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ファッション業界で大卒、高卒を問わず、将来がどれほど約束されているかというと、それは極めて不確定である。筆者が業界に入った80年代は数年の経験を積むと、「独立」する人が圧倒的に多かった。
一つは「メーカーを立ち上げる」だ。業界で数年も働けば生地問屋や工場などにも人脈ができるので、メーカーを興すのはそれほど難しくはない。もう一つは「ショップを経営する」である。洋服を扱っている以上、 自分が思い描く「店」を構え、商品を仕入れて売ってみたくなるのは、自然の流れだった。
それゆえ、大手企業の場合は同期入社が5名いれば、営業やデザイナーの1名くらいが、そのまま販売部長や企画の責任者などの幹部として残ったのである。
ところが、90年代以降は右肩上がりの成長が望めなくなり、会社に残りたくても残れなくなった。5名入社しても会社が必要とする幹部は1名程度でいいのだから、必然的に30代後半になると次第にポストや仕事が無くなっていく。小売りやSPAは「店長」が一つの区切りだが、その後に「エリアマネージャー」や「スーパーバイザー」が用意されているところは、それほど多くない。
メーカーでも、40代で部長職やMDのチーフというポストがあるのは大手のみで、中堅以下は自分より年下が対象の商品で営業やMDをそのまま続けるか、別のメーカーを興して独立するしかないのである。
学生向けのリクルート資料には将来のポストや職種が明記されているが、今のファッション業界でそこまでを誰が予測できるというのか。来年の売上げ予想すら立てるのが難しくなっている時代にだ。
だから、水面下で「肩たたき」が頻繁に行なわれていると思う。表向きは自主退職であっても、ポストや仕事がなくなれば会社を去らざるを得なくなる。筆者の知り合いにも何人か該当者がいる。
大手NBメーカーでデザイナーなどを経験したY氏。有名セレクトショップの開発にも携わった人物だ。このメーカーでは企画職がブランドの責任者などのポストを得ると、その売上げ予算で年収が決まる。
言い換えれば、ブランドが売れなければ年収は下がり、中止ならポストも仕事もなくなるのである。現在、Y氏はこのメーカーを去り、奥さんの実家の米屋を継いでいる。
大手チェーンストアでディスプレイやデコレーションに手腕を振るったM氏。30代で販促課長まで上り詰めたが、バブル崩壊後は「10万円の予算で100万円程度の演出を行なえ」と、無理難題を押しつけられて退職。地産地消の食材を扱うレストランに再就職し、その後、青果店を経営していたが、今年になって閉店。現在は警備のアルバイトをやっているという。
Y氏もM氏も、ともに男性だから専門職でいくら活躍しても、ある程度の年齢になればポストや仕事がなくなるのが業界の現実なのだ。
逆に女性は将来のポストが約束されない反面、販売職という「雇用」は年齢に関係なく用意されている。友人のHさんは、中堅のチェーンストアで敏腕バイヤー、ブランドショップの店長として活躍した後、数年の充電期間を経てオーダーメイドの会社で催事販売を担当。今は生命保険会社のカウンセラーを務めているが、それは販売職時代の経験と実績を買われてのことだ。
別の友人のKさんは、専門店の店長からNBのセールスコントローラーを経て、今は東京のメーカーに勤務。レディスは中高年になってもブランド、アイテムともに豊富だから、経験さえあれば就職は引く手あまたなのだろう。昨年、何年かぶりに再開し、往年のカーリーヘアにドン引きしつつも、元気な姿には安堵した。
かつて業界を目指す男子に対し、「メンズファッションは30歳を過ぎると、メーカーもブランドも少なくなるから、ずっと一つの会社で働くならレディスを選んだ方がいい」とアドバイスしていた。
しかし、今後は「将来は経営者を目指すか、独立するか、別の業界で働くか。目標を決めて業界に入らないと、先のポストも仕事も見えない」に切り替えなければならないと思う。
一つは「メーカーを立ち上げる」だ。業界で数年も働けば生地問屋や工場などにも人脈ができるので、メーカーを興すのはそれほど難しくはない。もう一つは「ショップを経営する」である。洋服を扱っている以上、 自分が思い描く「店」を構え、商品を仕入れて売ってみたくなるのは、自然の流れだった。
それゆえ、大手企業の場合は同期入社が5名いれば、営業やデザイナーの1名くらいが、そのまま販売部長や企画の責任者などの幹部として残ったのである。
ところが、90年代以降は右肩上がりの成長が望めなくなり、会社に残りたくても残れなくなった。5名入社しても会社が必要とする幹部は1名程度でいいのだから、必然的に30代後半になると次第にポストや仕事が無くなっていく。小売りやSPAは「店長」が一つの区切りだが、その後に「エリアマネージャー」や「スーパーバイザー」が用意されているところは、それほど多くない。
メーカーでも、40代で部長職やMDのチーフというポストがあるのは大手のみで、中堅以下は自分より年下が対象の商品で営業やMDをそのまま続けるか、別のメーカーを興して独立するしかないのである。
学生向けのリクルート資料には将来のポストや職種が明記されているが、今のファッション業界でそこまでを誰が予測できるというのか。来年の売上げ予想すら立てるのが難しくなっている時代にだ。
だから、水面下で「肩たたき」が頻繁に行なわれていると思う。表向きは自主退職であっても、ポストや仕事がなくなれば会社を去らざるを得なくなる。筆者の知り合いにも何人か該当者がいる。
大手NBメーカーでデザイナーなどを経験したY氏。有名セレクトショップの開発にも携わった人物だ。このメーカーでは企画職がブランドの責任者などのポストを得ると、その売上げ予算で年収が決まる。
言い換えれば、ブランドが売れなければ年収は下がり、中止ならポストも仕事もなくなるのである。現在、Y氏はこのメーカーを去り、奥さんの実家の米屋を継いでいる。
大手チェーンストアでディスプレイやデコレーションに手腕を振るったM氏。30代で販促課長まで上り詰めたが、バブル崩壊後は「10万円の予算で100万円程度の演出を行なえ」と、無理難題を押しつけられて退職。地産地消の食材を扱うレストランに再就職し、その後、青果店を経営していたが、今年になって閉店。現在は警備のアルバイトをやっているという。
Y氏もM氏も、ともに男性だから専門職でいくら活躍しても、ある程度の年齢になればポストや仕事がなくなるのが業界の現実なのだ。
逆に女性は将来のポストが約束されない反面、販売職という「雇用」は年齢に関係なく用意されている。友人のHさんは、中堅のチェーンストアで敏腕バイヤー、ブランドショップの店長として活躍した後、数年の充電期間を経てオーダーメイドの会社で催事販売を担当。今は生命保険会社のカウンセラーを務めているが、それは販売職時代の経験と実績を買われてのことだ。
別の友人のKさんは、専門店の店長からNBのセールスコントローラーを経て、今は東京のメーカーに勤務。レディスは中高年になってもブランド、アイテムともに豊富だから、経験さえあれば就職は引く手あまたなのだろう。昨年、何年かぶりに再開し、往年のカーリーヘアにドン引きしつつも、元気な姿には安堵した。
かつて業界を目指す男子に対し、「メンズファッションは30歳を過ぎると、メーカーもブランドも少なくなるから、ずっと一つの会社で働くならレディスを選んだ方がいい」とアドバイスしていた。
しかし、今後は「将来は経営者を目指すか、独立するか、別の業界で働くか。目標を決めて業界に入らないと、先のポストも仕事も見えない」に切り替えなければならないと思う。