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欠陥だらけの県民投票は、埋め立て賛否の「2択」に「どちらでもない」を加える「3択」という与野党の妥協で決着がついた。
ただ、与野党妥協の結果は、新たな欠陥を浮上させた。
仮に第三の選択肢「どちらでもない」が最多数を占めた場合のことだ。
この点に関し、沖タイの御用学者木村草太氏は、こう述べている。
【投票前に「各選択肢の意味」を確定する必要がある。改正県民投票条例10条は、県知事は投票結果を尊重しなければならない、と定める。もしも、「どちらでもない」との投票が多くなった場合、どうすれば県知事は投票結果を尊重したことになるのか。この選択肢の示す住民の意思はあまりに不明確だ。
これを曖昧なままにしておくと、工事反対派は「積極的賛成でないのだから反対の一種だ」と主張し、逆に、国は「反対多数でないのだから、工事を進めて良いのが民意だ」と主張するといった混乱を招くだろう。こうした事態を避けるには、事前に「どちらでもない」の意味を明確にしておくべきではないか。そうすれば、投票権者は意味を十分に理解して投票でき、県知事も解釈に戸惑う必要はなくなる。
この点、「どちらでもない」の意味の説明責任は、議決した沖縄県議会にある。賛成・反対以外の選択肢を設けるべきだと主張した自民党・公明党も含め、県民に対してしっかりと説明すべきではないか。また、玉城デニー知事は、そうした説明を踏まえ、玉城氏自身がそれをどう受け止めるつもりかについて、声明を出しておくべきだろう。】
なるほど、「どちらでもない」が最多数の場合、デニー知事側は「どちらかと言えば反対」と捉えるだろうし、基地容認派はその逆ととらえるだろう。
しかし、「どちらでもない」の「意味の確定」を今更県議会で決められるはずはない。
当然県政与党は「どちらかと言えば反対」に賛成だろうし、これを数の力で押し切ったら、県民投票は振出しに戻ってしまう。
一難去ってまた一難の県民投票である。
■「3択」は署名者への裏切り
県民投票の発端は「県民投票の会」元山仁士郎氏が約10万人に署名を集め、これを根拠に県議会が県民投票条例を可決したことに始まる。
元山氏が署名を集めた際、「辺野古埋め立ての賛否」を問うの「2択」で署名を集めた。
元山氏が「3択」の妥協に対し当初は反対だったが、謝花副知事の説得でしぶしぶ納得させられた。
つまり、元山氏は署名をした約10万人の意思を捻じ曲げる「3択」に反対していた。この点、曖昧妥協をした与野党県議や県幹部より、元山氏の方が良心的と言わざるを得ない。
≪県民投票の会は「賛成」「反対」の2択で署名活動をし10万筆近くを集めて県に条例制定を請求した。元山さんは不参加を表明した5市に実施を求め、19日までの5日間ハンガーストライキもした。「署名を集めた人たちの思いはねじ曲げられるような選択し、あるいは県民が明確な意思を示せない選択肢はあってはならない」と強調した。≫(沖縄タイムス、1月24日)
2択で署名した県民の思いを忖度した元山氏は、一応良心的と考えることもできる。
だが最終的には、謝花副知事に説得され、10万人の思いを捻じ曲げた選択肢の同意した。 やはりインチキハンストで恥さらしする程度の人物だったのだろう。
「三択」で裏切られた人は他にもいる。
「2択」で関連予算を可決し、いち早く県民投票に参加を表明した多数の市長村だ。
彼らは「2択」だからこそ実施を決めたのであるり、「どちらでもない」を加えた「3択」で実施を決めたわけではないはずだ。
2019.2.1 21:37政治政策
辺野古県民投票 圧倒目指す反対派、知事選39万票下回れば逆風も
沖縄県名護市辺野古沿岸部の埋め立て海域のすぐ東側で新たに造成が始まった護岸(中央下)=1月28日午後4時53分(共同通信社機から)
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を問う県民投票が全県で24日に投開票されることが1日、固まった。玉城(たまき)デニー知事を支える共産党や社民党など「オール沖縄」勢力は「辺野古新基地建設反対の圧倒的な民意」の提示を目指すが、結果次第では玉城県政にとって逆風となる可能性もある。
「多くの皆さまに深く感謝を申し上げたい」
玉城氏は1日、県民投票の全県実施を受け、喜びの談話を発表した。結果に法的拘束力がないにもかかわらず玉城氏らが実施にこだわったのは、4月21日投開票の衆院沖縄3区補欠選挙や夏の参院選に向け弾みにしたい考えもあるからだ。
オール沖縄内では当初、賛否2択に「どちらでもない」を加えた3択案への消極論が根強かった。2択では宜野湾市など5市が不参加の公算が大きかったが、オール沖縄系県議は「5市長は自民党系だ。彼らを批判すれば補選や参院選に有利になる」と語っていた。
オール沖縄が最終的に3択を受け入れたのは「反対の圧倒的民意」を示す上で悪い材料にはならないと判断したからだ。
オール沖縄幹部の県議は「他の住民投票でも『どちらでもない』に似た選択肢があったが、ほとんど票が入らなかった」と語る。確かに平成13年に東京電力柏崎刈羽(かりわ)原子力発電所(新潟県)でのプルサーマル計画実施の是非を3択で問うた刈羽村の住民投票で、「保留」は3・63%だった。
とはいえ、昨年9月の知事選で玉城氏が得た約39万票を「反対」票が下回れば、玉城氏にとって打撃となる。玉城氏は知事選勝利を「反辺野古の民意」と位置づけており、自民党などから「知事は反辺野古で当選したわけではない」との批判を浴びかねない。
こうした事情を意識してか、玉城氏には焦りにも似た動きが目立つ。県民投票条例は知事の中立的、客観的な情報提供を規定しているが、玉城氏は昨年12月に移設反対デモに参加。1月28日の講演では「どちらでもない」を「どっちでもいい」と説明し、自民党の反発を受けている。(杉本康士)
【おまけ】
1月29日、沖縄県議会で、「賛成」「反対」に加え、「どちらでもない」との選択肢を設ける県民投票条例改正が成立した。これを受け、投票事務拒否を表明していた五つの市でも、県民投票が実施される見込みとなった。全県実施となり、県民の投票権が確保されたのは大変好ましい。ただ、幾つか注意すべき点もある。
第一に、投票において「どちらでもない」との選択肢が許されるのは、県民投票の特性によるものだ。国政選挙、地方選挙や憲法改正国民投票では、そのような選択肢を設けることは許されない。
法的に見たとき、選挙や憲法改正国民投票の場面では、各有権者は、議員選定権限や憲法改正権を担う「権力者」としての決断を求められる。ここでは、「どちらでもない」などと、決定を先送りする選択肢を設けるのは不適切だ。
これに対し、今回の県民投票を含め、いわゆる住民投票は、行政機関(今回は県知事)が権限行使する際の参考として、住民の意識を調査するものだ。つまり、選挙よりも、パブリックコメントやデモ行進に近く、決断責任は、あくまで県知事にある。それゆえ、「どちらでもない」との消極的選択も許された。そう理解すべきだろう。
第二に、県議会は、今回の経緯が、「違憲・違法の投票権侵害行為に譲歩した前例」と位置付けられないように努力せねばならない。
これまで指摘してきたように、投票事務拒否は、憲法が保障する平等権や意見表明権の侵害だ。もしも選択肢追加によって、もともとの県民投票よりも不適切なものになったのであれば、それは「違憲行為への屈服」であり、許されない。そうだとすれば、今回の条例改正は、「交渉の中で、よりよい選択肢の在り方が発見された事例」として説明されなくてはならない。そのためには、「どちらでもない」という選択肢を加えた方が、元の県民投票よりよいものになる理由を、県議会は説明すべきだろう。
第三に、投票前に「各選択肢の意味」を確定する必要がある。改正県民投票条例10条は、県知事は投票結果を尊重しなければならない、と定める。もしも、「どちらでもない」との投票が多くなった場合、どうすれば県知事は投票結果を尊重したことになるのか。この選択肢の示す住民の意思はあまりに不明確だ。
これを曖昧なままにしておくと、工事反対派は「積極的賛成でないのだから反対の一種だ」と主張し、逆に、国は「反対多数でないのだから、工事を進めて良いのが民意だ」と主張するといった混乱を招くだろう。こうした事態を避けるには、事前に「どちらでもない」の意味を明確にしておくべきではないか。そうすれば、投票権者は意味を十分に理解して投票でき、県知事も解釈に戸惑う必要はなくなる。
この点、「どちらでもない」の意味の説明責任は、議決した沖縄県議会にある。賛成・反対以外の選択肢を設けるべきだと主張した自民党・公明党も含め、県民に対してしっかりと説明すべきではないか。また、玉城デニー知事は、そうした説明を踏まえ、玉城氏自身がそれをどう受け止めるつもりかについて、声明を出しておくべきだろう。
(首都大学東京教授、憲法学者)=第1、第3日曜日に掲載します
琉球朝日放送。
「自民党県連・照屋守之会長「いずれにしても県民投票をする意義、そのものが3つの選択肢にすることによって薄まっているような気がしますよね。反対の人は、反対ですからね」
石橋記者「照屋代表の発言を聞いていると『どちらでもない』という選択肢の扱いが非常に難しいという印象を受けます」
仮に「どちらでもない」が多くなったとき、結果として、これを賛成ととらえるべきか、反対ととらえるべきか困るかもしれません」(琉球朝日1月29日)
http://www.qab.co.jp/news/20190129110746.html
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