『快速と動体視力』は、定番とも言える通学電車での片思いの歌だ。過去にも『脳内パラダイス』『7時12分の初恋』『ウインブルドンに連れて行って』『メロンジュース』などでも歌われていたテーマだ。
その中で『快速と動体視力』の特徴は、片思いの相手が同じ電車に乗っていないということだ。自分が乗っている快速電車から、通過駅のホームに立つ彼女を一瞬見るだけで満足しているのだ。彼女との関係は全く進展しないが、動体視力だけは良くなると自嘲気味に歌う。今までで最も無欲な、つつましい片思いソングだ。
この曲の彼を基準として、これまでの片思いソングの片思い度を測定してみた。
(参考:通学電車の片思いソング)
曲名 |
a接触する時間 |
b相手への理解 |
c相手への要求 |
a×b×c 貪欲度 |
備考 |
快速と動体視力 |
1 |
1 |
1 |
1 |
一瞬見るだけで満足 |
脳内パラダイス |
4 |
2 |
1 |
8 |
日によって相手を変えるDD |
7時12分の初恋 |
3 |
2 |
1 |
6 |
20分見るだけで満足 |
ウインブルドンに連れて行って |
3 |
2 |
5 |
30 |
全英出場と個人レッスンを要求 |
メロンジュース |
3 |
2 |
2 |
12 |
メロンジュースをあげたい |
a接触する時間
1:5秒以内(一瞬)
2:1分以内(すれ違う程度)
3:1時間以内(同じ空間にしばらく滞在)
4:部活や塾など短時間一緒
5:クラスメイトや幼馴染など長時間一緒
b相手への理解
1:容姿もハッキリわからない
2:容姿は認識
3:学校や住所まで認識
4:性格や好みも認識
5:深く理解
c相手への要求
1:姿を見るだけで満足
2:相手に何かしら認知されたい
3:告白したい
4:付き合いたい
5:それ以上の要求
a×b×cを貪欲度係数とした。この値が大きいほど貪欲。小さいほど無欲、ピュアな片思いと言える。
この係数は試作版なので、改良の余地があるかもしれない。
電車内に限定しなければ、通学路上の片思いソングはまだまだある。
『初恋の踏切』は、毎朝踏切で電車の通過待ちの間だけ見ることができる彼女への片思い。『快速と動体視力』と少し似た状況だ。それにしても、『快速と動体視力』の彼女は、どうして毎日快速が通過する時間に必ずホームにいるのだろうか。次の各駅停車に乗るのなら、もう少し遅く来てもいいはずだし、逆にもう少し早ければ1本前の各駅停車に乗っているだろう。わざわざ待ち時間の長い時間に駅に着く習慣にしている理由がわからない。まあそれが創作ならではのリアリティであることを分かりつつ突っ込んでいるのだが。『初恋の踏切』の彼女が毎朝踏切にわざわざ引っ掛っているのも同じ疑問だ。
(参考:電車以外の通学路片思いソング)
曲名 |
a接触する時間 |
b相手への理解 |
c相手への要求 |
a×b×c 貪欲度 |
備考 |
クラスメイト |
3 |
4 |
3 |
36 |
リアルに一緒に帰っている |
偶然の十字路 |
2 |
3 |
2 |
12 |
偶然を装って会いたい |
柊の通学路 |
2 |
3 |
2 |
12 |
待ち伏せして会いたい |
初恋の踏切 |
2 |
2 |
1 |
4 |
すれ違うだけで満足 |
君だけにChu!Chu!Chu! |
3 |
3 |
2 |
18 |
10秒目が合った |
通学に限定しなければ、AKBグループには片思いソングが無尽蔵にある。
通学時に会うだけでなく、クラスメイトや同じ学校の生徒が相手の場合、日常的に近くにいる訳だし、相手のこともよく分かってくる。貪欲度も高くなるのは当然だろう。
(参考:通学路以外の片思いソング)
曲名 |
a接触する時間 |
b相手への理解 |
c相手への要求 |
a×b×c 貪欲度 |
備考 |
ポニーテールとシュシュ |
5 |
4 |
2 |
40 |
同級生と妄想の中で海へ行く |
Everyday、カチューシャ |
5 |
4 |
3 |
60 |
本当に一緒に海に行ったかも? |
ギンガムチェック |
5 |
5 |
3 |
75 |
告白しないが、歩きながら話す |
さよならクロール |
4 |
3 |
2 |
24 |
水泳部の彼と妄想で海へ行く |
初恋バタフライ |
5 |
3 |
1 |
15 |
蝶になって近づきたい |
遠距離ポスター |
0 |
5 |
1 |
0 |
これぞ究極の片思い |
『快速と動体視力』は楽曲としての完成度も高い。ピーナッツさんの詳細な分析はなるほどと思う。
「髪型を変えたんだね」「どんどんと良くなるのは」の部分は、メロディーが歌詞を追い越して行くような感じがして、耳に残る。
そして、エンディングの「ラッシュアワーだって なぜか簡単に」以下の部分は、まさに快速電車が追い越して行くようなスピード感だ。ピーナッツさんが言うように、ライブで合わせるのは難しいかもしれないが、私もぜひ見てみたい。
でもこの曲は、劇場公演なら3曲目か4曲目にぴったりで、非常に盛り上がるはずだ。カップリング曲として、時々大箱のコンサートで1コーラス半歌われるだけという運命で世に出てしまったのは、本当にもったいないと思う。