この本を最後まで読めそうもないと途中で思った。それほど内容はとても残酷で信じられないほどの虐待方法が書かれている。気になって、ネットで”DAVE PELZER Lies"をキーワードにして調べてみた。どうやら、この作品の大部分はフィクションであり、作者のデイブは本国アメリカにおいて『プロの虐待家』(虐待問題を利用して利益を得る人)として批判を受けているようである。
あまりにもショッキングな内容に、真偽のほどをどうしても確かめずにはいられないが、それでも、小説として非常に読みごたえがあり、逆境に立たされながらも必死に生きようとする少年の姿に感動をするとともに、虐待問題について深く考えさせられる本だ。
幼少のデイブは、暴力的な虐待に加えほとんど食事も取らせてもらえなくなる。唯一自分を助けてくれていた父親も、母親の執拗な攻撃に根負けし、家に帰ってくる回数が減ってくる。家庭での虐待は日を追う毎にエスカレートする。また、食事を与えられていないデイブは空腹を満たすため外でごみをあさったり、盗みをはたらき、そのため学校でもいじめを受ける。
さらに、彼の年少期は絶望的な状況で終わる。両親が離婚してしまうのだ。
「ごめんよ」と小声であやまる父親。「父さんにかばってもらえなくなって残念ねえ」と他人事のように言う母親。
“せめて母さんが情けをかけて、さっさと殺してくれますように”そう願うしかなかった彼の年少期。
その後、見かねた学校や病院が動き出し、母親から親権を剥奪させるところから第2部「青春編」が始まる。彼の里親やソーシャルワーカーたちは様々迷惑をこうむるも、忍耐強く彼を見守り自立を助けてゆく。
「完結編」において、自立を果たした彼はその後に児童虐待を防止するためのシステム作りに活躍し、全米、全世界的な称賛を受けることになる。
「自分を変えられるのは自分だけだ。どんな時も希望を捨てずに今を生きよう」
カリフォルニア州史上最悪の児童虐待を受けた彼の体験の告白は、母親に対してさえ、過去のすべてを許して未来を生き抜くための愛とやさしさに満ちた言葉で終わっている。
人は本当に自分以外の人を許すことができるのかもしれない。許すことで、自身がさらに成長することは確かなことだろう。事実、彼は母親に感謝さえしている。あの虐待が彼に人生を、愛を教えてくれたのだと。人間にはまだ可能性がある。母親を嫌いだというのは簡単だ。誰にでもできる。そうして、児童虐待の家庭をつくっていく。現実の問題として、母親を許すことができる人間は、一体何人いるのだろう。すごい小説だ。
このドキュメンタリーをウソとするのはNYタイムズなどの記事なのだが、母方の祖母と兄弟の一人が虐待はなかったと証言していること、それに 母の目の色や髪の色も覚えていない少年が、こと虐待に関して細密に記憶しているがおかしいとしているようだ。ただ、幼い子にとって死ぬほどの恐怖を味わったのは間違いないだろうし、虐待を見かねた学校の看護婦が動いて保護の対象となったのは紛れもない事実ッス。恐らく、彼は親を苛つかせる面のある子供だったのかもしれず、里親のところでもそれが原因で問題を起こしてはいる。
重要な事は、だれにでも心に暗くドロドロした部分がある。これに他の人を巻き込んで地獄を見せることがないように、自分自身を強く制するほんの少しの勇気を持つ事すね。これができないやつが意外と多いんだなあ。それから、里親で育った子供に対し偏見を無くすこと。子は親を選べないスからね。