HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

大義のないテーマ設定。

2015-11-18 14:03:45 | Weblog
 さる、11月10日、福岡市が毎年年度末の3月に行っている「ファッションウィーク福岡2016」の参加施設・コミュニティ募集が福岡アジアファッション拠点推進会議のサイトで発表された。

http://www.fa-fashion.jp/index.php?action_detail_index=true&doc_id=287

 ファッションウィーク福岡は、平成24年度に高島宗一郎福岡市長の肝いりでスタート。春物商戦直中の3月、福岡市に集客するイベントが無かったため、市長の「おもいつき」で急遽起案されたカタチだ。

 初年度は「十分な準備期間がなかった?」ということで、企画ごと地場広告代理店「NA」に丸投げされ、企画内容が販促に特化するのか、イベント色を全面に出すのか、中途半端な事業で終わってしまった。

 代理店お得意のポスターやパンフレットの制作に参加施設、参加店の広告スポンサー料の大半が費やされ、参加店舗を回ってスタンプラリーによる旅行プレゼントなどの企画も、然したるレスポンスはなく、事業効果がほとんど得られず仕舞いだった。

 そうした反省を踏まえ、2回目は「企画コンペ」というカタチで事業案が募集された。事務局が置かれる福岡商工会議所には、事業をゲットしたい代理店に加え、参加施設&スポンサーとなるデベロッパーが揃い、事業募集のオリエンテーションが開催された。

 企画運営委員長は出席者、特に代理店の担当者を前に ファッションウィーク福岡の目的を「多くのお客さんに福岡に来て服を買ってもらう」と説明した。

 そして、「あなた方にはそのための企画を考えてほしい」と宣い、事業費の総額は「700万円」で、ポスターやパンフレットなどからイベントまで全て賄うことを条件とした。

 参加した代理店の多くが「えっ、たった700万」「あまりうま味がないな」「スポンサーを捉まえろってことか」等々が頭をよぎったのは言うまでもない。

 結局、コンペの結果、代理店の「H」が事業者となった。企画はパンフレット、タブロイド型のフライヤーなどのPR物は部数を削減して制作され、メーンイベントは市の広場を活用した「ファッションマーケット」や「キッズファッションショー」どまりだった。

 推進会議側は当初、ファッションマーケット出店の条件を「ファッショントレンドの発信」としたが、店舗を経営する事業者がわざわざ参加するはずもなく、所場代を取られることで募集が進まず、結局、フリマまがいのイベントに堕ちてしまった。

 代理店の企画力もせいぜい、企業タイアップでサンプリングを抱き合わせたくらいで、ファッションウィークとは名ばかりのパットしない事業に終始してしまったのである。

 もっとも、推進会議も、代理店も、先立つ予算がなければ思いきった企画などできるはずもないのは、最初からわかり切ったこと。

 そのため、今年3月に開催された第3回目は、メーン予算のクリエイティブ産業関連の他、年度末で事業休止が決まっていた「かわいい区」、福岡市自ら名乗りを上げた「国家戦略特区 福岡市グローバル創業・雇用し創出特区」などもあてがわれて、何とか事業費は確保することができたようだ。

 ところが、事業者はH社がルーチンで継続。新たな企画と言っても、売れないミュージシャンや三流タレントに予算が費やされ、販促面のポイント還元は参加店任せで、実効性を欠く内容は変わらなかったのである。

 プレス的な活動としては、地場テレビ局のFBS福岡放送を活用。夕方に放送されている自社制作の「情報番組」で10分ほどの枠を買い取り、イベントの様子やスタイリスト、専門学校生、学生のファッショショーを告知した程度である。

 番組内では、商工会議所の担当スタッフがファッションウィークの事業目的を「売上げ拡大」「集客」などと声高に叫んでいたが、都落ちのスタイリストや業界無知の専門学校生を取り上げたところで、単なるニュースの域を出ないのは明白だ。

 この辺にも、企画運営委員長の意向で無理矢理こじつけたのがよくわかる。自ら専門学校にはメディア出演に足る学生がいなかったのか、それとも後ろめたかったのか、こればかりは他校に譲ったようだが、何の脈略もない情報発信にイベントそのものの手詰まり感を露呈した。

 8月の福岡アジアファッション拠点フォーラムで、企画運営委員長は「約260もの商業施設や個店が連携し、イベントやセールを行った」と、ファッションウィークの結果報告を行った。

 しかし、参加店舗と言っても、サイトなどに無償で店名を記載したところまでカウントして数字を過大計上しただから、それがイベントの盛り上がりを判断する材料には全く当たらない。

 事業の成否、集客数、売上げ実績へのプラスαなど、具体的なデータをあげない限り、イベント事業者たちによる手前味噌の評価では、客観性も信憑性も欠くのは言うまでもない。

 こうしたいくつもの問題点を抱えながら、イベント利権を手にしたい輩によって、本年度もファッションウィーク福岡は実施される。

 期日は来年3月の予定で、さすがに代理店には企画を任せてられないのか。テーマは「市民のアイデアやマインドがファッションでカタチになる春の祭り~ファッション・ブラッサム(仮)」となっている。

 具体的には、主役が「福岡びと」と設定され、「福岡びとが生み出すファッションの力を内外にアピールすることで、多くの人を呼び込み、街全体を盛り上げていく」とか。それに向けて、参加施設とコミュニティの公募が始まったのである。

 12月のマッチングミーティングで、参加施設とコミュニティを事業に照らし合わせ、諸条件を含め合意したコンテンツが実施に至るかたちとなるそうだ。

 テーマや主役をそのまま解釈すれば、「福岡市民から企画を募集する」ように受け取れる。しかし、具体的には「参加施設」「コミュニティ」と規定されているのだから、ハードをもつところやサークルなど活動実態がある団体とならざるを得ない。

 東京からタレントやミュージシャンを呼んでもギャラがかかるので、地元の施設や団体を活用してその分の経費を浮かそうということなら、わからないでもない。事業予算には限りがあることだし、この辺は代理店の浅知恵と言えなくもないだろう。

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/47575/1/20150304-keizai-yosan.pdf

 となると、「博多どんたく」とどこが違うのだろう。まあ、ファッションウィークという若者よりの事業だけに、ダンスチームやパフォーマンス集団、クリエーターの集まりなんかに期待しているのは、だいたい想像がつく。

 予算獲得について、今年8月に粗案がまとまった「福岡市まち・ひと・しごと創生総合戦略~キラリと光るアジアのリーダー都市をめざし~」が活用されるのはないだろうか。事実であれば、福岡びとともマッチする。

http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/49519/1/sogosenryaku-genan.pdf

 しかしながら、ファッションウィークの事業参画募集は、福岡県と福岡商工会議所が中心母体の福岡アジアファッション拠点推進会議のサイトのみで公開されただけである。メーンの予算を拠出する福岡市のホームページでは、今のところ告知されてはいない。

 福岡びとと言っておきながら、こうした対応はどうなのか。推進会議のサイトを一般の福岡市民が見ているはずがない。情報発信力、レスポンス率ともたかが知れている。

 市民に向けた企画募集といったところで、この程度の告知なら、応募が殺到するとは思えない。言い換えれば、推進会議側では参加施設もコミュニティも、ある程度の目星をつけていると見た方が妥当だろう。

 今回の事業企画は「コンペ」ではないので、すでに参加者が決まっていても出来レースにはならない。企画運営委員長を中心にした利害関係者が簡単に既得権益を手放すはずはないから、自分たちにとって有利な福岡びとを集めた方が事業はスムーズに進む。

 ファッションウィーク福岡の事業対象エリアは、天神や博多駅とその周辺に限られている。そのことを考えると、それほど多くの参加施設やコミュニティが企画募集に集まるとも思えない。周辺を加えても限定的だろう。

 とすれば、利害関係者にとってはメリットのある施設や団体を事前に設定し、残りを公募で採用する腹づもりではないだろうか。でなければ1回きりのマッチミーティングで、参加者を決められるはずはないからである。

 小売業が中心の福岡にとって、ファッション業界の活性化事業とは何なのか。端からそうした問題提起が蔑ろにされ、利害関係者の思惑や利得だけで事業が進んでいく。会議と言ってもすべてが密室で決められ、事後報告されるだけだ。

 先立つ予算獲得に必要な大義も、テーマのニュアンスを何とか変えてつなぎ止めているに過ぎず、回を重ねても企画が修練されることはない。

 ファッションウィーク福岡2016の企画募集があった数日後、推進会議がメーン事業とうそぶくものの、実質はRKB毎日放送の事業となっている「福岡アジアコレクション(FACo)」が台湾の台北市で開催された。5月にはタイのバンコクでも実施されているものだ。

 東京から三文タレントを呼ぶ客寄せ興行も、福岡県や福岡会議所からの予算拠出、スポンサー収入を当てにしないと興行的に成り立たないのは言うまでもない。それをつなぎ止めるには、さらに自治体の「アジア発信広報予算」をゲットするしかない。

 広告収入が頭打ちのテレビ局にとって、放送外の事業収入を得るには客寄せ興行のガールズコレクションが手っ取り早いということだ。

 奇しくも昨日は、九州・沖縄の主要企業の9月中間決算が出揃った。それによると、RKB毎日放送は売上高115億7200万円(対前年比2.9%減)、純利期7800万円(同83.1%減)と、減収減益だった。

 理由はどうあれ、業績不振は紛れもない事実である。国から放送事業の許認可という恩恵を受けながら、なおかつ放送外の事業にも自治体から巨額の税金が投入されて、この体たらく。下らない客寄せ興行に手を出す前に、もっとやることがあるだろう。

 来年もファッションウィーク福岡は、福岡アジアコレクションをしんがりにして幕を閉じるはずだ。その事業主体の企業に自治体は公費で支援をしているのだから、空いた口が塞がらない。

 地場のファッション産業界にとって、メリットがあるのであれば、多くのファッション関係者が参加し、支援するはずである。ファッションウィーク福岡にしても、福岡アジアコレクションにしても、それが全く見えないところに、事業利権が見え隠れする。
コメント
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