夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

白居易 早冬 

2007年10月24日 23時45分49秒 |  漢詩を長崎弁で
       

十月江南天氣好   
可憐冬景似春華   
霜輕未殺萋萋草   
日暖初乾漠漠沙   
老柘葉黄如嫩樹   
寒櫻枝白是狂花   
此時却羨閑人醉   
五馬無由入酒家   

十月 江南 天気好し
可憐の冬景 春華に似たり
霜は軽く 未だ殺(か)らさず 萋萋たる草を
日は暖かく 初めて乾く 漠漠たる沙
老柘 葉は黄にして 嫩樹の如し
寒桜 枝は白くして 是れ狂花
此の時 却って羨む 閑人の酔うを
五馬 酒家に入る由も無し

南国は十月でも天気がよか
冬ばってん、春のようによか天気
霜は降りても、ちょっとだけ。草は青々して枯れることはなか
陽射しは暖かく、砂原は乾いとる
桑の老樹は紅葉し、若い柔らかな木のごたる
冬の桜桃の枝に白く見えるのは、狂い咲きした花やった
こげんときは、酔っ払いがウラヤマシか
こっちは五頭立ての高級車に乗っとるけん、飲み屋にはちょっと行き難くか


先日ご紹介した狂い咲きの桜に合う詩を探してきました。

于謙  偶題   夏の終わりに

2007年08月20日 10時01分31秒 |  漢詩を長崎弁で

お盆は今週末ですね、猛暑日が続いています。
岬の夏は終わっていないのですけど、私の夏は終わりました。
今日は憂き世への旅立ちの日。
風がみかんの花の香りを運んできて、重たい腰をさらに重くしています。


偶題        

薫風何処来   
吹我庭前樹   
啼鳥愛繁陰   
飛来不飛去   

   于謙
    
薫風 何処よりか来たる
我が庭前の樹を吹く
啼鳥 繁陰を愛し
飛び来たりて飛び去らず


涼風が吹いてきて
庭の木を揺らしよる
鳥も木陰に入ったまんま
そこから飛んでいこうとはせんと




蝉はまだ前の桜の木で夏を謳歌しています。





こちらはこれからのお楽しみ。
戻ってくる日のご褒美。




そういえば、こちらに来た日に挿した紫陽花はまだ元気。
楽園から連れて出すのは残酷でしょうか?



羊士諤 郡中則事    蓮 いすみ市岬町   改

2007年08月17日 11時53分09秒 |  漢詩を長崎弁で
                            写真を追加しました。

郡中則事
  羊士諤

紅衣落盡暗香殘
葉上秋光白露寒
越女含情已無限
莫教長袖倚闌干



紅衣落ち尽して暗香残れ
葉上秋光白露寒し
越女情を含むことすでに限りなし
長袖をして闌干に倚らしむるなかれ

赤か着物を着た蓮の花 花びらは落ちてしまい、香りも失せた
葉っぱには秋の冷たい光が白露を光らせているだけ
あん美人さんは遠い国から来て、胸の中にはやるせかな思いで一杯やろうね
一人で長か袖を欄干によらせちゃいけんとよ





ところで蓮の花はいすみ市のとんぼ沼のものと、いすみ環境と文化の里センターのもの、いすみ市以外では等々力緑地のものを以前アップしています。
とんぼ沼は廻りの環境はすばらしいのですけど、なにかちょっと違う。文化の里センターはショウルームではじめからアウト。
等々力緑地は池自体があまりにも小さすぎる。
なかなか意に添うものがありませんでした。
いすみ市の隣りの長南町は千葉県でもレンコンの産地、蓮池もたくさんあるとどこかで読みましたし、千葉市の千葉公園の蓮池もいいと勧める人もいました。
来年は行って見ようかなって考えておりましたらなんと、Mixiの知人の近く、国道際にすばらしい蓮池を見つけました。
今年はもう駄目ですけど、来年はこちらで蓮を撮りましょう。











新晴

2007年07月31日 22時50分23秒 |  漢詩を長崎弁で
新晴        
    劉(枚の木偏が分)

青苔満地初晴後   
緑樹無人晝夢餘   
惟有南風舊相識   
偸開門戸又翻書   

青苔 地に満ちて 初めて晴れし後
緑樹 人無く 昼夢の余
惟だ南風の旧相識のみ有りて
偸かに門戸を開き 又た書を翻す

今日は天気がよか
苔むした庭に
緑の木陰
煩さか人も来んけん
昼寝ば楽しんだと
慣れ親しんだ南の風が
そっと吹いてきて
読みさしの本のページばめくっとる

秦観 納涼 

2007年07月06日 22時17分14秒 |  漢詩を長崎弁で
         

携杖来追柳外涼   
画橋南畔倚胡牀   
月明船笛参差起   
風定池蓮自在香   

杖を携え来たり追ふ柳外の涼
画橋南畔胡牀に倚る
月明らかにして船笛参差として起こり
風定まりて池蓮自在に香し


杖をもって、柳の向こうの涼しさを求めてきたとよ
綺麗か橋があって、川の南に渡って、そこの長いすで休んだと
月は明るく、船の汽笛が時々聞こえよる
風は静かになって、池の蓮の香りがしてくる


暑かとも明日くらいまでかね~
こん時期は暑さよりも、湿気が好かんね~
じめじめとして、身体にもカビが生えるごたる
そげんときには川原にでも出て、川風に当たるとよか
今の時期がいっぺんい好きになるっちゃ

白居易  紫陽花 

2007年06月19日 09時00分16秒 |  漢詩を長崎弁で
  

何年植向仙壇上   
早晩移栽到梵家   
雖在人間人不識   
与君名作紫陽花   

何れの年に植えて仙壇上に向かう
早晩移し栽えて梵家に到る
人間に在りと雖も人識らず
君に名を与えて紫陽花と作す


いつのころに仙人の世界で植えられたのだろう
いつ、それがこの寺にまで植えられるようになったのだろう
人間の世界にありとはいえども、誰もその名前も知らない
貴方に紫陽花と言う名前を上げましょう。


どこで生まれたとか、
どうしてこの寺に植えられたとかか
誰も知らんとよね~
あんたに紫陽花って名前をやろうね

ボクちゃんは中国語が判らんし、詩も専門家じゃなかけん、詩としての評価はできんけど、なんとなくあまり好かんね。報告書のごたる詩じゃね~と思っとる。
でも紫陽花の時期の白氏の詩となれば上げんわけにはいかんでしょう。

さてさて、問題が一つあるとよ。
白楽天は紫陽花の名前をつけたとばってん、
そん紫陽花は紫の花で匂いが良かったげな。
  招賢寺有山花一樹、無人知名。色紫気香、芳麗可愛、頗類仙物。因以紫陽花名之
         
  招賢寺に山花一樹あり、名を知る人無し。色紫にして気香しく、芳麗にして愛すべく、頗る仙物に類す。よって紫陽花を以てこれを名づく。

じゃけん、白楽天が名前をつけた花は紫陽花じゃなかっちゅうと。
紫陽花の名前が日本に知られるようになったときに、誰かが間違ごうたとよね。


ばってん、面白かこともあると、
今売られてるのはほとんどが西洋アジサイたい。
これは長崎の商館医やったシーボルトがアジサイを持って帰って、ヨーロッパで園芸種になったもんってよういわれとるけど、紫陽花を最初にヨーロッパに持って行ったとはツンベルクたいね。

もともとの日本の紫陽花は額紫陽花っちゃね。

そういえばテマリカンボクもヨーロッパで園芸種になって戻って来とるし、ボクちゃんの好きなカイウもカラーなんちゅう名前で磨きが掛けられて戻ってきとる。
ボクちゃんは一時オオデマリやカイウを探し回ってたんだけど、、、今ではどこに群落があるか分かっとるけど、そんときには10年近く見つからんかったとよ。


高駢 山亭夏日 

2007年06月15日 21時16分15秒 |  漢詩を長崎弁で
           

緑樹陰濃夏日長   
楼台倒影入池塘   
水晶簾動微風起   
一架薔薇満院香   


緑樹陰濃かにして 夏日長し
楼台影を倒まにして 池塘に入る
水晶の簾動いて 微風起こり
一架の薔薇 満院香し

暑かね~
昨日入梅宣言が出たばかりなのに、外はピカピカの青空たい。
暑か~ たまらんばい。
こげんときは緑の木陰に入ってのんびりと吹いてくる風に当たっていたかね~
そげん訳で、今日の漢詩は山亭夏日たい。
こいを読みながらちょっとでも涼しか気持になってもらえれば嬉かよ。

緑の木陰は濃く、夏の日は長か
楼台の影は池んなかにずっと伸びとる
風がそよっと吹いてきて簾を揺らす
薔薇が部屋一杯に香る



風鈴の一鳴き
薔薇の香りきて
    風車

やっぱり、誰がなんと言おうとボクちゃん「天災」


ばってん、まだ入梅したばっかりじゃどん
暑か、暑か~って騒ぐとがおかしかっちゃね。
これから暑さがやってくるとやっけんね。
どうしようかね~
ユーロが下がれば北欧にでも行きたかね~

去年は8月に夏の詩三題アップしちょるね。
ボクちゃんも万人を連れて北欧へ避暑に行くっちゃできんけん、やっぱり半分煮えたまま部屋の中でうなっとることになるんじゃろね~


杜牧 斉安郡後池絶句

2007年06月07日 08時44分49秒 |  漢詩を長崎弁で

昨日の白楽天の「食後」にレスをいただき、杜牧の斉安郡後池絶句を返してもらいました。


たまたま見かけて、なかなかですので

斉安郡後池絶句 杜牧
菱透浮萍緑錦池   菱は浮萍を透す 緑錦の池
夏鶯千囀弄薔薇   夏鶯千囀して 薔薇を弄す
尽日無人看微雨   尽日人無く 微雨を看れば
鴛鴦相対浴紅衣   鴛鴦相対して 紅衣に浴す



綺麗な詩ですので、これに訳をつけてみました。


緑の池に水草が錦を装い真っ白の菱が鮮やか
赤い薔薇のまわりでは夏の鶯が鳴いている
訪れる人とてない日がな一日、しっとりとした雨を眺ていると
オシドリが向かい合って紅い蓮の花の中に浮かんでいる


偽長崎弁です;
池の緑に水草の錦、水面には菱が真っ白の花を咲かせとる
赤いバラの花には鶯が来て鳴きよっと
誰も来んこの家で、一人雨を眺めちょると
オシドリの夫婦が赤い蓮の花の間に漂っとる


ちょっと色キチガイ的に、色の多い詩ですけど、、、
綺麗だし、静かで落ち着く雰囲気ですね。

どうせ色キチガイなら、私的に

池の緑に花菱添えて
四畳半でも待つ身にゃ広い
小雨降る日は貴方は来ない
         風車

大統領!!!!

白楽天の「食後」と  日々是好日

2007年06月06日 23時34分36秒 |  漢詩を長崎弁で
眠いですね~」。

もし一日の時間を延ばせるのであればどこを延ばしたいかという調査に、日本人は睡眠時間帯だと回答した人が多かったそうです。それを紹介したMixiの日記に「嫌なことがあると、一日が短ければいいなと思い、楽しいともっと長ければいいなと思う」ってコメントをつけてきた人がいた。
それに対して白楽天の「食後」をお返ししました。
後ろの部分だけですけど、

楽人惜日促
憂人厭年じゃ(貝へんに余)
無厭無楽者
長短任生涯

楽人は日の早きことを惜しみ
憂人は年の余れることを厭う
厭もなく、楽もない者は
長短、生涯にまかす

楽天家は時間が短いことを嘆き
悲観家は一年が余ってしまうことを厭う
楽天家でも悲観家でもない自分は
全てを自然の成り行きに任せる


楽しく生きとる人には一んちはあっと言う間に過ぎてしまう
苦しか人には一年がなかなか終わらん
楽天的でも、悲観的でもなか私は
お陽さんに任せて生きとると




「日々是好日」って言い方もありますよね。
いい日、悪い日なんてこの世にはない。
いい日、悪い日を作るのは自分自身なんですね。

明日がまたいい日でありますようにとまではいえない自分が情けないけど、

明日がいい日になりますように。



理想の一日  王安石  初夏即事  多摩川 等々力緑地

2007年05月21日 16時23分41秒 |  漢詩を長崎弁で
大きな丸い木を抜けて、
  (この~木なんの木、気になる木


小さな池に面した芝生に腰を下ろす。
池には蓮の葉が表を出し、
  (この池には蛙がいないようで、幸いなことに蓮の葉の上にも蛙のおしっこはない
  (”蓮の葉にたまりし水は釈迦の涙かありがたや、
     ところへ蛙がピョコト出て、それはわたしの尿(しい)じゃいな” 
  (なんて、おせっかいな蛙がいないだけでもありがたい 


水鳥がその水面にたゆとう
  (ちょっと、がぁ、がぁって鳴かないでよ、ムードが壊されるから
  (それにもうちょっと優雅に泳いでくれないかな~


岸辺にはキショウブの花が咲き乱れ、川面にその姿を映している


緑陰を渡ってくる風が ほてった頬を撫でていく


通り過ぎてきたたくさんの花たちを思い出す
あるものはあでやかに


また、あるものは力強く


そして気高く


また、ひっそりと内気に


その絹のような肌触り、、、


虫たちをさえ惑わすその危険な誘惑






まどろみに誘われる午後のひと時



「それにしても、あんちゃんは何しに出かけたの?」
「いや、等々力緑地へカワセミを撮りに」
「でもカワセミは一枚もないじゃない」
「うん、カワセミどころかカルガモがいただけ」
「ふ~ん、だから訳の判らん文句をだらだらと書いていたのね」
「えっ? まぁ、あの、その、そんなところですかね~」




初夏即事 王安石

ところで、またまたMixiの話ですけど、他の方につけたコメントに王安石の初夏即事をお返しになった方がいます。
これを以下のコメントに紹介していましたけど、あまりにもこの上の写真とぴったりなので、本文のほうにこれを加えて、「漢詩を長崎弁で読む」のカテゴリーに入れてしまいましょう。


 はいはい、一世風靡を、兄者が知らなくても構いませんから。

 石梁茅屋有彎碕   石梁 茅屋 彎碕有り
 流水濺濺度両陂   流水濺濺として両陂を度(わた)る
 晴日暖風生麦気   晴日暖風 麦気を生じ
 緑陰幽草勝花時   緑陰幽草 花時に勝る

 兄者のお散歩の日々は、まさにこんな感じでは?
 セピアは知らなくても、兄者には漢詩がありますから!
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いつもの漢詩と、読み下しはこの方がやってくださっていますので、省略できる、楽チン!

 石の橋や藁葺き小屋が曲がりくねった川岸の上に見えるっちゃ
 土手の間を抜けて川の水はさらさらと流れとる
 透き通るような陽射しの中を、麦の香りを帯びた風がやわらかく吹いとるたい
 緑陰に儚そうな草、春ん花の一杯咲いとる時にも勝る風情じゃね~

ちぃ~とも長崎弁にならんかったね。まあ、無理してせんでもよかでしょ?