HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

売上げ拡大から環境保護へ。 PPRとプーマから目が離せない。

2012-03-26 17:37:41 | Weblog
 3月16日付けのWWD.COMに、以下のヘッドラインが載った。Jochen Zeitz has been named a director of the board of PPR, for a four-year term, and will chair the French firm's newly created sustainability committee.
 直訳すると、「4年間、PPR(ピノープランタンルドゥート)の要職を務めて来たヨッヘン・ツァイツは、フランスの会社で新しくつくられた持続開発委員会の議長を務める」と、いうものだ。

 ヨッヘン・ツァイツ(日本表記:ヨハン・ザイツ)は昨年、フランツ・コッホにプーマCEOの座を譲り、自らは親会社PPRのCSR部門の戦略スーパーバイザーという要職にいた。今度はPPRが新たに創立した「持続的開発委員会」のトップとして、環境の保護や資源の保全などに辣腕を振るうことになる。
 ヨハン・ザイツと言えば、07年、グッチなどを擁するPPRがプーマ株の30%を公開買い付けし、傘下入りしたおり、CEOとしてPPRの経営資源を活用し、プーマの売上げを拡大させた人物である。
 故・アレキサンダー・マックイーンと組んで高級スニーカーを企画したり、フセイン・チャラヤンのデザインでアバンギャルドな商品も発表したり。09年春開幕の米国の「ウィメンズ・プロフェッショナル・サッカー」とは複数年契約を結ぶなど、ナイキのお膝元で女子サッカー普及に大胆な先行投資も行なった。

 ところが、10年のW杯南ア大会を前後から戦略に新たな軸を加えた。環境保護やフェアトレードを意識した政策である。写真家ヤン・アルサス・バートランドとリュック・ベッソンが製作した環境映画「ホーム」に協賛。また、サハラ砂漠以南の国で生産された綿花を使ってTシャツ、スエットなどを生産し、サッカーファン向けに販売することで、綿生産農家の生活向上にも取り組んだ。
 今回の持続的開発委員会のトップ就任はこうした一連の活動の延長で、国連の地球サミットで採択されたアジェンダ21を受け、21世紀の課題として環境と開発を共存し得るものととらえ、企業としても環境や資源を考慮した節度ある開発を追求していこうということである。

 これを受けてだろうか、プーマのコッホCEOも、持続可能性に関わるKPI(重要業績評価指標)を新たに設定。今後の市場開拓では「これまでのグローバルな思考・行動は従来のようにできない。世界は地域ごとに異なり、今より一層地域に焦点を当てる」という。
 つまり、商品の開発段階からデジタル・マーケティング、SNSに取り組み、市場から求められない商品は作らず、Eコマースを駆使し店舗や在庫を調整して、環境や資源を守ろうというのだ。
 PPR傘下の高級ブランドは計画生産が前提だし、アウトレットも機能するから持続的開発は不可能ではない。ただ、プーマは各地域にライセンスを与えているし、 量販ルートのシューズやスポーツウエアは適性在庫の範囲を超えているように思う。まずはそうした見直しから、手をつけていただきたい。

 日本に目を向けると、東京・銀座の一等地にグローバル旗艦店を出店したSPAのように、素材集約型でアイテム数を極端に絞り込み、大量生産・大量販売で売上げをあげている企業がある。
 そのトップは「欧米からアジア中心の消費社会に変わり、今の40、50倍のグローバル経済が新たに出現する」と息巻くが、自社のビジネモデルではそうした市場の何倍もの商品を生産するわけで、Sustainable Developmentの次元とは大きくかけ離れているように思う。

 これから発展途上国の消費意欲が高まるのは言うまでもないし、マーケットや投資家も売上げにブレーキがかかることは望まないだろう。しかし、PPRが毎年増収増益を達成する中で、なおかつ利益率を大幅に伸ばせば、少なくとも無駄を省いたと見ることはできる。
 ヨハン・ザイツが取り組むSustainable Developmentが本物か。その正否は今後の製造業全体に大きな影響を及ぼすことは間違いない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする