さる11月19日、東京渋谷にあったマルイシティ渋谷がリニューアルされ、「渋谷モディ」としてオープンした。
マルイシティ渋谷の前身、丸井渋谷店はDCブランド世代の筆者にとって渋谷パルコ、ラフォーレ原宿と並んで、よく立ち寄った館だ。
クロージングやウエアはブランドによって買い分けしていたが、コーディネート隙間を埋めるベルトや靴、マフラー、手袋では、お気に入りを見つけるのにマルイが重宝した。
百貨店という業態ながら、コストパフォーマンスの良い商品が揃っていたとの印象だ。
ただ、それもDCブランドブームの終焉とともに、次第に影が薄れていった。MDの担当者が声に出さないまでも、「商品を作るメーカーがなくなった」のだから、「売場に品揃えできない」のは当然だろう。
メーカーとすれば、「お店で売れないのだから、作ってもしかたない」との言い分かもしれない。どちらが元凶どうのといっても無意味だ。それほど、ブームが去るというのは、小売り、メーカー双方にとっていかに反動が大きいかである。
その後は筆者もマルイはもちろん、パルコ、ラフォーレにも足が向かないまま、業界紙誌などで動向に触れるくらいに止まっていた。
2003年くらいだっただろうか。流通系メディアに大再編を謳う見出しが躍ったが、ヴァージン・メガストアーズ・ジャパンの株式売却、ヤマトHDとの資本提携の他、小売業としては中野店の建て替え、新宿店のリニューアル以外に目立った動きはなかった。
でも、水面下では次の一手に向けて着々と準備は続けられていたようだ。若者ターゲット、洋服を中心としたファッション偏重、そして割賦販売のカード事業による百貨店ビジネス(消化仕入れ)からの転換である。
新生マルイは老弱男女の全世代に焦点を当て、ライフスタイル提案型のMDとテナント、汎用性のあるカードを合体させた都市型ショッピングセンターとして、新たな一歩を踏み出したのだ。
ビジネスモデルも服飾雑貨から飲食、アミューズメントまでの専門店、サービス施設を定期借家契約でリーシングするデベロッパースタイルである。
モディはグループ会社のエイムクリエイツが運営にあたり、このデベロッパースタイルを踏襲して立地特性や建物に応じた小商圏に対応する業態。埼玉の川越、東京の町田、神奈川の戸塚の3店で手応えをつかみ、満を持して渋谷に乗り込んだ形だ。
ただ、若者カルチャーの聖地にはパルコ、109、マークシティ、渋谷ヒカリエのShinQsと、競合がひしめく。パルコや109は一時は覇権を得るほどの隆盛を極めたが、若者マーケットの方がボリュームで十分に満足し始めたせいか、最近は精彩を欠いている。
マークシティは渋谷駅という好立地、集客性、マスマーケットに何とか助けられているほどで、聖地を代表するようなテナントリーシングではない。ShinQsとて、運営が東急百貨店ということでは、無難なテナント集積に落ち着いている。
モディ渋谷はマルイにとって自前店舗、自主編集売場よりも運営は容易いようだが、テナントの顔ぶれを見る限りカフェや飲食、雑貨が中心で、マルイとてキラーコンテンツ不足は例外ではないようである。
そこで、「コト消費」に軸足を置き、何とか集客、滞留時間を拡大しようという腐心ぶりがうかがえる。
コンセプトは「知的商業空間」というから、かつてのセゾングループ風な印象も受けるが、まあ知的好奇心をくすぐるような遊びをいろんなテナントから発信していこうということだろう。
そこではマルイ自らプレスリリースで発表している「HMV&ブックス・トーキョー」が目玉テナントなのだろうか。
HMVは米のタワーレコードと双璧をなした英国のレコード販売チェーン。90年に日本に上陸し、渋谷のONE-OH-NINEに1号店を開店した時はよく訪れた。それほど大きな店舗ではなかったが、Higher Octave系のCDを何枚か買った。
このHMVがCD売上げ不振の真っただ中に仕掛けるのが書店と一体化した新業態。100名収容できるスペースを設け、年間1000本のイベントも仕掛けていくとか。
アーチストの新作リリース、ベストセラー作家のサイン会からオタク系アイドルのミ二ライブまで、集客力をもつ渋谷の地の利を生かし、物販とリンクさせる狙いのようだ。
まあ、アキバまで行けば、渋谷イメージがガタ落ちするかもしれないが、商業者としてはモノが売れない中で四の五の言ってられないのかもしれない。
表の通りにあれだけの通行客がいるのだから、とにかく店に入って滞留してほしいというのが本音だと思われる。
丸井渋谷店は80年代から90年頃まで御用達の一つだっただけに、モディ渋谷にも期待は大きい。併せて来年春には博多駅前のキッテ博多には「マルイ博多」が進出するのも楽しみである。
こちらの詳細なテナント概要はまだ発表されていないが、マルイ業態として幅広いターゲットに合わせたリーシングになると思う。
立地が九州の中心、福岡という政令市、博多駅前ということで、商圏は広域に設定されているはず。ライフスタイル提案型店舗として服飾から飲食、アミューズメントまでの構成も、変わらないだろう。
もし、モディ渋谷と同じく、 HMV&ブックス・トーキョーの博多版が出店してくれるのなら、久々にスムースジャズ系のレーベルでも探してみようかと思う。
もうCDを買わなくなってどれくらいだろうか。最後にCDを買ったのがいつだったか、思い出せないくらいご無沙汰だ。新業態ができれば、CDを購入するきっかけにはなる。
逆に書籍については、アマゾンをメーンにジュンク堂、地場書店と天神生活圏で十分過ぎる中、わざわざ足を伸ばしたくなるような仕掛けを提案してくれないだろうか。
ビジネス系の単行本からデザイン関連、雑誌まで年間にすると数万円も購入しているから、筆者はこのマーケットからは外れていないと思う。
個人的には、マスメディアが切り込まないネタを書くジャーナリストやフリーライターの裏話なんかは聞いてみたい。また、書籍を読むだけではなかなか理解し難い技術系書籍の解説イベントなんかをやってくれないかと思っている。
それもこれも、 HMV&ブックス・トーキョー博多が出店してくれることが前提なのだが。天神にはない業態だけに期待は大いにある。
街はクリスマス商戦に入ったのだが、店頭を見る限りでは冬物衣料の動きは鈍いように感じる。ずっと期待している目新しいメンズ業態の登場は、この秋もなかった。
メーカーも大人向けはそれほど作らないし、スーツを脱げばアメカジ系か、ユニクロで十分ということだろう。ならば、いくらマルイが新店舗をオープンするといっても、テナントがリーシングできるわけがない。
欧州系のSPAが登場するまで待つとするか。マルイ博多の登場を含めて、当面はカルチャー系業態や食品ストアで、DIYや料理、撮影なんかに投資するしかないようだ。
マルイシティ渋谷の前身、丸井渋谷店はDCブランド世代の筆者にとって渋谷パルコ、ラフォーレ原宿と並んで、よく立ち寄った館だ。
クロージングやウエアはブランドによって買い分けしていたが、コーディネート隙間を埋めるベルトや靴、マフラー、手袋では、お気に入りを見つけるのにマルイが重宝した。
百貨店という業態ながら、コストパフォーマンスの良い商品が揃っていたとの印象だ。
ただ、それもDCブランドブームの終焉とともに、次第に影が薄れていった。MDの担当者が声に出さないまでも、「商品を作るメーカーがなくなった」のだから、「売場に品揃えできない」のは当然だろう。
メーカーとすれば、「お店で売れないのだから、作ってもしかたない」との言い分かもしれない。どちらが元凶どうのといっても無意味だ。それほど、ブームが去るというのは、小売り、メーカー双方にとっていかに反動が大きいかである。
その後は筆者もマルイはもちろん、パルコ、ラフォーレにも足が向かないまま、業界紙誌などで動向に触れるくらいに止まっていた。
2003年くらいだっただろうか。流通系メディアに大再編を謳う見出しが躍ったが、ヴァージン・メガストアーズ・ジャパンの株式売却、ヤマトHDとの資本提携の他、小売業としては中野店の建て替え、新宿店のリニューアル以外に目立った動きはなかった。
でも、水面下では次の一手に向けて着々と準備は続けられていたようだ。若者ターゲット、洋服を中心としたファッション偏重、そして割賦販売のカード事業による百貨店ビジネス(消化仕入れ)からの転換である。
新生マルイは老弱男女の全世代に焦点を当て、ライフスタイル提案型のMDとテナント、汎用性のあるカードを合体させた都市型ショッピングセンターとして、新たな一歩を踏み出したのだ。
ビジネスモデルも服飾雑貨から飲食、アミューズメントまでの専門店、サービス施設を定期借家契約でリーシングするデベロッパースタイルである。
モディはグループ会社のエイムクリエイツが運営にあたり、このデベロッパースタイルを踏襲して立地特性や建物に応じた小商圏に対応する業態。埼玉の川越、東京の町田、神奈川の戸塚の3店で手応えをつかみ、満を持して渋谷に乗り込んだ形だ。
ただ、若者カルチャーの聖地にはパルコ、109、マークシティ、渋谷ヒカリエのShinQsと、競合がひしめく。パルコや109は一時は覇権を得るほどの隆盛を極めたが、若者マーケットの方がボリュームで十分に満足し始めたせいか、最近は精彩を欠いている。
マークシティは渋谷駅という好立地、集客性、マスマーケットに何とか助けられているほどで、聖地を代表するようなテナントリーシングではない。ShinQsとて、運営が東急百貨店ということでは、無難なテナント集積に落ち着いている。
モディ渋谷はマルイにとって自前店舗、自主編集売場よりも運営は容易いようだが、テナントの顔ぶれを見る限りカフェや飲食、雑貨が中心で、マルイとてキラーコンテンツ不足は例外ではないようである。
そこで、「コト消費」に軸足を置き、何とか集客、滞留時間を拡大しようという腐心ぶりがうかがえる。
コンセプトは「知的商業空間」というから、かつてのセゾングループ風な印象も受けるが、まあ知的好奇心をくすぐるような遊びをいろんなテナントから発信していこうということだろう。
そこではマルイ自らプレスリリースで発表している「HMV&ブックス・トーキョー」が目玉テナントなのだろうか。
HMVは米のタワーレコードと双璧をなした英国のレコード販売チェーン。90年に日本に上陸し、渋谷のONE-OH-NINEに1号店を開店した時はよく訪れた。それほど大きな店舗ではなかったが、Higher Octave系のCDを何枚か買った。
このHMVがCD売上げ不振の真っただ中に仕掛けるのが書店と一体化した新業態。100名収容できるスペースを設け、年間1000本のイベントも仕掛けていくとか。
アーチストの新作リリース、ベストセラー作家のサイン会からオタク系アイドルのミ二ライブまで、集客力をもつ渋谷の地の利を生かし、物販とリンクさせる狙いのようだ。
まあ、アキバまで行けば、渋谷イメージがガタ落ちするかもしれないが、商業者としてはモノが売れない中で四の五の言ってられないのかもしれない。
表の通りにあれだけの通行客がいるのだから、とにかく店に入って滞留してほしいというのが本音だと思われる。
丸井渋谷店は80年代から90年頃まで御用達の一つだっただけに、モディ渋谷にも期待は大きい。併せて来年春には博多駅前のキッテ博多には「マルイ博多」が進出するのも楽しみである。
こちらの詳細なテナント概要はまだ発表されていないが、マルイ業態として幅広いターゲットに合わせたリーシングになると思う。
立地が九州の中心、福岡という政令市、博多駅前ということで、商圏は広域に設定されているはず。ライフスタイル提案型店舗として服飾から飲食、アミューズメントまでの構成も、変わらないだろう。
もし、モディ渋谷と同じく、 HMV&ブックス・トーキョーの博多版が出店してくれるのなら、久々にスムースジャズ系のレーベルでも探してみようかと思う。
もうCDを買わなくなってどれくらいだろうか。最後にCDを買ったのがいつだったか、思い出せないくらいご無沙汰だ。新業態ができれば、CDを購入するきっかけにはなる。
逆に書籍については、アマゾンをメーンにジュンク堂、地場書店と天神生活圏で十分過ぎる中、わざわざ足を伸ばしたくなるような仕掛けを提案してくれないだろうか。
ビジネス系の単行本からデザイン関連、雑誌まで年間にすると数万円も購入しているから、筆者はこのマーケットからは外れていないと思う。
個人的には、マスメディアが切り込まないネタを書くジャーナリストやフリーライターの裏話なんかは聞いてみたい。また、書籍を読むだけではなかなか理解し難い技術系書籍の解説イベントなんかをやってくれないかと思っている。
それもこれも、 HMV&ブックス・トーキョー博多が出店してくれることが前提なのだが。天神にはない業態だけに期待は大いにある。
街はクリスマス商戦に入ったのだが、店頭を見る限りでは冬物衣料の動きは鈍いように感じる。ずっと期待している目新しいメンズ業態の登場は、この秋もなかった。
メーカーも大人向けはそれほど作らないし、スーツを脱げばアメカジ系か、ユニクロで十分ということだろう。ならば、いくらマルイが新店舗をオープンするといっても、テナントがリーシングできるわけがない。
欧州系のSPAが登場するまで待つとするか。マルイ博多の登場を含めて、当面はカルチャー系業態や食品ストアで、DIYや料理、撮影なんかに投資するしかないようだ。