田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『パッドマン 5億人の女性を救った男』

2018-11-23 08:10:14 | 新作映画を見てみた
 妻を楽にするために必死になった結果、安全で安価な生理用品の普及に尽力することになった男の奮闘努力の様子を、実話を基に映画化。


  
 まるで瓢箪から駒のような話だが、主人公ラクシュミの健気さにほだされて、見ながらほのぼのとした気分になってくる。これはインドのジョージ・クルーニーと呼ばれているらしいラクシュミ役のアクシャイ・クマールの好演に寄るところが大きい。ラストの国連での演説が嫌味にならないのも、彼の演技力の賜物だ。

 インド映画お得意の歌の挿入もあるが、今回はドラマに沿った歌詞が面白い。インドの風俗描写も新鮮に映る。

 ポール・マッカートニーの「only love remains」や、KANの「愛は勝つ」が頭に浮かんでくるような映画だ。
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『罠』

2018-11-22 12:58:50 | 1950年代小型パンフレット

『罠』(49)(1989.12.17.)

 落ち目のボクサー(ロバート・ライアン)が、八百長を仕掛けられたことを知らぬまま、新たな生活を夢見てリングに上るが…。ロートルボクサーと妻(オードリー・トッター)の愛情を、映画内の時間と映写時間を一致させながら描いた。



 名優ロバート・ライアンがかつてはボクサーだった、という話は知っていたが、この映画はそうした彼の経歴を生かして、見事なボクシングシーンを見せてくれた。それも『ロッキー』シリーズのシルベスター・スタローンのような“作られた体”からではなく、生身の体から繰り出す鋭いパンチが、見る者を圧倒する力とリアリティを持って迫ってくるのである。

 同じ年に、やはりボクシングの八百長を描いたカーク・ダグラス主演の『チャンピオン』が作られたことも興味深いが、それは、ボクシングが持つ醜さや汚さといった側面が第二次大戦直後という時代背景とマッチしたからだろうし、その分、社会の暗部を描くには題材として都合がよかったからだろう。ボクシングというスポーツが、今の華やかさとは全く異なる形で捉えられていたのだ。

 この映画の監督のロバート・ワイズは、今ではアカデミー協会の会長に収まっているが、かつてはこの映画をはじめとする社会派もの、あるいはSF、ミュージカルと、ジャンルにとらわれず、幅広い映画を撮ったいわゆる“職人監督”の一人であったことを思い出した。

ロバート・ライアンのプロフィール↓


ロバート・ワイズのプロフィール↓

パンフレット(51・新世界出版社(NIKKATSU WEEKLY))の主な内容
解説/ストーリイ/アメリカの批評/監督ロバート・ワイズ

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『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』アリソン・スドル&ダン・フォグラー

2018-11-22 08:33:46 | 仕事いろいろ

 『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』で、前作に続いて魔女のクイニーを演じたアリソン・スドルとその恋人のジェイコブを演じたダン・フォグラーにインタビュー取材。



 前作のニューヨークに続いて再現された、1920年代のパリのセットの豪華さに驚いたと口を揃える。今回は2人の関係にも新たな展開が見られる。

詳細は後ほど。

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』↓
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/bb14ffb0c53d2872ad66761d4bea7c87

前作『~魔法使いの旅』のインタビューは↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1079754

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『砦のガンベルト』ブルーレイ発売

2018-11-22 06:59:55 | 復刻シネマライブラリー

 「復刻シネマライブラリー」 リーフレットの解説を執筆したロッド・テイラー、アーネスト・ボーグナイン、ルチアナ・パルッツイ主演の西部劇が12月10日から発売に。

 マカロニウエスタンの影響を受けた“本家西部劇”。回想を取り入れたミステリー的な要素もある。

https://www.amazon.co.jp/dp/B07KQ967K5

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『恋は青空の下』

2018-11-21 11:21:34 | 1950年代小型パンフレット

『恋は青空の下』(50)(1989.6.2.)

 フランク・キャプラ監督が『其の夜の真心』(34)をセルフリメイクしたミュージカル作品。ヒギンズ財閥の長女と婚約して製紙会社の社長となったダン(ビング・クロスビー)は、競馬への夢が捨て切れず、愛馬を連れて家を飛び出すが…。



 この映画、ビング・クロスビーの温かみのあるキャラクターを通して、キャプラタッチの残り香は感じられるのだが、あまりすっきりせず、もやもやが残る。なぜなら、戦前のキャプラ映画にあった、見る者が嘘と知りながらも納得させられてしまう魔法のような作劇、ヒューマニズムを信じ切った迷いのない力強さが影を潜めているのである。

 第二次大戦後のキャプラは「自分は人間を信じ過ぎたのではないか」と、それまで自らが描いてきた楽天的なヒューマニズムに疑問を感じ始めたらしい。その原因は、記録映画を撮影しながら見た戦争の実態にあったようだ。加えて、世論も、楽天的な彼の作品を冷笑し始める。それ故、戦後の彼の作品はあまり多くはないし、『素晴らしき哉、人生!』(46)を除くと、残念ながらこれといったものが見当たらない。戦前の自分の映画をリメークしたこの映画からも、そうしたキャプラの迷いやジレンマが感じられる。

(1996.2.)
 ノーカット、字幕版と初対面。この映画での容貌魁偉とも言うべき、レイモンド・ウォルボーンやウィリアム・ディマレストの使い方を見ると、脇役を大切にする監督としてのキャプラの評価にうなずけるものがあった。キャプラ映画に共通する行動的なヒロインを、この映画ではコリーン・グレイが魅力的に体現していた。

 双葉十三郎さんの『ぼくの採点表』に、この映画に対する鋭い指摘が記されていた。「歌の挿入が楽しくもあり、失敗でもある」というのである。なるほど、一見、キャプラの映画と楽しい歌は合いそうに思えるが、実は全く毛色の違うものだといういう気もする。なぜなら、彼の映画は総じて夢物語ではあるのだが、その中のさまざまな描写は現実的であり、時には暗い側面がある。そこに楽しい歌が流れると違和感が生じるからだ。ところが、この後に作られた『花婿来たる』(51)『波も涙も暖かい』(59)ではアカデミー主題歌賞を取っている。となるとこの説は…。






パンフレット(53・BLC映画部(S・Y PICCADILLY81))の主な内容
世界的名匠フランク・キャプラ監督/解説/ストーリー/キャプラと喜劇(南部圭之助)/ビング・クロスビー、コーリン・グレイ、チャールズ・ビックフォード、ウィリアム・デマレスト、ジェームズ・グリースン、レイモンド・ウォルバーン、ジーン・ロックハート、ウォード・ボンド/製作こぼれ話
パンフレット(53・国際出版社)の主な内容
解説/物語/待望の名匠フランク・キャプラ/唄いまくるビング・クロスビー/古顔新顔がずらりとならぶすばらしい助演陣/製作こぼれ話
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『ふたつの昨日と僕の未来』佐野岳

2018-11-21 07:29:06 | 仕事いろいろ
 愛媛県新居浜市市制80周年記念作品として、新居浜市でロケを敢行したファンタジー『ふたつの昨日と僕の未来』(12月22日公開)。この映画で、坑道を通じてパラレルワールドを行き来することになる主人公を演じた佐野岳にインタビュー取材。



 ずっと着ている赤いダウンジャケットを見て、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマイケル・J・フォックスを思い出したと言ったら、大喜びされた。

詳細は後ほど。
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『オペラハット』

2018-11-20 07:03:14 | 1950年代小型パンフレット

『オペラハット』(36)(1987.7.4.)

 田舎町で工場を営む心優しきディーズ(ゲーリー・クーパー)が大富豪の伯父の遺産を相続する。すると金目あての者たちが集まってきて大騒ぎが巻き起こる。



 見たくてたまらなかったフランク・キャプラ全盛期の一本。どこかで似たような話の映画を見ている気がして、思い当たったのが『Mr.ビリオン』(77)だった。あれもなかなか面白い映画で、テレンス・ヒル演じる主人公のイノセントぶりや、面白い脇役たちに拍手を送った覚えがあるが、何のことはない。キャプラの焼き直しだったわけだ。

 それにしても、どうしてキャプラの映画は、こうも気持ちよく見ることができるのだろうか。普通はここまで善意や理想を見せられるとしらけるところなのに、見る者をほのぼのとした気分にさせ、最後は何となく納得させてしまうという魔力がある。恐らく、そこにはアメリカンデモクラシーや人間の善意を信じなから映画を作り続けたキャプラの信念が反映されているからなのだろう。

 山田洋次の『男はつらいよ』シリーズは、キャプラ的な世界を描いているともいわれる。そしてあのシリーズが、マンネリと言われながらも作り続けられる理由は、みんな素直に好きとは言わないが、失われつつあるキャプラ的な世界をどこかで残したいという、作り手と受け手の共同作業なのかもしれないという気がした。

フランク・キャプラのプロフィール↓


ゲーリー・クーパーのプロフィール↓


ジーン・アーサーのプロフィール↓

パンフレット(47・ニットク社(アメリカ映画M.P.E.A.Weekly))の主な内容
解説/梗概/「オペラハット」の良さ(田村幸彦)/この映画の人々(フランク・キャプラ、ロバート・リスキン、ゲイリー・クーパー、ジーン・アーサ)/たのしい映画勉強(淀川長治)

 

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『俺たちは天使じゃない』

2018-11-19 19:41:04 | 1950年代小型パンフレット

『俺たちは天使じゃない』(55)(1987.5.23.)

 デビルズ島から脱獄した3人の囚人(ハンフリー・ボガート、アルド・レイ、ピーター・ユスティノフ)が、強盗に入った雑貨屋の経営不振に同情し、店を手伝うようになったことから起こる騒動を描く。表紙の美女はジョーン・ベネット。



 ハンフリー・ボガートといえば、われわれ遅れてきた映画好きは、ハードボイルド映画での渋いイメージを思い浮かべるのだが、最近、彼が出演したさまざまな映画を見ることができ、その印象はだいぶ変わってきた。

 例えば、『サハラ戦車隊』(43)の歴戦の鬼軍曹、『ケイン号の叛乱』(54)のダメ船長、『殴られる男』(56)の新聞記者、そしてこの映画や『麗しのサブリナ』(54)で見せたコミカルな演技…などを見るにつけ、実に多彩な役柄を演じていたことに遅ればせながら気づかされたのである。

 この映画の見どころは、ボギーがコメディアン的な軽さを示す意外性にあり、しかも監督があの『カサブランカ』(42)のマイケル・カーティスとくれば、意外性はさらに増す。また、同年にボギーが立てこもり犯を演じた『必死の逃亡者』(55)の“裏返し”としてこの映画を見ると、それもまた面白い。

パンフレット(55・外国映画社(フォーレン・ピクチャー・ニュース))の主な内容は
解説/監督・マイケル・カーティス/原作者のこと/小道具が主役をつとめる/わき役のひとびとベイジル・ライボーン、レオ・G・キャロル、グロリア・タルボット、ジョン・ベア、ジョン・スミス/ストーリー/奇妙奇天烈な着想と絶妙な配役のおもしろさ(原安佑)/ハンフリイ・ボガート、ジョーン・ベネット、ピーター・ユスチノフ、アルド・レイ

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名脚本家ウィリアム・ゴールドマン逝く

2018-11-19 07:26:42 | 映画いろいろ

 ロバート・レッドフォードが出演した『明日に向って撃て!』(69)『華麗なるヒコーキ野郎』(75)『大統領の陰謀』(76)『遠すぎた橋』(77)



 異色ミステリー『動く標的』(66)『マラソンマン』(76)『マジック』(78)、『明日に向って撃て!』のユニークな前日談『新・明日に向って撃て! 』(79)など、主にわがリアルタイムの70年代に大活躍を見せた。

 その後、停滞期の80年代をを経て、作家の受難を描いたスティーブン・キング原作の『ミザリー』(90)、チャップリンの伝記『チャーリー』(92)、テレビ西部劇のリメーク『マーヴェリック』(94)、監督クリント・イーストウッドが泥棒に扮した愉快なミステリー『目撃』(97)と、幅広い作品での復活がうれしかった。

 ハリウッドの裏側を描いた『ティンセル』(86)という小説も著している。ストーリーテリングの名手であった。

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【コラム】樹木希林とは何者であったのか「自己演出の達人」貫く

2018-11-19 06:45:42 | 映画の森
 共同通信社が発行する週刊誌『Kyoudo Weekly』(共同ウイークリー)11月19日号に、
コラム 樹木希林とは何者であったのか「自己演出の達人」貫くを掲載。





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