介護問題の本質;生産性の視点から
安倍政権の「一億層活躍社会」の中で「介護離職ゼロ」という目標が掲げられています。何か違和感を感じるのは私だけでしょうか。
身内の介護のために離職する、つまり職を離れると、もう活躍していないということになるようです。活躍とはいったい何でしょうか。
確かに家事労働はGDPになりません。介護をしても子育てをしても自分でやる限りただです。家事はお手伝いさんを頼み、子育ては保育所、介護は専門機関に任せ、自分は外で働けば、それぞれ給料が払われ、GDPが増えます。活躍というのは、GDPにカウントされるということのようです。
それはそれとして、勿論、介護問題を取り上げてくれるのは結構なことです。介護は特に問題という意見も少なくないし、多くの識者が「介護の仕事は大変なのに」、「介護士の待遇が低いから」と介護職自体の離職の多い原因、介護の人材不足を指摘しています。その通りでしょう。
問題は介護だけを目玉的に取り上げていて「それでいいのか」という問題です。
というのは、こうしたことは、介護だけでなく、医療・看護でも、保育でも、家事手伝いでも、外食産業でも、さらに広げれば、理髪やタクシー、マッサージや整体などにも、つまり、1対1に近い対個人サービスに共通の問題なのです。
問題の本質は、1対1に近い対個人サービスは「生産性が上がらない」ということにあります。賃金は生産性向上の結果上がるわけですから、その原則を適用すれば、対個人サービスに従事する人の賃金は上がらないことになります。
しかしこうした対個人サービスに従事する人の所得も、当然その国の経済・社会全体の生産性向上に合わせて上がらなければなりません。
市場メカニズムを入れれば解決するという意見もあります。しかし、社会保障分野の多くの問題は、市場メカニズムだけでは対応できないのです。
市場メカニズムに任せれば、今のマネーマーケットのように必然的に格差が拡大します。これを阻止し、格差の少ない社会を実現し、資本主義(名前を変えたほう良い)の健全な発展を図るのには、政府の手による「適切」な所得など富の再分配システムが必須です。
資本主義が生き延びたのは、社会保障を取り入れたからだとかつて書きました。
経済社会安定のためには、生産性の上がり易い部分の成果の一部を生産性の上がりにくい部分に振り替えて配分し、格差の少ない社会を安定的に維持することが必要になるのです。
医療では、生産性の上がりやすい医薬の部分の単価を引き下げ、生産性の上げにくい医療の部分の単価を上げましたが、配分の合理化の例でしょう。
代々の政権が「税と社会保障」の一体改革といいます。必要なのはまさに「一体改革」の構想で、今度は介護、次は保育、こちらは医療、あちらは授業料・・・、と個別のつぎはぎ対策に追われて、モグラ叩きを繰り返さないことのような気がしています。
安倍政権の「一億層活躍社会」の中で「介護離職ゼロ」という目標が掲げられています。何か違和感を感じるのは私だけでしょうか。
身内の介護のために離職する、つまり職を離れると、もう活躍していないということになるようです。活躍とはいったい何でしょうか。
確かに家事労働はGDPになりません。介護をしても子育てをしても自分でやる限りただです。家事はお手伝いさんを頼み、子育ては保育所、介護は専門機関に任せ、自分は外で働けば、それぞれ給料が払われ、GDPが増えます。活躍というのは、GDPにカウントされるということのようです。
それはそれとして、勿論、介護問題を取り上げてくれるのは結構なことです。介護は特に問題という意見も少なくないし、多くの識者が「介護の仕事は大変なのに」、「介護士の待遇が低いから」と介護職自体の離職の多い原因、介護の人材不足を指摘しています。その通りでしょう。
問題は介護だけを目玉的に取り上げていて「それでいいのか」という問題です。
というのは、こうしたことは、介護だけでなく、医療・看護でも、保育でも、家事手伝いでも、外食産業でも、さらに広げれば、理髪やタクシー、マッサージや整体などにも、つまり、1対1に近い対個人サービスに共通の問題なのです。
問題の本質は、1対1に近い対個人サービスは「生産性が上がらない」ということにあります。賃金は生産性向上の結果上がるわけですから、その原則を適用すれば、対個人サービスに従事する人の賃金は上がらないことになります。
しかしこうした対個人サービスに従事する人の所得も、当然その国の経済・社会全体の生産性向上に合わせて上がらなければなりません。
市場メカニズムを入れれば解決するという意見もあります。しかし、社会保障分野の多くの問題は、市場メカニズムだけでは対応できないのです。
市場メカニズムに任せれば、今のマネーマーケットのように必然的に格差が拡大します。これを阻止し、格差の少ない社会を実現し、資本主義(名前を変えたほう良い)の健全な発展を図るのには、政府の手による「適切」な所得など富の再分配システムが必須です。
資本主義が生き延びたのは、社会保障を取り入れたからだとかつて書きました。
経済社会安定のためには、生産性の上がり易い部分の成果の一部を生産性の上がりにくい部分に振り替えて配分し、格差の少ない社会を安定的に維持することが必要になるのです。
医療では、生産性の上がりやすい医薬の部分の単価を引き下げ、生産性の上げにくい医療の部分の単価を上げましたが、配分の合理化の例でしょう。
代々の政権が「税と社会保障」の一体改革といいます。必要なのはまさに「一体改革」の構想で、今度は介護、次は保育、こちらは医療、あちらは授業料・・・、と個別のつぎはぎ対策に追われて、モグラ叩きを繰り返さないことのような気がしています。