向顕著春闘はいよいよ単産の要求が揃い始めましたが、今年は昨年の要求を超え、要求の積極化が進んできている傾向が顕著で、今後の展開が注目されます。
象徴的なのは、この6月に、経団連会長に就任する予定の筒井氏は日本生命の会長で、その日本生命が今春闘では営業職員の賃金の引き上げを6%(連合要求は定昇込み5%以上)と発表しているといった状況もあるのでしょう。
昨日は、電機連合が要求書を提出、率は明示されていませんが「ベースアップ」で1万7千円と、昨年の要求1万3千を大幅に上回るものになっています。
その他、すでに報道されている単産レベルなどの要求では、
基幹労連が「ベースアップ」で1万5千円、昨年は1万3千円と昨年プラス2千円の要求で、連合会長の出身元のUAゼンセンが6%以上、中小企業は7%以上という方針で、さらに、賃金体系の整っていない中小を念頭に実額要求として月例給ベースで1万7千円要求を決定したとのことです。
自動車関連では、要求の額・率を表示しない企業もありましが、単組のレベルでは2万円を越える要求の所もあるようです。
エッセンシャルワーカーの中でもUAゼンセンに加盟する介護クラフトユニオンが1万8千円以上の要求を掲げています。
こうした要求基準の上昇傾向の背後には、先春闘の33年ぶりと言われた大幅賃上げでも、実質賃金はボーナス月を除けば対前年比マイナスというのが実態で、「物価を追い越す賃上げ」と企業労使は勿論政府もその必要を認めているという現実があります。
長期不況の中で、歪みに歪んだ雇用構造(非正規従業員の増大)、大企業・中小企業の格差拡大、円高の中で生じた輸入部門と輸出部門の収益格差、取り残されるエッセンシャルワーカーの処遇といった諸課題の解決を日本社会全体が要請しているのでしょう。
こうした中で、日本人の主食であるコメの異常な値上がりが物価上昇に拍車をかけるという問題も要求基準上昇の大きな要因でしょう。
平年作の作柄に関わらず、コメは農協の買い入れ価格も企業物価も消費者物価も数十%の値上がりで、コメが仕入れられないのに、備蓄米放出は遅々、多くの国民はもうコメの値段は下がらないと思い始めている状況は、多分に意図的なものという見方も多いようです。
国民の主食に関わるこうした大幅値上がりの状況は、他の部門にも波及する可能性を孕み、「物価上昇を追い越す賃上げ」の実現を困難にし、ひいては賃金インフレを招く可能性も懸念しなければならないでしょう。
今春闘の要求基準の上昇に期待する一方で、確りした物価安定政策(=生産性向上政策)がなければ、健全な経済は成り立たないことは明白です。
実質賃金の上昇のためには、消費者物価問題という、日銀が最も懸念する「賃金・物価」問題が明らかになって来る可能性もあります。
こうした現状を見れば、政府は、賃上げの応援よりも、日本経済の生産性向上という課題に本気で取り組んでほしいと思うところです。