過日「適正賃金決定の重要性」を書きました。ならば「適正賃金とは何か」というテーマが当然生まれてきます。
あの日の指摘は、これまでの賃金決定が低過ぎたのではないかということになっていますが、その場合も「何が適正か?」という疑問があるわけでその種の示唆も頂きました。
これは正に大事なことなので、この際、少しきちんと検討しておくべきではないかと思っています。
適正賃金には企業内の賃金の体系・制度、あるいは、個人別賃金が適正かどうかといった場合もありますが、ここでは賃金総額あるいは平均賃金が適正かという、厳密に言えば「人件費決定」の意味である事を先ずお断りしておきたいと思います。
民主主義の国では、労働組合が認められており、賃金決定は労使の交渉に任せられているというのが基本でしょう。労働組合の組織は産業ベルや職種別、日本では企業別など国によって違いますが、高い賃金を望む労働組合と利益を増やしたい経営者/経営者団体が創出した付加価値を賃金と利益に分けるのが賃金決定(労働分配率の決定)という事になります。
一般的に考えますと、賃金を上げたい労働組合と賃金を抑えて利益を増やしたい経営側との主張の「真理は中間にあり」でその真理(適正賃金)は、労使が合意した(妥協した)ところだろうという理屈です。
此処では解り易く日本の場合で考えますが、こうした付加価値をめぐる分配論争、労使交渉は、身近な企業レベルの論争と、大きく国全体の在り方の2つの段階で論じられることになるのが毎年の春闘です。
具体的に言えば、経団連の「経営労働委員会報告」と「連合白書」が代表する国レベルの論争、企業の経営資料を使った論争は企業別の賃金交渉という事ですが、このマクロとミクロの分配論争、労使交渉は密接に絡まり合っているというのが現実です。
実はこのブログではもうだいぶ以前2017年2月ですが、「企業における人件費支払能力測定の実務シリーズ」という事で数回にわたって、企業別の労使交渉の参考資料として、労使が共に納得できる個別企業の「人件費支払い能力の限度」についての検討をやっています。
此処ではそれを、「日本株式会社」に応用するような形で、日本株式会社(GDP)がどのくらいの賃金(雇用者報酬)を払うのが良いかという形で「適正賃金」の在り方を考えるというのはどうかなと思っています。
但し、企業レベルの場合は、付加価値の源になる売上高は顧客が決めてくれるのですが、GDPの場合は、その大きさは殆ど日本の企業と家計が使う金によって決まるわけで(輸出やインバウンドの購入もありますが)、企業と家計が懐に入った金をどうするかという自己循環が極めて重要になります。この点も確り考えないといけないように思うところです。
さてどんなことになるか、順次検討していってみたいと思っています。