tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「適正賃金」(第2回)、「適正」の判断基準は?

2024年03月27日 21時02分41秒 | 経済

賃金は企業や国民経済が生み出した付加価値、の中から支払われます。経済学でいえば付加価値の生産要素は人間と資本ですから、付加価値は人件費と資本費に分配されます。ここで賃金と言っているのは厳密には社会保険料や教育訓練費なども含めた人件費で、資本費は利益(営業余剰)です。

付加価値の中の何%を人件費支払うかは「労働分配率」ですから、適正賃金の判断は「適正労働分配率」の判断と同じことです。そして残りは資本費(利益)ですから資本分配率も同時に適正でなければならないのです。

労働分配率が低いという事は人材の確保が困難になることを意味します。資本分配率が低いという事は、設備の高度化や技術開発力の低下を意味します。

与えられた付加価値の中で人材の確保と企業設備の高度化にどう配分するかというのが企業や国の成長、発展のための基本的課題なのです。

ここまで考えてきますとお解りのように、適正賃金と適正利益は両立しなければならないもので、何のために両立させるのかと言えば、それは企業や国を成長発展させようとするからだという事になります。

企業や国がどうなってもいいという事であれば「適正賃金」も「適正利益」も存在しないのです。

という事で「適正賃金」かどうかを判断する基準は企業や経済の発展に最適な形の分配という事になるのです。

ここで考えなければならないのは、企業も国も、人間と資本の組み合わせで経済成長していくのですが、ここで議論している適正賃金や適正利益は「必要条件」ではありますが、決して十分条件ではないという事です。

ですから日本の経済を成長させえるには、適正賃金、適正利益といった基礎条件、いわば舞台装置をきちんとする事が必要で、その上に、その舞台装置を上手に使うという人間の能力や意欲の向上(いわゆる熟練や動機づけなど)の役割も極めて重要という事も付け加えておきたいと思います。

これは人員や設備は同じでも、生産性は同じではないという職場の現実でもあります。通常、生産性は人数や資本装備率(金額)で測定しますが全要素生産性は人間の態度や意思に大きく影響されます。そこではリーダーの能力が大きな役割を果たします。

経済成長というのは国民一人ひとりの生産性が高まり、その結果、国民一人あたりのGDPが増え生活が豊かで快適なるという事ですが日本の場合を考えてみますと、ジャパンアズナンバーワンと言われた頃の1人当たりGDPは世界ランキングで5位前後だったと記憶しますが、2022年は32位だそいうです(IMF統計)。

まあよく落ちたものだと思いますが、この原因というのは、バブル期、バブル崩壊期、円高進行期、円安進行期のそれぞれで、成長目標の誤算、資本と労働の分配の歪み、加えてリーダ采配の不適切が重なった結果という事が出来るでしょう。