tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

誇り高き老人

2019-02-17 11:47:26 | 人々



このゲルの住人のおじいさんは、何万頭もの家畜が凍死した2010年のゾドで30頭ものヤギやヒツジを失い、残った70頭余りのヤギやヒツジを連れて西の果てからウランバートル近郊へ移ってきた。こちらの方が元居た場所よりも気候が安定していて、家畜たちも楽だ。
ただ、この地に移って一昨年、15頭いた馬のうち13頭が盗まれてしまった。
昔は、遊牧民でこんなことをする奴はいなかった、とおじいちゃんの顔が曇る。手塩に育てたかわいい馬たち。馬肉として売られてしまったのだろう。ゾドの牙は遊牧民の魂さえも変えてしまったのだろうか。

ゾドの周期は約10年。前回が2010年だったから、来年2020年にまたその牙をむくかもしれない。今年2019年の春も油断できないと、おじいちゃんは言う。

ウランバートルの近くへやってきたのは、気候のせいだけじゃない。政府の仕事を少しだけ請け負っている。いわば公務員。おじいちゃんはこのドキュメント写真にいなくてはならない存在なのだが、そうした事情から名前を明かすことは遠慮。

彼の3人の娘たちは、ウランバートルに嫁いでいる。ツァガンサル(白い月)で孫の顔を見るのが何よりも楽しみだ。