選挙公営制度におけるポスター代の高額請求について、愛知県犬山市、三重県桑名市でも岐阜県と同様の問題があることが報道された。
高額請求が目立つこと、低額者との差が不自然であること、印刷業者も高額過ぎることなどを指摘している。しかも、選挙カーの燃料代のことにも切り込んでいる。(7月1日 中日新聞)。
気になるのは、記事の末の学者のコメント(インターネット版ではカットされているので紙面をどうぞ)。
名古屋大学の後房雄教授/「候補者の問題というより、不適切な上限を設定している行政に問題がある。・・・根本的には選挙公営制度の仕組みに問題がある」。
おかしいと思う。制度のいかんにかかわらず、悪用する候補者がまず悪い。どんな制度を作っても、悪用する政治家がいる限り問題は続く。そこを見ずして、問題の解決はないのに。無論、政治家全般に通じることではある。
ところで、これから明らかになっていく、選挙公営における水増し詐欺問題。
詐欺罪に就いての基礎的な理解。
刑法上の詐欺罪(刑法246条)
「刑法246条
1.人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」
刑法上、詐欺罪を構成するためには、
「犯人が欺罔行為によって人を錯誤におとしいれて、その人が錯誤に陥ること」
「錯誤に陥った人が財産の処分行為を行い犯人が財産上の利益を取得したこと」、
という2つの要件が必要なのだそう。
軽易な案件の場合は略式起訴という簡単な裁判になるが、詐欺罪の場合は書類送検されて起訴されれば、通常の事件と同様に必ず大きい法廷にかかるらしい。
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印刷用7月1日新聞 第14報 1ページ PDF版 0.27MB
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● 選挙公営費を高額請求 犬山市議選、候補で3倍差 中日 7月1日
2007年7月1日 08時46分
4月の愛知県犬山市議選で、各候補者から市選挙管理委員会に請求された選挙公営費(ポスター作製、自動車借入、運転手雇用、自動車燃料)の合計に3倍超の開きがあったことが分かった。毎日500キロ近くを走行したことに相当する高額なガソリン代を請求した候補もいた。
ポスター製作費の水増し疑惑など、選挙費用を公費で負担する選挙公営制度の悪用が問題になっているが、市民や識者からは費用の上限の決め方などに疑問の声が上がっている。
犬山市議選には定数22に対し36人が立候補した。中日新聞が入手した資料によると、全候補者のうち、選挙公営費の請求額の最高は60万円、最低は19万円と、その差は3倍を超えた。
ポスターは掲示場の数に当たる166枚の作製費用を市が負担し、上限は38万6780円と定められているが、満額を請求した候補が4人いた。最低は10万円で、この差も4倍近くになった。
ある候補から12万円で製作を請け負った印刷業者は「この金額なら、デザイン費を含めて十分に立派なポスターができる。腕のいいカメラマンに頼んでも、3万から5万円程度上乗せすればできる」と証言。「高額の候補はリーフレットやダイレクトメールの作製費も含めているのでは」と首をかしげる。
選挙カーの燃料費が4万7000円と突出した候補も。ガソリンが1リットル140円、1リットル当たり10キロ走れるとすると、7日間の選挙期間中、毎日480キロ走っていたことになり、犬山-大阪間を往復していた計算になる。
この候補者は「確かに燃費の悪い車だったが、ガソリンスタンドが市に請求したので、把握していなかった」としている。
市議選で同市が負担した選挙公営費は計約1600万円。不自然な公費負担に市内の自営業男性(55)は「金が業者から還流されていたり、ほかに流用されていたとしたら大問題。制度上の問題もあり、上限額を見直す必要もあるのでは」と話している。
選挙公営費 国や地方自治体が負担する選挙運動の費用。すべての候補者に選挙運動上、公正・公平な機会を与えることを目的とする制度。候補者のポスター製作費、選挙カーのレンタル料や燃料費などを、一定の上限額を定めて公費負担する。候補者は業者と有償契約を結び、選挙管理委員会に届け出なければならない。候補者が法定得票数を得れば、当落に関係なく適用される。(中日新聞)
● 桑名市議選、ポスター代9倍の開き 公営制度は「上限高すぎる」 中日 2007年6月29日
選挙費用を公費負担する選挙公営制度で実施された昨年十一月の桑名市議選で、候補者から市選挙管理委員会に請求されたポスター製作費の一枚当たりの金額が、二百二十円から上限ぎりぎりの二千円まで、候補者により九倍の差があったことが分かった。現職市議からは「上限が高額すぎる」との指摘も出ている。
市議選では、二百二カ所のポスター掲示場が設けられ、ポスター製作費の上限は四十万五千十円。一枚当たりの基準限度額は二千五円だった。
市議選に立候補したのは四十六人。中日新聞が情報公開請求して入手した資料によると、公営制度を全く利用しなかった現職市議とポスター代を請求しなかった落選候補一人を除く四十四人のうち、二人が二千円を請求。最低の二百二十・五円は三人で、平均は九百七十三円だった。
二百二十・五円で請求した現職市議の一人は、写真撮影とデザインを別に頼んだため印刷費だけ請求した。
紙は色あせしにくく、裏はシールになっている選挙ポスター用を使用。「デザインや写真撮影代を合わせても七百円ほど。相場を調べ、最低価格で公費負担額を決めたほうがいいのでは」と話す。
一方、二千円をかけた現職市議の一人は「イラストの作成費やデザイン、撮影代すべて込みの値段。二千円以内には収めてほしいと相談したが、価格を積み上げていった結果」と高額になった理由を説明する。
また写真撮影代以外のデザイン料などを含め、一枚三百四十六円だった市議は「以前と違い、今はコンピューターで色直しなども簡単にできて安く仕上がるようになった。二千円というのは時代遅れ」と指摘。「千円ぐらいでいいのでは」と提案している。 (境田未緒)
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