tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

出口戦略への条件はそろっているのか?

2020年05月10日 20時28分30秒 | 政治
出口戦略への条件はそろっているのか?
 コロナ対策先進国がそろそろ所謂出口戦略に進む動きを見せる中で日本政府も日本なりの出口戦略を言い始めています。

 出口戦略にも大きく2種類があるようで、一つは感染者が減り、医療体制に余裕が出てきて来たので、徐々に規制を緩めるという考え方、この場合は、もし感染増が起きればすぐに引き締めに転じるという条件付きです。
 もう一つは、感染に関わる全体的な医科学的なデータを得て、そこから今後の感染対策の可能性を推定し、それを根拠に段階的に規制を緩めるという考え方のようです。

 日本の場合は前者に似ていますが、PCR検査体制も、ICUや高度の医療機器もそれほど余裕が出来たとは思われませんが「よそがやるからウチでも」という事でしょうか。
政府説明は、外出禁止などの徹底で、感染者数も、調査した中での感染率も減って来たからという事のようですから、外せば元に戻ると考えるのが普通でしょう。当然出口への確信はなく、国会でも筋違い答弁が目立ちます。

 中国は観光地などの立て看板のQRコードをマホで読み取ると自分の感染状況が解るようになっていて、それで対応が決まるという現地の状況がTVで放映されていましたが、さすが一党独裁の国です。個人情報は確り管理されているようです。

 アメリカは州や市にもよるのでしょうが、ロスでは全員にPDR検査、ニューヨークでは抗体検査キットを各戸に配り、抗体があれば多分感染しないだろうという前提で、制限の緩和、経済活動の再開を急いでいるようです。

 日本の場合、PCR検査体制も全く不十分で、検査を受けていない人が国民の大部分でしょうし、その人たちは(私もそうですが)感染していないのか、感染したが、無症状で済んでいるのか(抗体が出来ているのか)、も解らず、つまり、新型コロナ感染の調査からは除外されているのです。

 現状は、外出禁止令で感染が小康状態という事ですから、どう考えても、規制が緩められたら心配というのは当然でしょう。出口戦略は、あくまで手さぐり、腰だめで、「緩和してみよう、ダメだったらすぐ元に戻す、上手くいったらラッキー」という感じです。

こうなると、私のような年金生活者はまだいいのですが、規制緩和で出勤指示が出た企業の従業員などは大変です。マスクと手洗いだけで、新型コロナウィルスに立ち向かうわけで、ラッシュアワーなど避けられないケースも多いでしょう。

 現実に、国民の大部分は、心して規制を守り、運も良く新型コロナウィルスとは無縁で済んでいた、という事でしょうから、規制が緩められれば、抗体も持たず、新型コロナ流行初期の社会にマスクと手洗いだけの防備で改めて出ていくことになるわけです。

 もう少し科学的、病理学的な正式な統計的なデータを把握して、コロナ先進国のように、かかりつけ医や家庭でキットを活用、PCRや抗体の有無も容易に判定でき、客観的な根拠があって、初めて腰だめでない「出口戦略」の策定もが可能になるのでしょう。

 第2次補正予算の検討が始まっているようですが、第2次補正予算では、遅れに遅れている科学的データを把握出来る体制を早急に >国家的事業として構築するための、人材と研究開発設備への徹底した「予算投入」を行うことが、遅蒔きながら最大のコロナ対策だと、政治家各位に気付いてほしいものです。

アメリカの失業率急騰に思う

2020年05月10日 20時28分30秒 | 文化社会
アメリカの失業率急騰に思う
 すでにニュースで報道されていますようにアメリカの失業率は4月時点で、14.7%という1929年に始まった世界大恐慌以来の水準になったようです。大恐慌の時は25%ぐらいまで行ったのでしょうか。
 ついこの間の2月には、3.5%で史上最低を誇っていたのですが、アメリカの雇用制度の下ではこう急変しても当然という事のようです。
 
 それに引き換え日本は、統計の発表がひと月遅いですが3月で2.5%、2月の2.4%から0.1ポイントの上昇です。4月にはもう少し増えるでしょうが、1%プラスなどとなれば大変でしょう。

 なぜアメリカはそんなことになるのででしょうか。
 もともとアメリカの雇用の原則は、hire and fire などと言いますが、企業は仕事があるから採用し、仕事がなくなれば解雇するという事になっているのです。
 これは企業というものの考え方の相違から来ているもので、アメリカの企業というのは職務(job)の集合体で、職務があるから人を採用するという考え方です。したがって賃金も職務給(job wage)で、当然仕事がなくなれば解雇(layoff)となるわけです。

 日本は、新卒定期採用にみられますように、仕事は決めずに、先ずは良い人を採用して、将来、いい仕事をしてもらおうという人間を重視した作用ですから、コロナで仕事が減っても、良い人は残しておかないと将来困るだろうという事で解雇は、よほどの状態でないとしません。
 欧米の雇用は仕事中心、日本は人間中心といわれる所以です。

 日本でも、アメリカ流の採用の従業員もいます、所謂「非正規従業員」です。確かに今回の新型コロナで、非正規従業員は、アメリカ並みに大変です。
 このブログでは繰り返し書いていますが、戦後日本の経営者は、雇用の身分制度を廃して、全員「社員」として雇用する慣行を作ってきました。ところが、平成の長期の円高不況で、背に腹は代えられず、低い賃金で働いてくれる非正規従業員を増やすことになりました。
 
 景気が回復して、増加した非正規従業員を、出来るだけ正社員に転換しようという動きもありますが、企業によっては、賃金水準の低い方いいといった安易な考え方で、非正規従業員依存が広がっています。

 ところで、本当の問題は、政府の「働き方改革」ですが、非正規労働者の賃金を正規並みにという「同一労働・同一賃金」をいうのと一緒に、アメリカ流の仕事中心の雇用制度にしようと言っています。「新卒定期採用などは止めて、必要に応じて採用する。賃金は職務給が望ましい」という事ですから、当然雇用は不安定になり、正規従業員でも仕事がなくなれば、「明日から来なくていい」という事になるのでしょう。正社員も雇用制度は非正規と同様になる雇用の流動化が望ましいというのです。

 今回のアメリカの失業率の急上昇は、はしなくも、仕事中心の雇用制度の問題点をさらけ出してくれたと言うことです。
 日本の経営方式の基本になっていた、雇用の安定が一番大事という考え方、経営が苦しければ賃金を下げてでも雇用は守るという「日本的経営の理念」が、今回のような非常事態に「社会の安定を守る」大きな役割を果たすことをも一度よく考えて「働き方改革」の今後を洞察する先見性が必要なようです。

 <追記>アメリカがコロナの死者が増える中でも、経済活動の再開を急ぐ背景には、明らかに高失業率があります。今、7人に1人が失業です。社会不安が起きる可能性、争乱や殺人事件、行倒れ、自殺などの増加の方を危惧するといった意識も強いという見方もあるようです。改めて、雇用の安定は社会の安定の基盤なのです。