映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

2015 なけなしのBEST10

2016-01-05 21:53:14 | 映画ベストテン
2016年も5日が過ぎようとしてます。
新年おめでとうございます。
滝の流れみたいにジャンジャン時が過ぎて行き、驚くばかりです。
驚くといえば、2015年のBESTを選ぼうと振り返ったら13本しか新作を観ていませんでした。ビックリぽんや!とか言ってる場合じゃないですね。最初に言っておくと、観ようとしたのに御縁が無かったのは、(ソロモンの...、駆込み女と...、あ...、恋人...、きみは...、味園...)言い訳ばかりです。

①バクマン
2015年の一等賞は勢いと熱さを買ってこの映画にいたしました。大根監督は前作の「モテキ」が大変楽しかったので、期待していただけに嬉しかったです。題材自体にはそれ程の思い入れは無く、漫画を創るのは大変なんだなぁ程度の感想しか持てませんが、何を生み出すにせよ慢心と毎日過ごしている人には神様は降りてきてはくれない事だけは確かですね。好きなものに夢中になる事の尊さを教えてもらえます。この歳になると冒頭に書いた通り好きな映画にさえ足を運ぶのが億劫になります。今年は入れ替えられる心があるなら入れ替えて、もっと沢山映画館に通います。すみませんでした。

②さよなら歌舞伎町
廣木監督は全幅の信頼をしているわけではないけれど、荒井晴彦脚本を良い温度に温めて観せてくれる監督として貴重な人だと思います。荒井脚本は昔から凄いと思っているし、少しでもシナリオ囓った事があればその奥深さに畏敬の念を抱くだろう。ただ、何と言っても重たいのです。そのままストレートにぶつけられちゃうと痛みがなかなか引かないかも。廣木監督は世界観を崩さず、歌舞伎町の夜に生きる人々を程よい装飾を施しながら観せてくれた。助演の韓国人女優イ・ウヌの素晴らしさを知る事もできました。

③くちびるに歌を
何しろ原作が好き。わたくしも田舎者だから地方(特に僻地といわれるような所)で思春期を過ごしている子供達を見ると放って置けないのです。この作品の舞台は長崎の五島列島。昔一緒に働いていた知り合いがその島の出身だった事を、いま思い出しました。あんまりいい奴ではなかったので、この物語のような純朴な少年ばかりではないんだ(そりゃそうだ)。スウィングガールズがそうだったけれど、一生懸命音楽に打ち込んでいる子供達って絵になりますね。キュンとしてしまう可愛い映画です。

④岸辺の旅
黒沢清との相性はそれほど良いとは思えません。世界的に評価の高い監督ですが、観た映画には気分が乗らず、観たかった作品とは縁が無く未見のままです。好みですから仕方ありませんけど、何人かそういう相性の悪い監督いますね。でもでも、この作品はとても好みでございました。死者との道行を描いているのですが、悲愴感は感じられずお涙頂戴の三流ドラマになっていないのは流石です。浅野忠信も苦手な部類でしたが、初めていい役者だなと思った次第です。7日発表のキネ旬では5位でした。

⑤海街diary
是枝監督作品としてはちょっと違うかな。映画を観たあとに原作も読みました。映画は原作そのままに忠実に再現されていて、原作好きな人も文句無いだろうと思います。鎌倉に住む四姉妹もあのキャスト以外には思いつきません。四姉妹を囲う人々も過不足無く配置され、小津映画を観ているような安定感ある佳作なのです。が、わたくしの好きな是枝作品はもうちょい辛辣であって欲しいし、夏の陽に炙られた使い晒しのタオルのようなゴワゴワした肌感覚が欲しかったのです。キネ旬4位です。

⑥ジュラシックワールド
ジュラシックシリーズの最初に戻ったみたいでとても楽しめました。そもそも恐竜大好きなので、20年前にジュラシックパークを観た時は真剣にあの世界に紛れ込みたいとさえ思ったものです。原作の哲学も引き継がれていて、Ⅱ・Ⅲとだんだんこけおどしのパニック映画になりつつあったシリーズを元に戻してくれたかな。普段ハリウッドメジャー映画を馬鹿にしていますけど、この手の映画はやっぱりハリウッドがつくらないとダメですね。

⑦氷の花火
山口小夜子を今更映画にしてどうするのかと思いましたが、観終わってみれば、松本監督が今つくりたかった理由が分かりましたし、今こそクールジャパンの元祖のような彼女を再発見することはとても意義深いと思いました。TVで数多くのドキュメンタリーを手がけた監督が、山口小夜子のメークや撮影を担っていた方達と、自分たちが創造した「小夜子」をつくり上げてゆく様子が物語を観ているようでスリリングでした。

⑧アメリカンスナイパー
イーストウッドもいつ死んじゃうか分からないから、観る時には観ておかないとなりません。日本の映画評論家の多くはクリント教の信者みたいで、どんな作品も褒めますよね。わたくしはそれ程のものか?と、いつも疑念を抱いています。本作品も遠い砂漠の地で、何が正義なのか良く分からなくなってしまった戦争を、醒めた目で見ている部分は流石だと感心しますけど、根底にある銃社会への肯定がどうしても許せませんでした。やっぱりキネ旬2位にしちゃいました。

⑨バケモノの子
前作が良すぎた事と、ファンタジーになるべき世界(バケモノ界)の没個性が祟った気がする。今回も家族を描こうとしているのは分かるのですが、主人公達は最後まで家族になりきれてませんでした。よっぽど敵対するライバルの方に感情移入しておりまして、作劇としては失敗です。「サマーウォーズ」は血の繋がった大家族と新参者が交じり合いながら、最後は見事に同化してました。あの感じが出せなかった。

⑩スターウォーズ フォースの覚醒
もう二度と出会うことの叶わない親友に逢えたようなそんな感じ。40年近く前から知っている友は、途中ちょっぴり気難しい雰囲気にもなったけれど、久しぶりに話してみれば昔と変わってはおらず、すんなりとけ込めました。ルーク、レイア、ソロ達がそのまま本当に年月をかけて年老いた姿を見せてくれたのが要因でしょうか。わたくし達世代にとっては嬉しい出来事でした。

次点 母と暮らせば
山田洋次が監督じゃ無くてもこの映画は成り立っていたな。長崎の原爆を扱っているから笑いにはできないけれど、ユーモアはあっても良かったんじゃないだろうか。「父と暮らせば」が持ってた良いところを全部裏切られた気がします。それでも、黒木華は昔の日本女性を演じさせると、今や日本一の女優です。キネ旬9位にランクインです。