福岡大名1丁目の一角、コムデギャルソン福岡店が移転して1年が経とうとしている。このブランドは顧客中心で成り立っているので、2002年のオープンから11年も大名のストリートで営業を続けられたのは、何となく理解できる。
ここ数年はアジアからの観光客が開店を待つ光景も見られたが、もともと一見客がフラッと立ち寄るようなショップではない。ファン客が来なくなると、ストリートを歩くお客の絶対数まで減った感じがするから不思議な思いだ。
「天神西通りから大名にかけては福岡のファッション発信地」なんぞと、平気で宣うノー天気な専門学校生はさておき、マーケットの現実を見ればもう、ファッションビジネスがペイしないエリアになりつつあると思う。
その顕著な例が天神西通りの近いエリアで起こっている。ここは立地的には旧コムデギャルソン福岡店よりはるかに有利なのだが、ショップの出退店が後を絶たない。
数年前、地場アパレル系デベロッパーが築40年ほどのビルをテナントビルに改装した。店子には同社がFCで展開するショップ他、かなりの店舗が誘致されたが、1階はABCマートを除き、ほぼ入れ替わっている。
向いのビルもその前に同じデベロッパーが開発したが、テナントの出退店が相次ぎ、空き店舗もある。立地条件が良いこのエリアですら、店舗経営は中小零細ではそう簡単ではないようだ。かといって大手資本でも、黒字店舗はほとんどないだろう。
斜向いにあるビームス福岡店は、11月に開業するパルコ新館に移転する。ユナイテッドアローズのB&Yやジャーナルスタンダードは、当にソラリアプラザやパルコに移転した。知名度のある店舗ほど、路面にこだわる必要はない。そんな空気が大名にはまん延する。
天下のビームスですらビルインと路面の違い、天神とわずか数百メートルの差が集客に大きく影響するという判断を下さざるを得なかったのだ。
終日、人通りで賑わう天神西通りから少し入っただけで、この有り様である。まして一見客を相手にするしかない新参のウエア業態では、経営が成り立つはずはない。
この夏オープンしたオムレツ店は、炎天下でも若い女性を行列させている。食はトレンドをはっきり提案できるからだろうか。とすれば、そこらのヤングファッションを持ってきたところで、大名地区を活性化させるほどの起爆剤になるとは考えにくい。
コムデギャルソン福岡店が移転すると、空きビルは管理会社によってテナント募集がなされた。1階ドア脇にどデカイPOPを貼り出されたので、通行人は嫌でも目にする。
管理会社やオーナーは、すぐにファッションやサロン系のテナントが入居すると思っていたようで、家賃や敷金など詳細は表示されていなかった。
ところが、テナントは遅々として集まらず、コムデギャルソン時代のホワイトウォールはタギングのキャンバスと化している(9月17日には消去されてきれいになったが、いたちごっこになる可能性は高い)。店頭のコンクリートは剥がれているので、風雨にさらされ、車の往来でガラスは埃まみれになる。
管理会社もこれは誤算だったようで、通行人向けにも家賃や敷金、管理費などを告知した。それによると、用途は店舗で、広さは1階が21坪、家賃は坪21,500円で451,500円、共益費は坪1,000円で21,000円。敷金は8ヵ月だ。
2階は19.69坪、家賃は坪14,000円で275,660円。3階は18.88坪、同坪10,000円で188,800円。4階は18.40坪、同坪9,000円で165,600円。上層階も共益費、敷金はとも同じ条件である。
大名エリアはファッションストリート全盛期には、新築物件の家賃は1階で坪50,000円は下らないと言われていた。だから、半額以下になったことになる。ある商店街なんて、未だに坪50,000円で敷金20ヵ月というから、雲泥の差だ。
旧コムデギャルソンはフロアごとにレディス、メンズ、コレクションなどと分かれていたため、店内階段の他に2.3階はビル脇の袖階段からも直接上がれる設計。だから、テナント側からすれば、1棟まるごと借りなければならないような印象を受ける。
管理会社もその辺を感じ取ったのか。賃貸概要ではフロア切りで賃貸する点をはっきり明示している。コムデギャルソンのように1棟借りしなくていいが、1フロアのみを借りると階段がデッドスペースになり、条件は良くない。
新規出店する場合は改装費まで含めると、初期投資でフロア当たり1,000万円は必要だろう。若者が独立して店を持てるコスト環境ではないし、仮に谷町が出してくれるにしても、店舗経営が簡単に黒字化できるとは思えない。
仕入れが中心の小売り店を新規出店するなら、1フロアの家賃に月50万円も支払ってたんでは、最低400万円は売上げないと利益は出ない。1年もテナントが集まらないのは、少々のビジネスではペイしないことを地元経営者の多くがわかっていると思う。
九州各地から集客する天神の隣町とは言え、天神西通りから離れていることを考えると、立地条件はかなり落ちると言わざるを得ない。 おそらく賃貸条件を変えない限り、借り手は見つからないと思う。
オーナー側もここに来て行動に出ている。旧コムデギャルソンの2軒隣に立つ元ディズニーライクなカラオケビルがそうだ。スケルトンの壁が落書きの的になっていたが、先日、アルミパネルで覆われたスタリッシュな外観に作り替えられた。
これでテナントの出店を待つのだろうが、ウインドウはなく、内部はカラオケボックスの間取りだと思う。10年近くも空きビルだったわけで、店舗構造のハンディを超えるだけのビジネスモデルなどありそうにない。なおさら1棟貸しでは難しいのかもしれない。
こんな状況の大名から参加者を募る三文イベントがあるが、それを「福岡のファッションのポテンシャル」なんぞと語るのは、まさに幻想だ。何か企画をやって行政から予算を引き出せばいいと、考える凡庸な脳みそに店舗経営の実態などがわかるはずもない。
尤も、東京の新規ビルにしても、入居するのはカフェやスウィーツ、レストランが主体。ファッションテナントも既存業態のスピンオフか、雑貨をシンクロさせたものだ。
東京でも新規開発のビルで、こうした業態を出店したところで、採算があうのだろうか。全国向けのプレス効果や広告宣伝という考えは成り立つが。
そう考えると、ほんの数百メートルで極端に集客力が落ちる大名エリアで、新規のファッション業態が成り立つ公算は低い。もはやそんなエリアに新規出店するのは、実情をよくリサーチしていない大資本か、見栄で出店する道楽者でしかないような気がする。
ここ数年はアジアからの観光客が開店を待つ光景も見られたが、もともと一見客がフラッと立ち寄るようなショップではない。ファン客が来なくなると、ストリートを歩くお客の絶対数まで減った感じがするから不思議な思いだ。
「天神西通りから大名にかけては福岡のファッション発信地」なんぞと、平気で宣うノー天気な専門学校生はさておき、マーケットの現実を見ればもう、ファッションビジネスがペイしないエリアになりつつあると思う。
その顕著な例が天神西通りの近いエリアで起こっている。ここは立地的には旧コムデギャルソン福岡店よりはるかに有利なのだが、ショップの出退店が後を絶たない。
数年前、地場アパレル系デベロッパーが築40年ほどのビルをテナントビルに改装した。店子には同社がFCで展開するショップ他、かなりの店舗が誘致されたが、1階はABCマートを除き、ほぼ入れ替わっている。
向いのビルもその前に同じデベロッパーが開発したが、テナントの出退店が相次ぎ、空き店舗もある。立地条件が良いこのエリアですら、店舗経営は中小零細ではそう簡単ではないようだ。かといって大手資本でも、黒字店舗はほとんどないだろう。
斜向いにあるビームス福岡店は、11月に開業するパルコ新館に移転する。ユナイテッドアローズのB&Yやジャーナルスタンダードは、当にソラリアプラザやパルコに移転した。知名度のある店舗ほど、路面にこだわる必要はない。そんな空気が大名にはまん延する。
天下のビームスですらビルインと路面の違い、天神とわずか数百メートルの差が集客に大きく影響するという判断を下さざるを得なかったのだ。
終日、人通りで賑わう天神西通りから少し入っただけで、この有り様である。まして一見客を相手にするしかない新参のウエア業態では、経営が成り立つはずはない。
この夏オープンしたオムレツ店は、炎天下でも若い女性を行列させている。食はトレンドをはっきり提案できるからだろうか。とすれば、そこらのヤングファッションを持ってきたところで、大名地区を活性化させるほどの起爆剤になるとは考えにくい。
コムデギャルソン福岡店が移転すると、空きビルは管理会社によってテナント募集がなされた。1階ドア脇にどデカイPOPを貼り出されたので、通行人は嫌でも目にする。
管理会社やオーナーは、すぐにファッションやサロン系のテナントが入居すると思っていたようで、家賃や敷金など詳細は表示されていなかった。
ところが、テナントは遅々として集まらず、コムデギャルソン時代のホワイトウォールはタギングのキャンバスと化している(9月17日には消去されてきれいになったが、いたちごっこになる可能性は高い)。店頭のコンクリートは剥がれているので、風雨にさらされ、車の往来でガラスは埃まみれになる。
管理会社もこれは誤算だったようで、通行人向けにも家賃や敷金、管理費などを告知した。それによると、用途は店舗で、広さは1階が21坪、家賃は坪21,500円で451,500円、共益費は坪1,000円で21,000円。敷金は8ヵ月だ。
2階は19.69坪、家賃は坪14,000円で275,660円。3階は18.88坪、同坪10,000円で188,800円。4階は18.40坪、同坪9,000円で165,600円。上層階も共益費、敷金はとも同じ条件である。
大名エリアはファッションストリート全盛期には、新築物件の家賃は1階で坪50,000円は下らないと言われていた。だから、半額以下になったことになる。ある商店街なんて、未だに坪50,000円で敷金20ヵ月というから、雲泥の差だ。
旧コムデギャルソンはフロアごとにレディス、メンズ、コレクションなどと分かれていたため、店内階段の他に2.3階はビル脇の袖階段からも直接上がれる設計。だから、テナント側からすれば、1棟まるごと借りなければならないような印象を受ける。
管理会社もその辺を感じ取ったのか。賃貸概要ではフロア切りで賃貸する点をはっきり明示している。コムデギャルソンのように1棟借りしなくていいが、1フロアのみを借りると階段がデッドスペースになり、条件は良くない。
新規出店する場合は改装費まで含めると、初期投資でフロア当たり1,000万円は必要だろう。若者が独立して店を持てるコスト環境ではないし、仮に谷町が出してくれるにしても、店舗経営が簡単に黒字化できるとは思えない。
仕入れが中心の小売り店を新規出店するなら、1フロアの家賃に月50万円も支払ってたんでは、最低400万円は売上げないと利益は出ない。1年もテナントが集まらないのは、少々のビジネスではペイしないことを地元経営者の多くがわかっていると思う。
九州各地から集客する天神の隣町とは言え、天神西通りから離れていることを考えると、立地条件はかなり落ちると言わざるを得ない。 おそらく賃貸条件を変えない限り、借り手は見つからないと思う。
オーナー側もここに来て行動に出ている。旧コムデギャルソンの2軒隣に立つ元ディズニーライクなカラオケビルがそうだ。スケルトンの壁が落書きの的になっていたが、先日、アルミパネルで覆われたスタリッシュな外観に作り替えられた。
これでテナントの出店を待つのだろうが、ウインドウはなく、内部はカラオケボックスの間取りだと思う。10年近くも空きビルだったわけで、店舗構造のハンディを超えるだけのビジネスモデルなどありそうにない。なおさら1棟貸しでは難しいのかもしれない。
こんな状況の大名から参加者を募る三文イベントがあるが、それを「福岡のファッションのポテンシャル」なんぞと語るのは、まさに幻想だ。何か企画をやって行政から予算を引き出せばいいと、考える凡庸な脳みそに店舗経営の実態などがわかるはずもない。
尤も、東京の新規ビルにしても、入居するのはカフェやスウィーツ、レストランが主体。ファッションテナントも既存業態のスピンオフか、雑貨をシンクロさせたものだ。
東京でも新規開発のビルで、こうした業態を出店したところで、採算があうのだろうか。全国向けのプレス効果や広告宣伝という考えは成り立つが。
そう考えると、ほんの数百メートルで極端に集客力が落ちる大名エリアで、新規のファッション業態が成り立つ公算は低い。もはやそんなエリアに新規出店するのは、実情をよくリサーチしていない大資本か、見栄で出店する道楽者でしかないような気がする。