今年は日本経済の舵取りの難しい年でしょう。先日「マネー経済から実体経済へ着実な転換を」と書きましたが、日本では日銀がゼロ金利脱出へ動かなければならない事は確実でしょう。
一方、アメリカではインフレ抑制で引き上げた政策金利の引き下げが必要で、すでにFRBから年内に3回の引き下げの方針がプロットされています(多分各回0.25%)。
日本の政策変更の条件は、春闘賃上げで賃金上昇が物価上昇を上回り、個人消費が活発化し、「賃金インフレ」が2%に近づくという事でしょう。
アメリカの場合は、高金利が景気過熱を抑制し、賃金インフレが2%以下に下がってくることでしょう。
2%程度の「自家製インフレ」(主に賃金インフレ)が「活発で健全」な経済、低迷や過熱でない経済の「体温」として適切な目印というのは日米共通の認識のようです。
という事で、日本で最も関心の高い今春闘の賃上げに関する情報では今春闘の平均要求(中間集計)は5.85%と30年ぶりの高さで価格転嫁促進の雰囲気などもあり、昨年の3.6%を上回る賃上げ率が期待されています。
そうした中で、昨日、政府や日銀関係者の名前などにも触れながら、3月、4月の日銀の政策決定会合で、ゼロ金利見直しの動きがあるかといった情報が流れ、昨日、株価は寄りの200円高から急落、引けは500円の下げでした。当然、日米金利差縮小の予想から円レートは147円まで円高が進み、今日もマネー市場は乱高下のようです。
恐らくこれからは、こうした情報がリークから公表まで、いろいろな形で出て来るでしょう。そのたびにマネーマーケットは乱高下でしょうか。
政府、日銀に必要なことは実体経済に先立って動いているマネーマーケットを如何に適切な情報発信によって適切に活用、実体経済の順調な始動につなげることでしょう。
日米の関係は複雑です、基本的には、米国の金利引き下げはドル安、ダウの上昇を齎し、日本のゼロ金利脱出は円高、日経平均下落につながるでしょう。
しかし一方では日本の株式市場はアメリカの動きを写すというのが良く知られた現象です。この2つの動きは相矛盾する事が出て来そうです。
春闘の効果で日本経済の活動の活発化があれば、それは日本のマネーマーケットの活況に繋がるでしょう。そうした好ましい変化を日本の政策金利の引き上げに反映させれば、為替レートやマネーマーケットの動きは当然マイナスの影響を受けるでしょう。
しかし何と言っても、こうした動きは、30年の長きにわたり異常な形で運営されてきた日本経済の正常化のための必須プロセスなのです。やり抜かなければならない事でしょう。
いま日本政府は貯蓄から投資へという政策を取り。マネーマーケットの活用で国民の財産や、公的年金の基金などにも増やそうとしていますが、逆風の可能性もあるでしょう。
政府の奨励で買ったNISAの証券の価格はどう動くでしょうか、庶民にとっても、これは難しい問題です。政府、日銀がそれに能く応えてくれることを願うところです。