重松清の原作にも二作作られたテレビドラマにも思い切り泣かされた
不器用な肉体労働者の父親と出来のいい息子の物語は、昭和の市井の生活や人情がよく似合っていて傑作の多い重松作品の中でもとりわけ人気の小説だろう
監督も脚本も演者も力ある人たちばかりだからハズレは無いだろうと最前列の椅子に腰掛ける
よく知ってる物語なのでストーリーの展開に驚きも感慨もない。だからこそ必要なのは細やかなディテールの積み重ねを丁寧に行うことなんだ。皆さんご存知のお話だから適当に端折ってもついてきてくれますよね的な粗さを感じてしまった
阿部寛演じる父親が息子に注ぐ情愛の鬱屈した気持ちが伝わらない。見てくれとしては映っているんだけど、表面的な見え方しか感じられず不器用な男親の悲哀が滲み出ていないのだ。もう少し演出も演技も粘らないと生まれない化学変化だ。ヘタに場数を踏んだ達人たちが上辺で映画を作ってしまったようにしか感じられなかった
主人公取り巻く友人や小料理屋の女将、職場の同僚までもが画一的に思えてきてしまう。息子の北村匠海と婚約者杏の取り合わせもしっくりこない
みんな上手で卒なく演じているんだけどね
そんな中、息子を庇い事故死した麻生久美子の儚げな美しさが際立って、改めていい女だなと認識させられた