多摩川の辺を舞台にした連作短編集です。
8編の短編小説が収録されていて、ゆるやかにつながっているところがミソなのです。
主人公は皆、別の人なのですが、それぞれに登場しているキャラクターがチョイ役で顔を出すので、自分がその地に住んでいるような気にさせてくれます。
そして、どの話も独立していて、良い話ばかり。
普通なら主人公になりそうもないキャラが主人公なところも面白い。
『おふくろの持ち物から、映画のチラシだのパンフレットだのが束で出てきたときからかなあ。ファイルで綴じられていて、俺の名前がマジックででっかく書かれていた。おふくろにとっちゃ、俳優より小道具の俺の方が主役だったんだ。』
作中にあるセリフですが、8編ともこんな感じの主人公たちです。
1本目の『黒猫のミーコ』……まさか、野菜の無人直売所に泣かされるとは思いませんでした。
ボクにとっては理想の短篇集かな。