
通りがかりの畑の側の小さなイチジクの木、1枚の葉もついていないその木に、幾つか小さなその実がついている。いや生っている。大きいので3センチほど、その半分ほどの大きさもいくつかある。
小春日和に気持ちよく眠っている赤子の頭のようだ。いまごろイチジク、とり残しかとも思ったが生きがいい。イチジクはずいぶん前に店頭から消えている。検索してみた。次のような説明が目に付いた。
「いちじくは秋に熟成する秋果と夏に熟成する夏果があり、年に2回収穫できる果物で、秋果はその年に熟成したもの、夏果は幼果のまま冬を越して翌年夏に熟成したものになるので、秋果のほうが風味がよいといわれており、9月頭からが食べごろになります。」
ということは、この小さなイチジクの実はこれから寒い北風の中で越冬すことになる。土建業者から「あの乳白色の滴は道路のアスファルトをダメにする」と教えられたことがる。小さなイチジクの実は何か不思議な力を備えていることになる。
イチジクは、漢字では「無花果」と書く。花が咲かない果樹ということだ。実際は果実の内側で無数の小さな花が人知れず咲いているという。また、一日一個熟すから、または果実がなってから一ヶ月で熟すから、「一熟」と名がついたともいわれ、わかりやすい。
夏にもう一度その道を通ることがあったら越冬したイチジクの話を聞いてみよう。
(写真:厳しい冬の洗礼を待っているイチジク)