パスタを茹でるときに塩を入れる理由としては、いろいろな説があるが、実際の効果はよく理解されていない。某巨大掲示板によれば、その効果は、主に以下の3つに分類されるようである。
・パスタに塩味をつける。
・塩を入れてグルテンのコシを強くする。 ・沸点上昇を利用して短時間で茹でる。
そこで、気になって調べてみたのだが、水のモル沸点上昇は約0.5である。食塩は強電解質なので、0.5モル溶かした場合に0.5度上がることになる。食塩の分子量は約58なので、1リットルに29グラム溶かすと沸点が0.5度上がる計算になる。つまり、3%という海水に匹敵する濃度にもかかわらず、わずか0.5度しか水の沸点は上昇しない。許容できる食塩量で起こる沸点上昇などたかが知れているということだ。つまり、塩を入れることの主目的はおそらく沸点上昇ではないのだろう。
一方、和食に目を向けると、たんぱく質成分のより少ない薄力粉(小麦粉)を使ううどんでは、麺自体に食塩を入れる。その効果としては、生地を締めることでベタツキを抑え加水量が増やせること、これによって生地のグルテンの形成展開(捏ね)が容易になり、茹で時間も短くなること、食味食感が改善されること等とされる。 また、同じ和食の麺類でもそばの場合は、麺に食塩を混ぜ込むことはしない。
以上のことから考え合わせると、パスタを茹でるときに塩を入れるのは、単にパスタに下味を付けるためと考えても良さそうである。したがって、麺自体の塩味をさほど必要としないパスタ料理の場合は、塩を入れる必要はなかろう。
結論: パスタを短時間でゆでるのなら、圧力鍋でも使えば?
参考文献
「こつ」の科学 杉田浩一著 柴田書店
調理とサイエンス 品川弘子他著 学文社
化学・意表を突かれる身近な疑問 日本化学会編 講談社
化学精義 竹林保次著 培風館
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