tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

金魚ワンダーランド

2016-08-02 22:51:17 | 日記

<!-- 金魚ワンダーランド -->


室生犀星の「蜜のあわれ」。晩年に近い時期の作品。
この作品の装丁には犀星が飼っていて死んだ金魚が魚拓として使われている。
魚拓を取ったのが、装丁を担当した装幀家の栃折久美子。
「蜜のあわれ」は、金魚が人に変身する話だ。

犀星の分身のような齢七十の“おじさま”と赤い三年子の金魚“あたい”の会話の構成。
この金魚はあどけない幼児のようかと思えば、蓮っ葉な娼婦のようでもあり、とても魅力的。
“あたい”は、普段は庭の池で泳いでいるが、気が向くと20歳くらいの美しい女性の姿に変身して外出したりする。普通の人間には彼女の正体が分からない。“あたい”は飼い主の老作家を“おじさま”と呼び、取りとめもないお喋りを楽しむ。「おじさまの愛人になってあげるから、月々のお手当てとして5万円ちょうだい」と駆け引きしてみたり、なかなか小悪魔的なところもある。
ただ、ずっと人間に変身している訳ではなく、金魚の姿に戻ってちょろちょろと泳ぎながら、おじさまのお腹や背中の上をくすぐって遊んだりもする。
終始漂う濃厚な死の影がエロティックさと結びつき、美しく繊細な幻想世界へいざなう。

金魚を見ていてそんなことを思い出した夏の日の夕暮れ時。
栃折久美子が「蜜のあわれ」を制作したのは30歳の頃で、この作品の後、1962年に犀星は亡くなる。


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