今更ながら読みました。
ベストセラーにもなった芥川賞受賞作です。
モラトリアム時期が終わっても、学生時代のようなアマチュアとプロの間で生き続けることができる人を天才というのなら、神谷さんはそれなのだろうと思いました。
劇場へ出演するのも、依頼ではなくオーディションから入らなければならない無名芸人たち。学生時代が終わっても、延々と就活しつづけることを選んだようなものです。
世間から見たらただのプータローでしかない状態、自分は何者かと問われれば、100%芸人であると体全体で言える脂質が天才芸人なのでしょう。
長すぎたモラトリアムが終わり、まっとうな道へ歩んでいく仲間たちを芸人の世界にとどまり見届けながら朽ちていく神谷さんはそれでも活き活きとしているのは、普通の人には理解できない状態です。
主人公は、売れてきたときに相方の結婚を機に、芸能界から足を洗いますが、神谷先輩に畏敬の念を残すことになります。
まっとうな常識人には理解できそうもない尊敬の念を小説の形で浮き彫りにした作品です。
著者がお笑い芸人だけあって、言葉選びなどにも卓越したものを感じました。