空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

「エンジニアの頭脳と技術、開拓者精神によって十分実現できるものだと認識」

2021-01-22 18:04:11 | ノート
Yahoo!ニュース 「性的写真を撮れないスマホつくって!」 NPO団体がアップルとグーグルに「要望」準備 2021 1/22(金) 10:33配信(弁護士ドットコム)

スマートフォンで「性的な写真」を撮影できないようにしてほしい――。児童ポルノやリベンジポルノなど、デジタル性暴力に関する相談を受けている団体が、米アップルと米グーグルに対して、こんな内容の要望を出そうと準備している。(ライター・玖保樹鈴)

この要望に先立って、ぱっぷすは昨年12月25日、キャンペーンの広告費をあつめるクラウドファンディングを立ち上げた

 …なるほど直接戦おうというわけではなく、他者の出してくれた浄財でもって広告を打って己の影響力に変換しようというわけですか、という割と嫌げな感想が湧き出てくる。

NPO法人「ポルノ被害と性暴力を考える会」(ぱっぷす)は、圧倒的なシェアを占めるアップルとグーグルに対して、スマホの標準機能として、性的な画像を撮影させない人工知能(AI)を搭載することを要望しようとしている

金尻:アップルやグーグルと話し合いたいと思っても、相手が応じてくれないからです。それがシリコンバレーのIT企業(GAFA)の特徴です。彼らにとっての日本は、あくまで一消費地にしか過ぎないのだと思い知らされました。

私たちの声をアップルとグーグルに届けて、扉を開けてもらうためには、署名を集めるしか手立てがありませんでした。そして、多くの人に知ってもらい、声を届けるためには、広告費や人件費がかかります。どうしても予算が必要です


 ということは、そのいち消費地に過ぎない国で広告をして、さてどれほどの効果が―とは問われよう。そのへんの費用対効果はどんな感じか、と。むしろこれは国際的な連帯でもって持っていく話じゃないか―なにしろ事は児童ポルノに関わる。ならばこの手の話で激烈な反応を引き起こそうとすれば、むしろ米国でこそ、ではなかろうか。

金尻:現在のスマホは、一世代前のノートパソコンと同程度の機能を有しています。機械学習機能を用いれば、技術的には可能です。アップルとグーグルのエンジニアの頭脳と技術、開拓者精神によって十分実現できるものだと認識しています。

 というあたりで―「うん、解散」となってしまうのはやむを得まい。ひと世代前のノートパソコンと同程度の機能程度で、さて『おう、これは児童ポルノ…!』とか『むむぅ、これは今は同意の性行為の撮影だが、どうも女性側に不同意の気配がある、これは撮影しない方が合法的だな…!』『あ、これはダメ。女性が嫌がっているよ!』という判定ができるものかどうか。

 肌色要素が強ければアウト!という基本方針は明らかだろうが、その場合、水泳選手の写真をそもそも撮影できなくなる。体の線が出れば―という判定ならフィギュアスケートはほとんど壊滅するだろう(これは色情報でクリアできるかもしれないが)。

 また、

機械学習機能を用いれば、技術的には可能です

 最終的に「そこらの一般ユースのカメラでは、そもそも肌色要素の強い画像は撮影不可能」という状況に出来る可能性は…あるだろうが、それ、いったいどれくらい未来の話だろう。となるとこちらさんの広告キャンペーンは延々10年以上も続けることが出来そうだ。

 なおこの際の「肌色」は全人種・全民族にわたって行われるわけで―うんまあ…私が担当者なら…逃げるね、正直言って。色がとりわけ薄い白人が白・ベージュあたりのウェディングドレスを着たら全裸判定になるとか、同様に黒人がその肌色に近いぴっちりめのスーツを着たら―とか。集合写真を撮ろうと思ったら、下の段に立ってる人のスーツの色に紛れて上の段の誰かが全裸判定になったり―。

 ―そーゆーのを予め排除できるような能力を備えたAI。
 …ひと世代前のノーパソやパソコンで…できるのかなあ?

 さらにダメっぽいのは

アップルとグーグルのエンジニアの頭脳と技術、開拓者精神によって十分実現できるものだと認識

 とあって。『私、声をあげる人』『私に同意した人。あなた、広告にお金出す人』『アップルやグーグルの技術者。自前の資金と自前の技術と自前の労働で、開拓者精神を発揮して私があげた声の通りに物事を実現する人』というわけで―。

 …グレタ・トゥンベリが許されたのは、「無力で未訓練だが大胆に発言できたこと」にあるわけで―そろそろキッツイぞ。語るべき専門領域のひとつもないのか、という扱いが始まっていくぞ。もう18才にいっただろう、つまり大学教育が始まる歳だ。経営を学んで10年後に儲けたカネで自然保護のプロジェクトを自前で回すとか、自然学の何かを学んでどこかの干潟のカニの新種を発見するとか、その環境へのインパクトをかたるとか―そろそろだんだん、求められる強度が上がっていくぞ。

 ―とまあ。下手に分業が進みすぎ、「私、声上げる係ー!」なんて社会運動が可能になったのは、まあそれはそれでよいことに数えることができるにはできるんですが。下手すると無際限の無責任体制になり兼ねず、そこは注意すると良いと思うな。

アートなど、同意のもとで性的画像記録を撮影する必要な場合は、一眼レフカメラなどで撮影すればよいのではないかと思います

 もちろん流出の危険の存在自体は変わらないわけである。なにしろ近年はその一眼レフカメラとやらの類も基本、デジタルなので。そうではなく、スマホでお手軽♪という状況を変えろ―という主張であることは理解できるが、『技術的には可能なはず! 可能になるはず! だからやって! 私じゃない誰かの予算と私じゃない誰かの技術と私じゃない誰かの労力と私じゃない誰かの精神で!』というのは―タイムスケジュールも何もなしですか、もしかして。それじゃあ…うん…。

 …いやまあ、だからと言って、誰も声をあげられない世界になれというのか!という反論もある。それはそう。計画性も知恵も学歴も資産もない、そんなちっぽけな存在であろうと、将来実現される正義に気付けば、それは声をあげ、社会はそれを深刻に引き受けねばならないだろう。「性奴隷にされた黒人少女の慟哭」なんてどうだ、それはほんとに重大な問いかけだ。

 …んで。NPO法人を立ち上げるほどの計画性・(まあまあ以上の)資金力・学識等々があるのなら。あのう、ちょっと、なんぼなんでも、たしょうは、その。そんな風に思われやしませんか―というあたりが弱いのじゃないか。20年前ならともかくねえ、イマドキ、ここまで価値観のアップデートが進んだあとでは、「うん、だから、専門家ならもうちょっとね?」と一般人に思われかねないのじゃないかねえ。
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8 コメント

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Unknown ()
2021-01-22 22:16:34
何を見てよいか
何を何ものとしてみているのか
何を何ものとしてみるだろうことか
そうした視線の統制、思想の統制、感想の統制、将来の可能性の統制を予めシステム側でしてよいかどうか。
そんな論点を導くことだろう。
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Unknown ()
2021-01-22 22:21:15
孫の写真を撮ろうとしたら、AIが「その角度だと肌色領域がエロ基準に達します。ですのでその画像を記憶することは許されません」と判定してきたりするわけ。
とすると、完全ノーマルな(そして恐らく、それ故に性欲も枯れ果てただろう)爺様・婆様は、かわいい孫の合法的なかわいい姿を記憶にとどめるために、ロリコン変態小児虐待者の視線を理解・想定して、それとは一致しないような角度を適切に選定せねばならぬ。なんだその地獄のような撮影心得。
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Unknown ()
2021-01-22 22:25:33
爺様「どれ、今日はビデオ撮影を試そうか。明日にはもう娘共々、旦那の家に帰ってしまうし、動く孫ともしばらくお別れだしなあ」
AI「撮影開始後15秒目から23秒目までは肌色がエロ基準に達しエロ構図に類似したモーションを感知しましたので削除しました」
爺様「ヲイ」
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Unknown ()
2021-01-22 22:28:22
爺様「何がどうだと」
AI「両手を前に出して同時に振って『おじいちゃーん』とやる、これはAVの冒頭のインタビューに類j」
爺様「それはそれでそうかもしれんがしかし」
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Unknown ()
2021-01-22 22:32:38
…というバカなSSも、実際上はありえないだろう。
こんな対話型検閲システムなんか、まあつくりゃあしないだろう。
…となると、これはTWITTER社がトランプ前大統領(およびそのお仲間と目された人々)をbanしたのとは別個の問題になるのだ。
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Unknown ()
2021-01-22 22:33:30
…まあ、現実的には大量BANだったでしょうから、実際にはAIで削ってて、同様の問題は既に現実化してしまっているでしょうけど。
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Unknown ()
2021-01-23 13:05:53
既に実現はしているとのことですが
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1235342.html
元の学習データはもちろん存在していて―シチュエーションにも対応してしまうわけで。
なので、上掲の例はあり得てしまう。

そうしたデバイスを使う、例えば10歳児であれば、AIに引っかかったことによって性癖を発現していく可能性これあり。
12,14,16歳となれば、友人・カレカノとレジャー先で記念写真を撮ろうとしてAIにダメだしされて(ry
…そうして規制の入らないデバイスへと移行する、なんてことは当然起こるだろうと思われ―
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Unknown ()
2021-01-23 13:07:37
『スマホは危険じゃなくなったよ! 良かったね!』
の背後であれこれの闇が―という未来は見えるが。
GAFA様のような大手は、自分の所はこれで無罪!と確信できるというインセンティブは発生する…かな。
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