夢幻泡影

「ゆめの世にかつもどろみて夢をまたかたるも夢よそれがまにまに」

葉っぱっぱ~

2020年07月11日 20時32分44秒 |  河童、狸、狐

書くことなんにも思いつかない時には。

お蔵の片隅の葉っぱっぱ。

 

ぱっぱっぱ~は 

アップアップじゃないよ~

あっぱっぱ~だからね

そういや、アッパッパって服もあったよね~

多分、もう死語になっていると思うけど。

 

 

 

 


幽霊? 化け物???

2008年02月22日 18時21分20秒 |  河童、狸、狐


ミキシーに「狐と狸、そして河童」というコミュニティを立てています。
最近、幽霊のトピックができました。
そこでの私のコメント;


昔の彼女が死んでしまいました。
そして共通の友人が死んで、あの世で彼女に会ったらしい。
「彼氏は新しい女の子と嬉しそうにしていた」って言わなくてもいいことを言ったらしいんですね、
それでモトカノが閻魔様のところに行って、幽霊にしてくださいっていったら、
閻魔様が彼女の顔をじっと見て、
「幽霊より化け物のほうがいいんじゃない」って言ったそうです。

はいはい、ボクちゃん、哀しいことに幽霊を見たことがないってのはそんな理由かな~


昔の本のパクリです。

こういうの好きだな 河童のHP

2007年01月16日 09時20分55秒 |  河童、狸、狐

ウエブサーフをしていて、ふと河童のHPにぶつかった。
河童のコミュには紹介していたけど、皆さんの中で河童を飼っている方、飼おうとしている方にはお役に立つと思いますので、こちらでもご紹介しておきます。

河童の飼いかた、
河童の名前のランキング
なんかを説明している。

このHPからの転載だけど
「カッパを飼うために
カッパは古来から人間のそばで暮らしてきた水生動物です。
近年は養殖技術の進歩によりペットとして親しまれていますが
その生態は、今なお神秘に包まれています。
カッパを飼う前に、できる限りの知識を身に付けておきましょう。」
ということらしい。


希少種(この河童連盟に登録されている河童は5100頭だそうだ)なので、育て方がわからない方には福音ではないかと。

http://www.you-go.net/kappa/

河童、狸、狐の目次

2006年09月17日 22時28分24秒 |  河童、狸、狐
(ご注意; ここで使用しておりました河童の写真がFlickrというサイトで無断で使用されておりましたので、削除しました。

The Kappa photo that covers this page, has been deleted, because I found an illegal copy on flickr site. If you come from the site, I feel sorry for this.)





河童と狸は多少手を入れて転載を終了しました。
狐も少しづつ掲載を始めました。

こちらに目次をつけておきます。
(Gooのブログでご覧になる方はタイトルをクリックされるとジャンプします)

河童
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/4691d6fa8e3715cb2c767ce7642a3179

河童の独り言
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/c90fe52ed1b7ae6344013f4798e117a3

なお日本河童連盟というのがあり、河童の飼いかた、名前の付け方のヒントなどを紹介している。
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/db59ce680a2e39cd7e8e2f0a2c1e9c91


狸 1
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/280a699c0dd786e4639d12decba61161

狸 2
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/4e37bd7ea572728f5432eb9fe713012c

狸 3
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/c81876460988e730e6c151bfbd28603b

狸 4
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/60983c06c0e67677fc40bdda9c159baa

狸 5
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/f433ddd86d21e99d92c2f034740ba5e9

狸 6
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/576eb2e95cb4812f1620e2443c583334

狸 7
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/281134ae9fc98d17522ec064e370a355

狸 8
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/ef1e4ad17a9d8156697209a182f86a2f

狸 9 (完)
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/80d5e854a990e86bdf588e734104bf5f

狸  借問此何時 春風語流鶯
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/79e82d9fc80111c357fc02fed5d07f94

狸!
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/7d52297f739121bd06da0441dd19c12e



狐 1
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/888617b243ce150a7aaa137384c6fd91


狐 2
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/63644b8fcbeaede4110dd7f24fbfff6d

狐 3
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/159be27327a98599f7c08dccfd426f68

狐 4
http://blog.goo.ne.jp/t_ashizuka/e/d8ec3e5ce8e71a38364ff8997a029084

狐 その4

2006年07月05日 13時11分36秒 |  河童、狸、狐
「ところで、お前は本気でテレパシーを開発したいのか」と狐が聞くから、ハイと答えると、狐はがっかりしたような顔をして、
「メッセージを受けたり、伝えるだけなら、俺たちがどこにいても繋がるからいいんだけど、新しい能力を開発しようとすると、そばにいなきゃならないしな。美登里がやってくれればいいんだけど、どこへ行ったか梨のつぶてだし。
これが他の時期ならいいんだけど、今の時期はタイミングが悪すぎるよ」と雌狐の盛大に張り出した腹を見ながらいう。
「どこかに産婆代わりに使える雌狐がいないのかな」って聞くと、狸はこの辺にもいるけど、狐は少ないよなとのこと。
美登里も、変に人間に感化されたもんだとふて腐っている。

少なくともしばらく前まで恋人だった人のことを狐風情に文句を言われる筋合いはないとちょっとむっとした顔をすると、
「いや気を悪くしないでくれ」って慌てて、答える。
「河童は、雑婚だというのは聞いたことがあるだろう。河童にとってセックスはスポーツや遊びと同列みたいなものなんだ。
だから彼ら、彼女らは心変わりをして他の相手に走っても、何の罪悪感を持たないんだな。だれもがやっていることだからってね。
そのときに好きな相手なら誰でもいいじゃない。それで熱が冷めればまた次を見つければいいのだから。どうせならなるべくたくさんの相手と知り合って、それが自分の一生の財産だし、それで最高の相手にめぐり合えばいいって感じだな。
美登里がお前に連絡を取らなくなって、お前から見えないように一生懸命自分を隠しているのは、人間の倫理観を美登里が理解したからだと思うよ。お前との生活で人間の友達も増えただろうし、でもそんな相手には本当の話はできないじゃない。当たり障りのない話をしているから、友達が何を言っても、それが的外れなのは彼女にもわかっているだろうし、人間にアドバイスを頼めないんだな。
他の友達は、おそらく何故美登里が家出しちゃったか理解できないと思うよ。
自分が何者で、何をやったのか判っているのは美登里一人だからね」
「でも、おかしいじゃない。河童が恋とか愛情とかを信じないんだったら、美登里さんだって、自分が何か悪いことをしたとは思わないでしょう」
「それが人間の社会にでて、人間の倫理観みたいなものに感化されたんだろう。自分を愛してくれている人の信頼を裏切ることがどれだけ人間としては蔑まされていることかを理解したんじゃないかな。でも河童の習性で行動してしまう。
だから口では何を言っても実際は、表に顔を出せないってことじゃないかと思うよ。
お前をこれ以上傷つけたくないためにお前から隠れているということはないと思うけど、自分自身への罪悪感なんてものかもしれないよ。
もっとも気が付いていればの話だけどな。
俺たち狐は人間に近いからお前の気持ちのほうがわかるけど。
可哀想といえば可哀想だよな。それまでの自分たちとしてはなんでもないことがある日、自分で許せなくなってしまったのだから。
これが美登里の仲間同士なら、「あぁ、あれ、もう嫌いになって」ってけらけら笑って終りなだけだもんな」
「それって変じゃない。それでそれほど好きでもない相手との間に子供でも出来たらどうするのよ。恋とか愛っていうのはそんなに薄っぺらいものじゃないはずよ」と雌狐が不満そうに聞く。
「お前は河童に知り合いがいないから、知らいだろうけど、河童は雌の方が受胎をコントロールできるんだ。だから普通は受胎しないようにしているのさ。それにコントロールしなくても、受胎する可能性はほとんどないしな。
河童にはそれで自分たちの生き様が自由なんだって、いかにも進歩したような、フリーセックスが出来るということで他の動物とは違うという優越感さえもつんだ」
「河童の雌が受胎をコントロールできるとはしらなかった。美登里がいろいろ過去の関係を話してくれたけど、本当に好きな相手となら寝て何が悪いって言っていたものな。
でもこの十年だけでみても、凄い数の相手と経験していたようだし、本当に好きな相手という、その本当が、私からいえばちょっとしたことで大好きになってしまうような、うすっぺらい感情みたいにしか見えなかったのは確かだね。
単に淫乱な性格を、好きになったから寝て何がわるいって自分に言い聞かせているだけじゃないかって思って聞いていたこともあったな。
でももういなくなった美登里を援護するわけじゃないけど、人間の女でも、避妊がコントロールできるようになったらいきなり、セックスが遊び感覚になってきているものな。
男たちも責任を取らなくてもよくなったし、女がより簡単に男を受け入れられるようになって、むしろ男のほうが喜んでいるかもね。
でも自分の恋人に対して今の男だって、ちょっと違う考えをするだろうな。遊びの相手と、真剣に付き合う相手。それを分けて考えるようになっているのだろうけど。」自分の周りの女性たちの行動を思い出しながら、ちょっと酸っぱい意見も口をつく。
「ただ、人間の場合には避妊が出来るようになってきたのはそれほど前じゃないから、社会の倫理がまだ追いついていないところがあるんだ。
まだ過渡期かもしれない。
完全にフリーセックスになれば、女は子供に特別な相手との間の宝物というような感情も持たなくなるかもしれない。
国が子供を引き取って育てる仕組みを作るのをよしとするかもしれない。
それこそ期待される人間像によるプログラムでね。
よく遠洋に出るヨットがクリューに女性を求めるよね。クリューとしての役割は7割こなせれば後、別な用途があるから。だから契約も高いし、避妊をすることが条件だったりして。まあ、生物だったら子孫を残すことが気持ちの奥底にプログラムされているから仕方ないんだろうけどね。これだって避妊が確実になってきてるからできるんだよね。互いに割り切ることね。
でも、まだ一部の女性は子供には特別な感情を持っているし、その父親は自分が選んだ特別な人であって欲しいと思っている。
社会もそれを望ましい関係としている。
だから女たちは、自分たちの普段の行動はどうあれ、本当に好きな相手としか寝ないしというような、昔風の倫理観で自分の心にも言い訳をしている。
そのくせ、どうかすると好きじゃない相手にも「チャンスをくれし、私のためにいろいろやってくれていうからって、求められれば断れない」なんて思って寝たりもする。本当はそうでも、決して自分ではそれを認めようとはしないけどね。
酷い例では、そのチャンスをくれる相手と一年暮らすから、待っていて欲しいと恋人にお願いしているケースもあったよな。そのときは流石に、そんなの人間 じゃないから蹴飛ばしてしまえって言ったけど、男は泣いていた。つくづく男も弱くなってしまったんだか、それとも本気で惚れた弱みかね」

「人間の社会ってわからないわ」って雌狐がつぶやいた。
「自由になることで、なにか本当に大切なものをなくしたみたいね」
「うん、それは若い連中の行動を見ていて、そう感じることが多いけど、でもそれが時代から取り残されてきた年寄りの考えなのかどうなのかわからない。それを言うと世代が違うって鼻の先で笑われるからね。
それにこれからの社会や規範を作るのは若い連中だから、年寄りが何を言っても始まらないと思われてるんだよ」
「自分で言っているほど枯れていないのを知っているくせに」
何か、小さな雌狐に諭されているようで、変な気がしてならなかった。

夏の日はじりじりと草原に照りつけ、木陰にいる私たちにも熱波がまとわりつく。
「まあ、今日は自己紹介程度で、訓練はぼちぼちやろう。相方もこんなに暑いと疲れるから」愛妻家の若狐の言葉で今日は解散。

家に帰って、お気に入りの椅子で今日の言葉を反芻しよう。

狐 その3

2006年07月04日 12時53分19秒 |  河童、狸、狐
岬の平安は破られた。
翌日、早朝から狐の声が頭の中で響く。
「まだ寝ているのか」
狸親父のときも、まだ日が開け切れないうちから起こされていたことを思い出した。
「うぅ~」と唸りながらも、こいつらと付き合うのは朝型じゃなきゃ駄目だな、また生活パターンを変えなきゃと心に刻む。
「今、起きていく」って答えて、顔を洗い外にでた。
昨日の狐が二匹家の前に座っている。
「人間は電気だなんだって、いろんなものを作り出して、夜も生活できるっていいながら、その分朝が遅くなってしまった。ただ一日のスケジュールを遅らせただけじゃないか。
昔の人間は空が白む前から起きだしていたぞ。朝をやめて、わざわざ電気までともして夜型になるのなら、電気なんか発明しないで、朝型のままいればいいじゃないか」と狐は文句を言う。
「たしかに、昔の人間の朝は早かったと聞いたことがあるけど、今の生活に慣れてしまうとだんだん夜型になるんだよ」と言い訳をしながら、
「ところで、お前さんたちが私の師匠になるのなら、お前さんたちのことを少し教えておいてほしいな。だいたいお前さんたちに命じたという私の背後霊っていうのは誰なんだ。それにお前さんたちの名前はなんていう」
「名前。俺たちにはそんなものはない。戸籍みたいなものがあるわけじゃないんだからそんなもの必要ないよ。名前なんて、政府がお前たちを縛るためにあるんだろう。そのうち納税者番号なんてもので、お前たちの名前もなくなるよ。
俺たちは必要なら岬の古狐とかなんとかいって区別するくらいだな。夫婦でもおれ、お前だし。
俺たちにも名前はないが、神様も神様だ。それ以上の名前なんかしらないよ。
大体そんなものは人間が勝手につけたものだろう。
人間の存在以上のものに、人間が名前をつけるなんて人間がいかに不遜かという証拠だな」
「でもさ、同じお稲荷さんだって、仏教系の、ほら豊川稲荷みたいな、お狐さんもいれば、神道系のお狐様もいるんじゃない」
「知っているよ。仏教のお狐さんはジャッカルが日本に来て変ったものだっていうんだろう。神道系には飯縄なんかの管狐もいるっていうじゃないか。
でもそれは人間が勝手に作ったことで、俺たちには関係がない。俺たちにはご主人様とそれを伝える相手で充分。
大体神だの仏だのが誰であろうと神は神じゃないか。それが鰯の頭でもそれを神だと思う心が神にするんだ。名前なんかに意味はないよ」
「ふ~ん。昔の小説家が、名前に何があるのって書いていたけど、そんなもんかな」
「そうだよ。荼吉尼天(だきにてん)と呼ばれようと、宇賀御魂命(うかのみたまのみこと)と呼ばれようと、信じている人には神だよ。ご利益に変りはない。
その小説家に言わせれば同じように芳しいって言うんだろう」
おや、この狐、日本のことだけじゃなくてシェークスピアまで知っている。

そのとき雌狐が、ちょっとお腹をさする。若狐はおろおろして、「大丈夫かって聞く」お前さんは今までの祖先の知恵が頭に入っているのだろうって聞くと、若狐は、知識はあるけど、実践はないんだと情けない顔をしている。生まれたときからいろんなことは知っているけど、成長の過程でそれを習っていくんだ、一つ 一つ確認して身につけて行くんだという。 
そうか論語の学而の一だな。学んで時にこれを習うまた愉しからずやだよな。と変に納得する。

それにしてもそれだけの知識が最初から頭にあると、習うこともまた大変な作業だよなと心配になってくる。
「おれの親父が、人間がやっている映画をどっかの川原でいくつも見たらしい。昔は田舎でそんなことをやったらしいんだけど、その中にSFがあってな、人間の子供がコンピュータで教育されるというんだ。
俺たちの知識は、親の知識、そしてそのまた親の知識が生まれたときから頭に入っている。つまりお前たちが最近わかってきたDNAというやつだな。その遺伝子の中に後天的な知識まで刷り込まれるんだ。
お前たちがそれをやろうとするとその映画のようにコンピュータでデータを集めて頭の中に転送していくしかないだろうけどな。
でも、そうなるとそれが出来る組織が必要なデータだけが選ばれて入るようになる。
思想をコントロールできるような社会になるな」
「まさか、そんなことが出来るとは思わないけど」
「そうかな、だいぶ前にお前たちの組織が、期待される人間像なんて、国が求める人間像を出してきて、それを教育の現場に押し付けようとしたじゃないか。
もっとも、押し付けるほうは、これは一つの指針ですとか説明するだろうけど、現場じゃそれしか選びようがないような状況が作られるんだよね。
親もそれに 従っていれば、点数は上がるし子供の将来のためになるって、文句は言わないだろう」
「そういえば、そんなこともあったかな」
「俺たちにとっての知識の元、教育の責任者は両親なんだ。良くも悪くもそうなんだ。だから俺も俺の連れ合いも考え方がさまざまさ。それが社会というものじゃないかな」
「お前と話していると、子供の狐と話しているって感じじゃないな」
「当たり前だろう。知識的には何百歳なんだぞ」
若狐も、雌狐も胸を張っている。

はいはい、お師匠様。
これからもよろしくご指導のほどを。


2006年07月03日 / 岬な日々 「番外編」

狐 その2

2006年07月03日 00時34分37秒 |  河童、狸、狐
いくら頭の中で外の2匹の狐のイメージが湧いているとはいっても、やはりそこはしがない人間にしか過ぎない私は、自分の目で確かめなければというので、突っ掛けを履いて外にでてみた。
いるいる。以前狸が住んでいたところに、2匹の若い狐がいた。
一匹はもう一匹の首を甘噛みしながらこちらを不敵な目で見ている。
もう一匹はそれよりちょっと小柄な狐で、多分これが雌狐なんだろう、トロンとした目で上の空という感じ。
まったく最近の若い奴らは人目を気にするってことを知らない。
いつ産まれるんだって聞くと、来月くらいにはとの答え。
まあ、狐がいようが、狸がいようが、こちらは関係がないので、好きにすればっていうと、ちょっと怒ったような顔をして、こんなところに好きで来ようとは思っていないんだという。
じゃ、何故来るんだと聞くと、何となく言葉を濁しながらも、私の背後霊に関係があるようなことを言う。
私のテレパシーの能力がどうも背後霊の注目を浴びているようで、この狐はその状況を背後霊に伝えたり、背後霊のメッセージをこちらに流したりすることを言い付かったようだ。
流すってと聞くと、狐が神のメッセージを聞いて、こちらに伝えるということはなくて、狐は一種のリレーステーションで、背後霊のシグナルをこちら向けに増幅して発信するだけなんだそうだ。
じゃ、神のお使いなんて大したことないじゃないか、何故神様は直接シグナルをこちらに流し込まないのだろうというと、いろいろと複雑な訳があるからと歯切れ悪く答えた。
それにお前がテレパシーをさらに開発しようとするのなら、狸の後を私が補完することを頼まれているとも言っていた。
でも、それ以前にテレパシーそのものの事もきちんと知らないと、とんでもないことになるから、その辺を背後霊が心配しているのだとのこと。
なら、この若いのは俺の先生じゃないか、と改めて二匹を見直した。

河童や狸たちは私にこれ以上テレパシーの能力を与えないようにしようとは決めたのだけど、背後霊はそれとはちょっと違う考えを持っているようだ。
それにしても若いな。狸はもう古狸で、どこからみても妖怪みたいな存在だったけど。この狐はまだ子供、子供しているようだ。
狸は年を取っていくうちにだんだんとその妖怪の力を身ににつけていくらしいけど、こんなに若くてこいつら大丈夫なんだろうか。
そんなことを思っていると、狐は、狸なんかと一緒にするなという。狸は物凄く古くなるとたまたま妖術が身についてくる。付喪神みたいなもの。
付喪神というのは、道具なんかでも百年も二百年もたつと、人間の怨念が道具に移って、命が生まれるのだそうだ。だから妖怪狸のように長く生きてくると始めてこの種の神の力がついてくる。
でも狐は最初から神の使いとしての役割を担った選ばれた家系があって、その家系の狐は生まれたときから妖力をもっているのだそうだ。
おまけに、この種の狐は、それまでの先祖が身につけた知識や能力が最初から全部引き継いで生まれるらしい。だから子狐でも知識は大人以上だからということだった。
この二匹はそのエリート家系の狐らしい。両方の言葉も、考えている事もこちらに伝わってくるし、こちらの思っている事も両方に伝わっているみたい。

雌狐が自分のお腹をみて、雄をみた。
雄はちょっと慌てたように、お腹の子供が動いているんだ、巣穴もちゃんとしなきゃならないし、お産の準備もしなければいけないんだ。
人間だって出産の休暇が男にもあるのに、よりによって何でこんな時期にお前の面倒を見るように言われなきゃいけないんだってぼやいている。
河童は最初から妖力を持っているので、不老不死の力を持っているし、狸は妖怪狸になるとやはりその力を持つらしい。でも狐は、そのエリート家系に生まれても寿命普通の狐を変わらないのだそうだ。
ただ、妖力を持ったものはどの種類でも出産することが大変珍しいらしい。
不老不死だと死なないのだからむやみやたらに子供ができればあっと言う間に増えすぎてしまうからそれが自然なんだろうけど、狐もなぜか子供ができにくいのだという。だから彼女の出産はとても大変なことなんだと話をして、巣穴にもぐりこんでいった。
また、新しい経験の日が巡ってきた。

狐 1

2006年07月02日 00時10分10秒 |  河童、狸、狐
東の空がようやく白みかかるころ森からは鳥が鳴き交わす声が聞こえてくる。
さえずりがひときわ高くなるころ太陽が輝きとともに海から駆け上がる。
海からの風は異国の言葉で木々に囁きかける。
梢は太陽の光を真横に受け、反射させながら風に答える。

春夏秋冬、早朝からから深夜まで、さまざまな色、さまざまな形で目前で繰り広げられる自然のステージを、お気に入りの椅子に腰をかけて見ていると、これ以 上何を望むことがあるのだろうという気になる。その気持ちを壊したくなくて、例え空腹を感じようと、なんであろうと、そこから立ち上がって、何かしようと する気持ちさえなくなってしまう。

でもそれを話した友人は、私にとってそれが人生の最大の満足であると思ったらしい。
果たしてそうなのだろうか。
確かに、それはこれ以上ありえないくらいに満足のいく状況なのだけど、それは自分に与えられた状況の中での評価。その状況、環境自体が自分の本当に望んでいるものかどうかは別なのだと思う。
なせならそれは人生にもはや何の目的も、満足も求められなくなった私が持てる幸福だから。
満たされない欲望を知り、ふつふつと湧き上がる夢や、希望を力ずくで蓋をし、やっと得られた心の平安のなかにある世界。現実ではあるけど、心の底が求めているものとは違う世界での平穏。
でも全てを自ら放棄し、何も残されていない今の私に何を求められる。
そういう人生を選んだのだから、後悔はしたくない。 今の私に残されているのは、そのときにはそれが最良そして最善の選択肢であったのだからという自分の行為に対しての確信と、そのために自分を追い立て、たどり着いたこの無為に流れる時間と無駄な私の人生に波風を立てたくない、それだけの毎日。
恐らく私の友人にもこの私の気持ちはわからないだろう。また、それを判らせたい人にはこの気持ちは伝えたくない。
人生は夢。夢で一生を終えられるものなら、そうありたい。自分が偽りの平穏で一生を終わることが、これ以上人を傷つけないでいられるのなら。

目の前の自然の移り変わり、鳥の声、風の動きに身を任せて、ただ平安な時間の流れを願っている。それがこのお気に入りの椅子の生活。


そして今日もまた、そのような至上の朝を迎えている。
この町に来て知り合い、同棲していた河童の美登里はあれほど憧れていた人間の社会を一通り見てしまうと、もう興味を失ってしまい、それと同時に私への興味もなくなったようだ。連絡を絶って久しい。河童は雑婚だと聞いた。だから一人の相手だけでは駄目なのだろう。
私のテレパシー能力を開発してくれた狸の親父は一応南海の海に沈んだということになっているし、メス狸は子供を連れて山奥のどこかへ行ってしまった。妖力を身につけ、それと同時に不老不死の力まで身につけた狸の親父にとって、愛するものが年老い、死んでいくのを見るのが辛かったのだろうとは、女房狸の言葉 だった。
この数年、私の身の回りに起こっていた怪奇現象はなくなってしまった。
岬は全てが始まる前の、訪れる人も無い静かな朝を迎えている、はずであった。

異変はそのときに起こった。
「おっさん、なんかぐちゃぐちゃといろいろと煩いわ。眠れんから、もう少しパワーを絞ってくれないか」って声が頭の中に響いてきた。
「なんだ、誰なんだ、お前は」驚いて、周りを見渡すと、頭の中に二匹の犬のような動物のイメージが湧きあがってきた。犬は元の狸の巣のところにいる。
「もしかして狐か」って聞くと、二匹はうなずき、そうだと答える。
「何しに来たんだ」
「来ていけないか。河童だって、狸だってきたじゃないか。狐の俺たちがここにいても何の不思議もないだろう」
「まあ、そうだけど」
「とにかく、相方が子供を産むんだ。しばらく、この狸の巣を使わせてもらうからな。それで相方は初産だから、いろいろ神経的にも参っているんだ、お前さんみたいにテレパシーでがばがば怒鳴りたてると、この辺のどこにいても、相方が参ってしまう。なんとかしてくれ」
「おう、それは知らなかった。テレパシーには蓋をするから、相方にはよろしく言ってくれ」



狸  借問此何時 春風語流鶯

2006年05月08日 13時38分48秒 |  河童、狸、狐
狸に対して感想を寄せてきた人がいた、
その中に 「借問此何時 春風語流鶯」 の文字
李白の「春日醉起言志」の一節ですよね。
私の好きな言葉で、その符号がとても嬉しかったので
そのことをご紹介します。


借問す此れ何れの時ぞ,
春風に流鶯語る

中国人と日本人の感性がどうしてと思うくらいによく似ていることがある。
おそらく西洋人ならこのような感性は持てないだろうなと、思う。
李白の李白たる面目が溢れた文章ですね。
こんな天才と同列に自分を扱う気持ちはさらさらないのですけど、でも李白の感性は本当によく判る。
彼と私の違いは、彼はそれを伝えられるけど、私はそれを読むだけ。
天才と凡人の差はここにありました。

でも言葉じゃない、なにを感じ、なにを伝えたいか、それが本当にみなが共鳴できるもの。。。。その人の気持ちの奥底にあるものがその人にきちんと判っているから、直接相手の心に届かせることができる。
そしてそれを借り物でなく自分の心の底からでてくる言葉で表せられるているから、人を感動させるのでしょう。

このことはあまりにも何度も言い続けました、芸術ってどう表すかではない。なにを表すか、そしてそれをきちんと把握しているのかなんだ、心から心へのメッセージなんだってね。
色や形、音や光、芸術のジャンルなんてそのための単なる道具にしか過ぎないのです。
(ごめんなさいね、私の狸へ感想を寄せた人はそこまでは言ってません。単に李白を引用してその人の気持ちを表していただけ。ここまで書かれれば私は嬉しくて、狂い死にするでしょうけど、残念ながら、狸そのものが、出たとこ勝負のいい加減な話でしかなかったし、何度も言い訳気味に書いていますけど、その実験台だったのですよね)

でも、実を言うと私はこの前段が好きなんです。
(自分の勝手な訳でごめんなさい。間違っていたら訂正をお願いします)


  處世若大夢,
胡爲勞其生。
所以終日醉,
頽然臥前楹。
覺來庭前,
一鳥花間鳴。

    この世って夢のようなもの
    だったらなんで苦労して生きる?
    朝から晩まで酒を飲んで
    陶然としてベッドに伏す
    眠りから覚めて庭を眺めれば
    鳥が花に来て鳴いている。

先日来、夜中に鳴き交わすからすのことを書いていました。まさかこの方はそこまではご覧になっていないと思います。

人生はその人にとっては全て、その人生の全てをあること、ある人にかけることもあるだろうし、挫折してそれを失う事もあるでしょう。狸では反面的にちょっとそのことに触れてました。
(狸だから最初から夢物語ですよね。夢物語だから、何となく現実に置き換える気がするけど、あれを現実の話、人間の話として書けばなんとも生臭くなったでしょうね)
またその人生だって実在であるのかどうか疑わしく思える事もあるだろうと思います。

我思う故に我ありは西欧的な考え方。
我思うっても、果たしてその思っている自分、現在が夢の中かどうか判ったもんじゃないというのは中国や日本に多い考え方、、、

このブログに転載したかどうかわかりませんけど、本当に子供の頃、
今の子だったらまだ幼稚園にも通わない頃。
秋の月夜でした。庭を見ていました。
雪が降ったように真っ白になった地面。
氷細工のように冷たささえ感じる庭の風景。
昼の太陽のように明るい月の明かりに木々や花はくっきりと見えているのだけど、何か遠近感がない。
まったく現実味を覚えない風景。
確かにこれは現実の世界なのだけど、一歩環境が変り、視点が変るとそれは空想の世界のものでしかない。
そのことを感じている私は、その縁側に座って外を見ている私の後ろから私を見ていて、私の考えを読んでいる。
そしてそれを見ている私はもう一人、空中から見ている。
そんな感じを受けました。

それ以来何十年にもなる今でも、現実のこの世と夢の世と、果たして私はどちらに住んでいるのかなと感じています。






狸 9 完

2006年05月01日 22時24分15秒 |  河童、狸、狐

岬も夏になり秋風が吹くようになり、こんな田舎でもゆるやかではあるけど、時は流れているんだなと実感させるような日々になってきました。

私にはこれ以上テレパシーは教えないということに長老たちが決めたようだ。
ただし今その能力があるのでそれを制御することだけは教えることはかまわないということになり、自分の考えをブロックして外に出さない方法とか、出力を下げる方法とかがメインになってきた。

「でもなテレパシーをコントロールするということは、テレパシーを出せなければ意味がないことだろう。だからコントロールするやり方をちゃんと覚えれば、だすこともできるようになるさ。それにテレパシーと他の能力とは特に区別がないんだ。見たいと思うか、聞きたいと思うか、感じたいと思うか、それによって受ける形、イメージがことなるだけなんだ」というのが古狸の説明。説明を終わって下手なウインクを送ってきた。
でもこのレッスンのおかげで、ワイフ狸とも話ができるようになってきた。

そのワイフ狸だけど、相変わらずあまり子育てには熱心ではない。母犬が狸と自分の子供の面倒を見ていることが多いのには変りがなかったのだけど、でもこの一月ほど、ワイフ狸が子狸たちをつれてどこかへ行くことが多くなってきた。
母犬のほうはワイフ狸が子狸を連れて出て行くのを不思議とも思っていない様子で、残された子犬たちと遊んでる。
数時間姿を消していたかと思うと、ワイフ狸も子狸もどろどろになって、疲れ果てたような様子で帰ってくる。
そのようなときには必ず古狸がワイフ狸の首を甘噛みして愛撫している。

「ここのところちょくちょくどこかへ行くようだけど、どこへ行ってるんだ」ある日古狸へ聞いてみた。
「子供たちの教育よ。狸には狸の生き方があるから、それを教えているんだ。あの犬は人に飼われていた犬だから、餌だって人から貰うことが当たり前と思っている。全部の餌を自分でとってくることなんか考えた事もないだろう。だからここにいてお前のくれる餌を当てにしているんだ。
でも狸は野生の生き物だから。自分の餌は自分で取れなければ死んでしまうんだよ。でもよ、俺はなまじ妖術が使えるから、普通の餌のとり方はできなくなっちゃってるんだよな。親としては失格だよ。だからあいつにやってもらうしかないんだ」
なるほどそうかとワイフ狸もちゃんと要所は押さえて子供の面倒を見ていることに始めて気がついた。

そうこうしているうちに、古狸とワイフ狸が何時も子供たちと外で遊んでいるようになってきた。もうだいぶ大きくなった子狸たちが、母親や古狸の背中や尻尾にじゃれまくっている。古狸もワイフ狸も今までなら怒っていたようなことでもただ、黙って楽しんでいるようだ。
もしかして、、、もしかして巣離れの時期が近づいているのかなって思っていたら、ある日子狸たちの姿が見えなくなった。
「巣離れをしたのか」って聞くと
「そうだ」と寂しそうな声で答えが返って来た。
「そうか、おめでとう、これで一つ仕事が片付いたな」って慰めるしかなかった。

二匹はぼんやりとした日を送っていたけど、おかしい。
子供たちが自立していく動物だと、巣離れをしてもそれほどこたえないはずだけどと思ったがどうもおかしい。
何かあるのだろうか。

ある日ワイフ狸が、「うちの亭主が別れようと言っている」ってボソッと言った。
「えっ、喧嘩でもしたの」って聞くと、
「喧嘩ならいいのよ。そんなら仲直りすることもあるでしょう。彼はね、私が好きだから、綺麗な私の間に別れたいっていうの。彼はいつまでたっても死ねないのよ。私がおばあちゃんになって、よろよろになっても彼はまだ今のままよ。
もう生きていくことに疲れたっていってるのよ。
私がまだ若い間に次の普通の狸を見つて、一緒に歳をとっていけっていうの」
「それで彼はどうしようというのかな」
「彼はもともと中国の狸。昔経典を日本に持ってくる船に乗って日本に来たのね。だから中国に帰って、死にたいって。あそこには何か特別な草があって、それを食べれば死ねるんだって」
「お前さんはどうするんだ」
「私はあの人にあって、この人と一緒に生きて、苦労して、この人のためなら死ねるって思ったわ。
だからあの人がいなくなったら私の余生なんて生きていく価値なんかないわね。
棄てられたらどうするか見当もつかない。
でもあの人が生きていくことに疲れたっていうのもわかる気がするし、それに遅かれ早かれ私が先に死ぬ。彼が私を失って悲しむくらいなら、彼が別れようと言うときに別れてあげるのも彼のためかもしれない。
でも自分が疲れたから死にたいって、じゃああの人に自分を賭けた私の一生は、私の気持ちはどうなるの、あまりにも身勝手だわって気もするけど」

彼と話してみるっていってその場は別れたが、彼女はまるで幽霊のように歩き去っていった。

「ワイフと話したな。そうなんだ。
妖怪になる生き物は死ねなくなるんだ。
河童を見たろう。あいつらは種として不死の能力を持っている。狐も最初から特別な能力を持っているのがいてそれは死なない。狸は普通は、死ぬんだけど、どうかしてわしのような能力を持ってしまうと死ねなくなる。死ぬのは事故で死ぬしかないんだ。
死なない同士なら、それでもいい。わしの前の嫁さんがそうだったし、彼女も交通事故で死ななければずっと生きているだろう。わしら同士は子供を産む能力はあまりないんだ。だからそれでも増えないんだな。
でも普通の狸を好きになって、そいつが老いて、死んでいくのを何人も、何十人も見なければならないというのはちょっとつらい。
わしにはもう辛すぎる気がしてきたんだ」
「ちょっと待てよ、だとすると俺はどうなる。おれもテレバシーを見につけると不死になるのか」
「たぶんな」
「そんなことは聞いてないぞ。大問題じゃないか」
「人間は昔から不老不死を追及してきたじゃないか」
「考えても見ろよ、今のお前と同じだよ。誰かが好きになっても、そいつの死ぬのしか見れないなんて、その後また好きになっても、また同じことの繰り返しじゃ、俺はいやだよ。死ぬのはだれにでも来ることじゃないか。死ねなくて、いつもいつも別れを言わなきゃいけないなんて、俺はそっちがいやだな。今持っているテレパシーでも死ねないのかな」
「もしかしたらな」
「ならこのテレパシーの能力を失えば、死ねるのだろうか」
「さあ、判らないな」
「いずれにしろ、テレパシーなんかあっても、よいことはないと最近思うようになったんだ。おれは人間だから、相手の考えがわからないでシクハクして、悩んでいるほうがまだ自然だと思う。テレパシーの能力を無くす方法はあるのかな」
「わからん。今までそんなことを考えたものはいなかったはずだから」
「とにかく、テレパシーにはブロックをかけて使わなくしよう」
「それでその後のことは何とか考えるよ」


「そうだな、お前はわしが思っている以上に賢明なのかもしれない。とにかくわしはもう生きていくことに疲れたよ。生きるとし生けるものには皆寿命がある。だから愛しいし、自分の一生を大事に生きようとするんだ。
死ねないということは生き物にとっては一番残酷なことかもしれない。特に誰かを愛したり、誰かと一緒に暮らしたりしているときにはな。
あいつは悲しむだろうし、わしを身勝手だと思うだろうけど、なにメスはすぐに忘れるよ」
ちょっとわからないという顔をすると、
「お前も言っていたじゃないか、生き物にとって子孫を残していくって言うことは一番基本的なこととしてプログラムされているんだ。
メスにとって子供を産み育てることは死に物狂いのことなんだ。命をかけた作業なんだ。だから本当にそれに値するだけの好きなオスを見つけようとするのは当然だ。
種類によっては子供を産み、育てるだけで一生かかるんだ。
どんなに好きだ、この人がいなければ自分の一生は意味がないと、そのときには思っても、それが全く可能性がないと判れば、一瞬でスイッチが切れるよ。翌日には別なオスに抱かれているかもしれない。
メスの悪口を言っているのじゃないよ、そうしないと種が残せないんだ。
オスが必要なら手当たり次第にでもメスを抱けるのも、それと同じだよ。
種を保存するために心の奥底に埋め込まれた本能だよ。
だから本当に好きなメスにあったオスのほうが、いつまでもメスを忘れきれないだろうな。

まあ
江碧鳥逾白 
山青花欲然 
今春看又過 
何日是帰年
  緑の河には白鳥が飛び
  山は青く、花は燃えようとしている
  今年の春もまたそうやって過ぎてしまった
  いつの日に、故郷に帰れるのだろう

だよ」
「杜甫の絶句か。家に帰るんだってな。そしてそこで死ぬのか」
「うん、もう十分生きたから。俺の命だもん、いつ死ぬかぐらい自分で決めていいだろう。あいつとはもう少し一緒にいたいけど、そうすると本当に離れられなくなるしな]]

こんな重いトピック。自分で決めるしかないよな。それに考えるとしても、俺なんかより何十倍も生きてきた相手だし、俺が何かを言える立場じゃないなって黙るしかなかった。


数日後、古狸からメッセージが入った。
「ワイフはどうした。新しい相手は見つかったかな」
先日、ワイフ狸のそばに若い狸がいて、首を甘噛みしているのを見ていたけど、まだみたいだよって答えた。
「そうか、今故郷に向かう船の中だ。なんと故郷の方言をしゃべる若い、可愛い狸が乗っていてな、子供を作るのは終わりだと思ってたけど、もう一度やってもいいかなって気になったよ」ってエヘヘと笑っている。
「その子はどうやって船に乗ったのかな」って聞くと
「元彼も妖怪狸だったらしくて、少し妖術を教えてもらっていたらしい。それで世界中をあそびまわっているらしい。なかなかおしゃれな子だよ。アチチ」
「どうした」
「おしゃべりしているから、甘噛みじゃなくて、本気で噛みやがった。ワイフによろしく伝えてくれ」

数日後、テレビで中国へ向かっていた船が爆発炎上したのだが、犬のような死骸が船長室にあったと伝えていた。

ワイフ狸に彼のメッセージを伝えた。
美登里が一緒だった。美登里はなぜかその先のスケジュールをキャンセルして帰ってきたのだった。

ワイフ狸は開口一番、「彼、死んだんでしょ」って聞く。
何故って聞くと何となくそんな感じがするっていうから、彼の最後のメッセージを伝えた。そして彼みたいなオスなんか忘れて、貴女も同じようにオスを探せばっていった。
彼女は、「貴方って馬鹿ね」って怒る。
「だって、彼のその彼女の話なんて、私を諦めさせる作り話でしょう、貴方って彼と一緒にいて、そんな事もわからないの。彼がメッセージを送ってきたのは火災を起こした船の上で、もう助からないと覚悟を決めたからよ。彼の私へのダイイングメッセージだったのよ」

彼女のあまりの剣幕に言い返そうと思った私の手を美登里が止めた。
ワイフ狸はよろよろと出て行った。

「彼が死んだって何故判ったのだろう」
「貴方は言ったわね、メスはオスに命を預けるって。
だからそのオスのために子供を生むというような命をかける行為だってやれる。
認めたくはないけど、ある部分それは正しいわ。
だから女は命をかけている相手のことは感で判るの。

貴方は私がテレパシーで貴方がなにをしているのか、なぜそうしているのか判っていると思っているでしょう。
でもそうじゃない。貴方にはテレパシーは使ってないわ。一度もね。その必要がないもの」


「それにしても怒らなくても」
「貴方に怒ったわけじゃないわ。
自分と、なんともやり切れない自分の運命に怒ったのよ。
彼女には彼がどれだけ彼女を愛していたか、だからあんなことをしたんだって、今更のように気がついたのよね。
そして彼女が失ったものがどれほど大きいのか。
彼がまだ生きていれば、彼女はどうやってでも彼のところに行こうと思うでしょうけど、でももうそれはできない。永久にね。
それを彼女は判ったの」


古狸がお別れのプレゼントだと言ってくれた、密教の経典を薪にくべて燃やした
あまりにも悲しかったから。
それにそんなものが無くても彼のことは一生心に住み着いているだろう。
「おい、また可愛い子を見つけたよ」ってメッセージが心に響いてくるような気がした。
「かっこつけちゃって」
涙で炎が霞んでいた。

美登里の手が私の膝に優しく添えられるのを感じた。

古狸の好きだったワインをグラスに注いだ。
古狸へ乾杯




                             05/01/2006 11:14:09