映画と渓流釣り

物忘れしないための処方箋

人の心も渇水しているんだ

2023-06-06 06:38:00 | 新作映画


40年も前の話だが、半年ほどこの映画の舞台である前橋市に住んでたことがある
新卒で就職した会社の配属先である支店(お店)が市の中心部にあり、バイクで通勤できる程度の郊外に居を構えた。半年で転勤したからうろ覚えだけど、四月から九月までの暑い季節は過ごした筈なので記憶に残るほどの酷暑であれば何らかの断片記憶があろうに、クーラーもない部屋でひと夏を過ごせるくらいの節度ある暑さだったということだろう
40年前は今ほど殺人的な夏ではなかったのは間違いない

都道府県庁所在地の中でも最も暑い街として知れた前橋だから渇水の街として舞台になったんだろうけど、実際は水資源には恵まれている。群馬県は利根川水系の水源地だから神奈川を除く首都圏に住む人々の水瓶になるべく巨大なダムがいくつもあるので、当然一番美味しいところは当たり前だけど優先的に頂戴している。そんな事を知っているのは地元ピーだけだろうからちょっと触れてみた


「誰も知らない」に似た育児放棄の話だけど、給水制限と使用料未払いのため苦悩する水道職員に焦点は注がれる。日本において水道はわたくしの知る限り民営化されておらず、県や市町村が運営する公営事業だ。よってこの映画の主人公は公務員ということになる
女の子二人の母親が憤るように、安定した小役人に何がわかるんだとの感慨を持たれる方もあろう。規則通りに未払い案件の給水弁を閉じる仕事は感情的に対処していては成り立たないザ・役人の領分だ

生田斗真はその辺を淡々と演じていて臭い人情物にしてない。見捨てられた女の子も是枝演出には及ばないにしろ結構自然体の存在で好演していた
この手の話になるといつも思うのは、悪者がネグレクトしている母親だけだということ。父親の無責任とかは結局語れなかった。底辺にうごめく子供たちの家庭環境は、単純に親の無知と怠慢が生み出した悲劇でしかないけど、見て見ぬ振りしているわたくしの様な偽善者が悪いのも確かだ

施設に入居する姉妹は今日飢えることもなくなり、明日のために公園の水道栓を開く必要もない
それは幸せなことなんだろう
そうなのかな?




光を跳ねる子供たち 「怪物」

2023-06-04 15:35:00 | 新作映画


暗い隧道を抜けて、明るい光の中へ飛び出した二人に泣いてしまいました
天井の照明が点いて明るくなった場内、劇場から出口に向かう人々には見られなかったでしょう。今日も誰より一番前の席で鑑賞しましたから

序盤、お母さんが学校へ息子を守るために通い詰める緊迫感。中盤の教師目線で語られる遣る瀬無さ。その後に延々と続いてゆく子供たちの性的な危うさを包括した自由な描写に、この映画がとんでもない怪物を描こうとしていることに唖然とします

実は退屈な子供たちだけの時間を半日くらい隠し撮りした方がこの映画を的確に表現できたのかもしれません

監督が脚本が役者がといった分かりやすいアイコンを陳腐にしか感じられないほどに、わたくしはこの作品を消化できておりません
唯一言えることはこんなに深い映像表現をしてくれるクリエイターがいる日本映画界で良かったと思うばかりです
落ち着いてから反芻しゆっくり考えてみます


追悼
坂本龍一さん。高校生の時に初めて聞いたYMOの斬新さは忘れません
青びょうたんの戦メリもラストエンペラーの旋律も貴方の残した爪跡です。この作品のスコアも同じようにわたくしには忘れ得ない記憶として残るでしょう
安らかに おやすみなさい

君に胸キュン キュン








梅雨の花

2023-06-03 08:12:00 | 歳時記雑感
大きな台風と共に今年の梅雨が始まりました

昨日から降り続く大雨で新幹線もお休みのようです

目の前を流れる帷子川と二俣川の合流地点にはいつもの何倍もの水で溢れています


去年の春、里山ガーデンで頂いた紫陽花が花をつけました

薄紅色の可憐な花です





ベランダに吹き込んだ雨風でしっとり濡れて気持ち良さそうです

釣りに行った時山林から分けてもらった腐葉土がたっぷりなので肥やしも足りていますかしら





木漏れ日と笑う

大切な人を失う未来なんてこないで

言葉足らずの愛を

愛の花をあなたへ


雨空に育ってゆく花を見ていると

あいみょんが祈るように歌うそんな一節が網戸越しに聞こえてきました