妻と帰宅したら8歳の息子が駆け寄り「ジョンが死んだ」と言い終わらぬうちに涙を流し始めた。
家の入口に、生後すぐ置き去りにされた子犬は、一人息子の弟として家族の一員になった。
それから3年、弟の世話が楽しく、ひとりで何でも出来始めたころ、突然の病死。ショックから泣き声は小さいが、大きくしゃくり上がる肩から息子の心の内が伝わる。こうして成長していくのだ、そう思いながら肩に手を置いた。
脳トレ用の紙細工で犬を作りながら、30年あまり前に貴い経験をして流した息子の涙を思い出していた。
(写真:在りし日のジョン)
2008年12月4日 毎日新聞 「はがき随筆」掲載