tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

通貨安で喜ぶ国、苦しむ国

2015年12月22日 10時34分18秒 | 経済
通貨安で喜ぶ国、苦しむ国
 アメリカの金融引き締めで、世界中に流出していたドルがアメリカに還流し、新興国などで資金不足が起こり、通貨価値が下落するといった連鎖反応で、ブラジルのレアルやアルゼンチンのペソなどの価格が下落し、通貨価値が下落する国々の経済が心配されています。

 もちろんアメリカへのドル還流の影響は南米に限りません。トルコ、インド、インドネシアなどなど通貨下落が見られるようで、世界の新興国に共通です。
 こうした状況は、国際投機筋の動きによって増幅されるので、1997年のアジア通貨危機を連想させ、危機感を募らせる面もあるようです。

 アメリカ内部にも、金利政策変更は慎重にという意見もあるようで、FRBもアメリカ自体の経済状態も見つつ慎重の態度は崩していないようです。
 金融の正常化はいつかは必要なのですから、アメリカの今回の政策で、新興国経済、ひいては世界経済が混乱するようなことは、金融投機筋の動きも含め、避けたいところです。

 ところで、日本経済の例で考えてみますと、日銀の政策変更で、1ドルが80円から120円になるという円の下落で、日本経済は息を吹き返し、何とか成長軌道に乗るところに漕ぎつけたという実績があります。円安は神風のようなものでした。

 ところが、多くの新興国の場合は、通貨安で経済が打撃を受けるという見方が一般的です。この違いはなぜなのでしょうか。

 新興国でも国際収支が経常赤字の国と経常黒字の国があります。為替相場はマーケットで決まりますから、たいていは、経常赤字の国のほうが下落幅は大きくなります。
 通貨安では輸入は輸入インフレを呼び、輸出は競争力強化という関係がありますから、輸出のほうが多く経常黒字の国のほうが有利だからということでしょう。

 通貨安が輸出産業に有利であるということは、その国が加工度が高い輸出競争力がある(通貨が安くなればさらに競争力が付く)ような輸出産業を多く持っていれば大きな力になります。
 日本が円安で息を吹き返し、ドイツがユーロ安で輸出を伸ばすといった形です。

 しかし、耐久消費財や消費物資や必須の原材料などを輸入に頼る国は、輸入インフレに直撃され、競争力を持つ輸出産業がなければ、通貨安は打撃の方が大きくなってしまします。 
 先進国が通貨安に強く、新興国が通貨安に弱いといった今日の状態の原因はこんなところにあるようです。

 さらに、通貨安による輸入インフレを、賃金上昇などで、国内インフレに転嫁していまいますと、国内コストが上がって、輸出競争力の強化の効果が消えてしまいますので(インフレ体質の南米諸国に多い)通貨安はダメージだけになるようです。