寒牡丹と言えば石光寺ですが、実はここからさほど遠くない場所にもう一箇所、牡丹の寺と呼ばれる寺院があります。
二上山(にじょうざん、ふたかみやま)の麓に位置し、開基は聖徳太子の異母弟・麻呂古王とされる「二上山:當麻寺(たいまでら)」。西方極楽浄土の様子を表した「当麻曼荼羅」を本尊とし、曼荼羅にまつわる中将姫伝説で知られています。
境内には数々の重要文化財級の建物を擁し、規模の大きさでは関西でも屈指の名刹。参道石段の突き当たりに建つ仁王門には、過ぎてきた歴史をじっと見据えてきた二体の仁王が阿吽の呼吸で立っています。
境内は広く、私たちの他に人影は無し。とても静かな冬景色の下に重要文化財である奥院楼門、その先にも内側にもやはり人影は無く、ひたすらに静か。
大和の国の西に位置にし、二つの頂上をもつ二上山。夕陽が二つの峰の中間に沈むことから、西方極楽浄土の入口、死者の魂がおもむく先であると考えられてきた二上山。
その神体山を背景に建つ重要文化財の奥院本堂の欄間には、楽を奏で、天空を舞う艶やかな天女の姿。
歩を進めるごとに出会う御仏の姿・・御仏を慰める御塔の数々・・
春になったらこの木はどんな風に装いをこらすのだろう?花の下に埋もれて眠りたいと詠った西行法師も、この桜を見たら目を細めたのではなかろうか・・
どこもかしこも仏の座す場に相応しく静謐で、何もかもが研ぎ澄まされて、そのくせ心地よい柔らかさ。
・・・・・と、ここまで書き進めて思い出したのですが(笑)、私はお寺に参拝に来たのではなく、當麻寺の寒牡丹を見に来たのです。あ!もちろん参拝はいたしました。でもほら、本堂の傍らに・・
西方極楽浄土を模した庭園にも、ほんのりと優しい藁苞が見えています。
広い境内のそこかしこに散らばる藁苞を探し、綺麗に咲く牡丹に見とれていましたが・・・・、どうも石光寺で見た寒牡丹とは様子が違っています。花はどれも美しく匂うばかりですが、あの寒さに耐える独特の凛とした佇まいが感じられない。
何より、花を咲かせる為に自らそぎ落とす筈の葉が、青々と花を包んでいるではないですか。
そうか!!ここのは寒牡丹ではなくて冬牡丹だったのか・・・・こういう書き方をしたからと言って、決して冬牡丹がダメと言うのではないし、寒牡丹に比べて見劣りするわけでもありません。実際に画像で見ても分るように、こんなにもあでやかで美しく、まさに百花の王たる姿です。
けれども、厳しい冬に耐えて咲く寒牡丹を・・と思っていた為、そうではないという気持ちがついつい勝ってしまいました。よく調べれば「こもを被った愛らしい冬ボタン」の記載もあったのに・・・・・
今思えば、時間に急かされてじっくりと境内の諸々を拝観できなかった事が惜しまれる。これほどの名刹に訪れておきながら・・ああ、もう何十回繰り返したか分からない、毎度おなじみの後悔 (>_< )
訪問日:2007年12月24日