追い越そうとしていた相手が　越えられぬまま
手に届かないところへ行ってしまったためか?


ハッキネン　ヒル　ビルヌーブらとタイトルを争い
記録を全て塗り替えてしまったミハエル。
それでも彼はモチベーションはまったく落ちない。

彼の心の中では　まだセナを追撃中なのかもしれない。




1994年5.1 IMOLA LAP7の　「その先」を。