9月も半ばに差し掛かった。店頭は秋物に変わったが、福岡はまだまだ残暑があって、先物買いのお客さんはまばらだ。一方で、動きの良い商品もあり、「サイズによっては完売したアイテムもある」と、あるレディスメーカーさん。だが、セレクトショップの店頭を見る限りでは、これと言った目を引く商品は見当たらない。
大手SPAはレディスで「ベロア」素材を仕掛けている。起毛の割にツルンとして感触があり、フォーマルにもカジュアルにも合わせられるので、トレンドにはなっていくだろう。シルエットもスリム路線の揺り戻しから、全体的にふわっとした太めになっている。
全体的にはフロントにギャザーを入れたり、袖のラインを意識したブラウス、ボトムはワイドパンツやフレアスカートがキーアイテムになるのだろうか。店頭ではそれらに加え、アメカジ系のトレーナーなんかを10月頃まで引っ張りながら、推移していくのではないかと思う。
ただ、各社とも今シーズンを表すデザインを見あたらず、数字を取る先物としては「レザージャケット」くらいしかいないようだ。レディスではファーやムートンをあしらうなど、少しアレンジしたレザーにお客さんが注目している印象である。
そのレザージャケットだが、これがどこも似たり寄ったりなデザインで、攻め手を欠いているように感じる。メンズ、レディス、各ショップとも判で押したように打ち出すのは「ダブルのライダースジャケット」。ここ数年、欧米を中心にデルカジで目立っていたことで、投入に拍車をかけたと見られる。
ヤングは価格を抑えるためにフェイクやデニムもあるが、ヤングアダルトからアダルトまで一様に本革仕様(ラムが主体)で、付属のジップ&ホック使いも一辺倒。セレクトのほとんどがオリジナルで、価格が3万円代後半から5万円台と値ごろ感もだ。違いはバイアスジップの角度と位置、数くらいか。一部でアメカジの代表「Schott」などのブランドがある程度になる。
ここまで似通ったジャケットが並ぶと、店頭で見ただけではその違いはわかりにくい。本格的なバイク乗りのジャケットなら、革も硬めのステアからカウ、カーフだろう。しかし、タウンに着るには柔らかいホース、ゴート、ラムやシープの方が適するから、企画もその方向で行くしかないのだと思う。
特にレディスではゴチゴチのレザーは、華奢な日本人には似合わない。プレスリールックを女性版に焼き直したハードスタイルも、肉感的なプロポーションをもつ米国モデルならマッチするが、日本人の体型ではガバガバだから、どうしても柔らかい素材のラムやシープで、カラダにフィットさせる仕様にならざるを得ない。
それでも、アイテムはレザーのライダースだから、ジップやホック使いの仕様は踏襲されていく。女性は男性と違ってハンドバッグを持つし、ジャケットが脹らむのを嫌うので、メンズほどジップやコインのポケットは要らない。結果的に余分なディテールはカットされ、よりシンプルなデザインになっていく。違いを打ち出しづらいから、上襟をカットするなど、引き算の企画で個性を打ち出すくらいしかないのである。
さらに店頭のディスプレイでは、インナーやボトムとコーディネートする。店としては1点でも買い上げ点数を増やしたいし、メーンのアイテムを売りたいのはやまやまだが、実際には組み合わせたアイテムの方が売れるというケースもある。SPA化しコーディネートMDをしっかり作ったとは言っても、売れるのはほとんど単品でしかない。
注目すべきは、ダブルのレザーライダースの場合、タウンカジュアルでの着こなしは、ディスプレイ時から「前空き」で飾られている点だ。それの方がインナーやボトムとのコンビネーション、色や素材の外し崩しで提案しやすくなる。確かにそうしたコーディネート、ディスプレイの手法は一理ある。
しかし、レザーライダースのデザインというか、完成型の仕様が開襟状態のワンパターンだと、着こなし提案もありがちなものになり、どこか陳腐化して見えてくる。お客にとっては、あまり意外性を持って受け取られないのだ。
カジュアルスタイルの着こなしだから、ドレスダウンしたい。関東以南は温暖化で冬でもそれほど寒くないので、ライダースジャケットの着こなしは前空きでも十分。だから、ジャケットの仕様が開襟状態で完成するのはわからないでもない。
しかし、本来のライダーがレザージャケットを着るのは、バイクに乗る時だから防風や怪我防止のために前合わせの状態にする。襟元に風が入って来ないようにジップを上まで上げれば、襟は台襟なしのシャツカラーになるはずだ。それもファッションスタイルではないのだろうか。
店頭に飾ってあるのはみな開襟、前空きの状態だから、多くのお客さんがこうしたレザーライダース本来の完成仕様を見たことがないと思う。それほど大したことではないのだが、店頭展開のアイテムデザイン、ディスプレイがあまりにワンパターン化している。だから、ダブルのレザーライダース本来の完成仕様で展開するブランドが2〜3あってもいいのでは、数年来ずっと思っていた。
もちろん、各社ともパターンは閉襟した状態で作ってあるだろうが、開襟・前空きで革をプレスしてあると閉襟、前合わせすると変な皺がよって、襟元がぎこちなくなることも考えられる。だから、閉襟や前合わせ、ジップアップはしにくのかもしれない。しかし、ディスプレイや見せ方で印象を変えなければ、ワンパターンな展開方法から脱却できない。お客さんにも今シーズンのイチ押しアイテムとしては印象づけにくく、結果マークダウンやバーゲン待ちの怖れもある。
同じことを考えたわけでもないだろうが、今年3月、コムデギャルソンが「ブラックマーケット」で販売したライダーズジャケットは、完成仕様の見せ方が「閉襟状態」だった。ルイスレザーとのコラボアイテムということだが、各社がライダースジャケットを打ち出す中でどこもかしこも開襟、前空き仕様で見せることを嫌ったとすれば、いかにもコムデギャルソンらしい。
レザーメーカーへの協業オファーにも二つ返事で乗ってもらえるコムデギャルソンに対し、セレクト各社はODMやOEMでの企画がほとんどだろうから、似通ったアイテムデザインになるのは仕方ない。
しかし、仕様やパターンにも決して手を抜いていないと胸を張るなら、完成型の見せ方を少しアレンジすると、お客さんに与えるファーストインプレッションもかなり違ってくるのではないか。それが買う気にさせる第一歩になることだってあると思う。
コムデギャルソンがライダース本来の仕様に拘るルイスレザーとコラボしたことが、必然なのか意外なのか、どちらにしてもダブルライダースのワンパターン化にくさびを打ち込んだのは確かだ。さすがコムデギャルソンとしかいいようがない。
肌を刺す風がまだまだ冷たい3月始め、ピンと張りつめた緊張感あるパリコレクションに赴いたことがある。その会場に早足で急ぐモデルたちは寒さをしのぐために閉襟、前合わせでレザーライダースを着こなしていた。これこそ、お洒落の王道だと感じた。ショップの店頭でも、こうした角度を変えた着こなし提案があってもいいのではないか。
大手SPAはレディスで「ベロア」素材を仕掛けている。起毛の割にツルンとして感触があり、フォーマルにもカジュアルにも合わせられるので、トレンドにはなっていくだろう。シルエットもスリム路線の揺り戻しから、全体的にふわっとした太めになっている。
全体的にはフロントにギャザーを入れたり、袖のラインを意識したブラウス、ボトムはワイドパンツやフレアスカートがキーアイテムになるのだろうか。店頭ではそれらに加え、アメカジ系のトレーナーなんかを10月頃まで引っ張りながら、推移していくのではないかと思う。
ただ、各社とも今シーズンを表すデザインを見あたらず、数字を取る先物としては「レザージャケット」くらいしかいないようだ。レディスではファーやムートンをあしらうなど、少しアレンジしたレザーにお客さんが注目している印象である。
そのレザージャケットだが、これがどこも似たり寄ったりなデザインで、攻め手を欠いているように感じる。メンズ、レディス、各ショップとも判で押したように打ち出すのは「ダブルのライダースジャケット」。ここ数年、欧米を中心にデルカジで目立っていたことで、投入に拍車をかけたと見られる。
ヤングは価格を抑えるためにフェイクやデニムもあるが、ヤングアダルトからアダルトまで一様に本革仕様(ラムが主体)で、付属のジップ&ホック使いも一辺倒。セレクトのほとんどがオリジナルで、価格が3万円代後半から5万円台と値ごろ感もだ。違いはバイアスジップの角度と位置、数くらいか。一部でアメカジの代表「Schott」などのブランドがある程度になる。
ここまで似通ったジャケットが並ぶと、店頭で見ただけではその違いはわかりにくい。本格的なバイク乗りのジャケットなら、革も硬めのステアからカウ、カーフだろう。しかし、タウンに着るには柔らかいホース、ゴート、ラムやシープの方が適するから、企画もその方向で行くしかないのだと思う。
特にレディスではゴチゴチのレザーは、華奢な日本人には似合わない。プレスリールックを女性版に焼き直したハードスタイルも、肉感的なプロポーションをもつ米国モデルならマッチするが、日本人の体型ではガバガバだから、どうしても柔らかい素材のラムやシープで、カラダにフィットさせる仕様にならざるを得ない。
それでも、アイテムはレザーのライダースだから、ジップやホック使いの仕様は踏襲されていく。女性は男性と違ってハンドバッグを持つし、ジャケットが脹らむのを嫌うので、メンズほどジップやコインのポケットは要らない。結果的に余分なディテールはカットされ、よりシンプルなデザインになっていく。違いを打ち出しづらいから、上襟をカットするなど、引き算の企画で個性を打ち出すくらいしかないのである。
さらに店頭のディスプレイでは、インナーやボトムとコーディネートする。店としては1点でも買い上げ点数を増やしたいし、メーンのアイテムを売りたいのはやまやまだが、実際には組み合わせたアイテムの方が売れるというケースもある。SPA化しコーディネートMDをしっかり作ったとは言っても、売れるのはほとんど単品でしかない。
注目すべきは、ダブルのレザーライダースの場合、タウンカジュアルでの着こなしは、ディスプレイ時から「前空き」で飾られている点だ。それの方がインナーやボトムとのコンビネーション、色や素材の外し崩しで提案しやすくなる。確かにそうしたコーディネート、ディスプレイの手法は一理ある。
しかし、レザーライダースのデザインというか、完成型の仕様が開襟状態のワンパターンだと、着こなし提案もありがちなものになり、どこか陳腐化して見えてくる。お客にとっては、あまり意外性を持って受け取られないのだ。
カジュアルスタイルの着こなしだから、ドレスダウンしたい。関東以南は温暖化で冬でもそれほど寒くないので、ライダースジャケットの着こなしは前空きでも十分。だから、ジャケットの仕様が開襟状態で完成するのはわからないでもない。
しかし、本来のライダーがレザージャケットを着るのは、バイクに乗る時だから防風や怪我防止のために前合わせの状態にする。襟元に風が入って来ないようにジップを上まで上げれば、襟は台襟なしのシャツカラーになるはずだ。それもファッションスタイルではないのだろうか。
店頭に飾ってあるのはみな開襟、前空きの状態だから、多くのお客さんがこうしたレザーライダース本来の完成仕様を見たことがないと思う。それほど大したことではないのだが、店頭展開のアイテムデザイン、ディスプレイがあまりにワンパターン化している。だから、ダブルのレザーライダース本来の完成仕様で展開するブランドが2〜3あってもいいのでは、数年来ずっと思っていた。
もちろん、各社ともパターンは閉襟した状態で作ってあるだろうが、開襟・前空きで革をプレスしてあると閉襟、前合わせすると変な皺がよって、襟元がぎこちなくなることも考えられる。だから、閉襟や前合わせ、ジップアップはしにくのかもしれない。しかし、ディスプレイや見せ方で印象を変えなければ、ワンパターンな展開方法から脱却できない。お客さんにも今シーズンのイチ押しアイテムとしては印象づけにくく、結果マークダウンやバーゲン待ちの怖れもある。
同じことを考えたわけでもないだろうが、今年3月、コムデギャルソンが「ブラックマーケット」で販売したライダーズジャケットは、完成仕様の見せ方が「閉襟状態」だった。ルイスレザーとのコラボアイテムということだが、各社がライダースジャケットを打ち出す中でどこもかしこも開襟、前空き仕様で見せることを嫌ったとすれば、いかにもコムデギャルソンらしい。
レザーメーカーへの協業オファーにも二つ返事で乗ってもらえるコムデギャルソンに対し、セレクト各社はODMやOEMでの企画がほとんどだろうから、似通ったアイテムデザインになるのは仕方ない。
しかし、仕様やパターンにも決して手を抜いていないと胸を張るなら、完成型の見せ方を少しアレンジすると、お客さんに与えるファーストインプレッションもかなり違ってくるのではないか。それが買う気にさせる第一歩になることだってあると思う。
コムデギャルソンがライダース本来の仕様に拘るルイスレザーとコラボしたことが、必然なのか意外なのか、どちらにしてもダブルライダースのワンパターン化にくさびを打ち込んだのは確かだ。さすがコムデギャルソンとしかいいようがない。
肌を刺す風がまだまだ冷たい3月始め、ピンと張りつめた緊張感あるパリコレクションに赴いたことがある。その会場に早足で急ぐモデルたちは寒さをしのぐために閉襟、前合わせでレザーライダースを着こなしていた。これこそ、お洒落の王道だと感じた。ショップの店頭でも、こうした角度を変えた着こなし提案があってもいいのではないか。